内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 親権 】

離婚後、子供の親権を変更したい。
子供の親権者の変更についてお聞きします。
私たち夫婦は1年前に離婚しました。原因は私がパート先の男性上司と不倫関係に陥り、それが夫に見つかったためです。
私たちには5才のひとり娘がいるのですが、協議離婚の結果、親権者は夫となりました。私は実家に戻り、現在2週間に1回、娘に会うことを許されています。
ところが、前回娘と会ったときに、娘が急に泣き出して「ママのところに行きたい」と言い出し、私もつらい気持ちでいっぱいになりました。娘は現在、夫の実家で夫と一緒に暮らしているのですが、夫はもともと怒りっぽっくて、娘もなついてはいなかったため、娘は現在の環境で楽しく過ごせていないようなのです。離婚の原因が私にあったことから、私の気持ちをあまり主張できないままに、娘の親権を夫に渡してしまったことが悔やまれてなりません。
そこで、伺いたいのですが、あらためて、子供の親権を私に変更することはできるのでしょうか。経済的な面では夫の側が有利だとは思うのですか、5才の子供が「お母さんのもとに行きたい」という気持ちを考慮してもらえないのでしょうか。
相談者: 兵庫県に住む女性(32才)
1.親権者の変更は出来るか
離婚するときにはあなたとご主人との協議で親権者を決めることが出来るのですが、一旦親権者が決まってしまうと、お二人が同意したからといってそれだけで親権の変更は出来ません。面倒でも必ず家庭裁判所の手続をふむ必要があります。
2.変更の手続
あなたはご主人の住所地の家庭裁判所に対して「子供の親権の変更」の調停を申し立てなければなりません。
裁判所はご主人を調停に呼び出し、調停委員が中心となってお二人から事情を聞きます。このときご主人が「娘もなついていないし、私も親権を変更したいと思っている」という意見を述べれば、それは子供の利益のためにもなるのですから、その他に母親に変更したのでは子供にとって良くないというような特殊な事情がなければすんなり調停が成立し、親権はあなたに変更されます。ところがご主人が何らかの理由により(例えば、他に男を作ったような女に子供は渡せんとか、今より貧乏になるような家庭に子供はやれん等)、親権の変更は認めないという意見であればどうなるのでしょうか。
3.変更の基準
親権者変更の基準については、法律では「子の利益のため必要があると認めるとき」と書いてあるだけで具体的には何も書かれていません。
家庭裁判所では具体的に次のような事情を考慮に入れて判断しています。
・親の側の事情として
(1)養育環境一居住環境、教育環境、家庭環境
(2)子に対する愛情、監護態度
(3)親の心身の健全性
・子の側の事情として
(1)子の年齢、心身の状況
(2)子の精神的安定一親に対する愛情、交友関係、学校関係、環境の継続性等
また、子供が15才以上の場合は子の意見を聞かなければならないことになっていますが、最近では15才以下の場合でも子の意見を聞くことが多くなっています。
4.本件の場合はどうでしょうか
先ほど述べたように、最近では15才以下の場合でも子の意見を聞く事が多くなっています。とは言っても、わずか5才のお子さんの場合はどうでしょうか。いろいろな状況を踏まえた上で「お母さんと暮らしたい」と言っているのか、単に一時的な感情から「お母さんがいい」と言っているのかは十分吟味しなければなりませんが、兎にも角にもお子さん自身の「お母さんがいい」という意見はある程度は尊重されるでしょう。収入があなたの方が少ないというのは確かにあなたにとって不利な材料ですが、子の福祉という観点から必要十分な資力があることが立証できればその問題も克服できると思われます(子供にとってお金があればあるほど幸せだとは限らないからです)。
これらを踏まえた上で調停委員に対しては誠心誠意、子供にとっていかに自分が必要であるかということを力説することです。そうすれば親権の変更が認められることもあると思います。
出典: 土曜日の人生相談(2000年10月7日放送分)
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