内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 扶養 】

夫が死亡した場合の嫁と姑の関係
我が家では夫の母親と同居しています。私と姑は、子供の教育などで意見が食い違ったりして、あまり仲良くはないのですが、夫は長男ですし、夫の兄弟はみな田舎にいるために我が家での同居を続けてきました。夫の父親は早くに亡くなっています。
ところが先月、夫が、1年間の闘病生活の末に亡くなってしまったのです。子供たちは既に独立しているため、我が家には私と姑の2人が残されてしまいました。
この際、仲直りして2人で暮らそうとも考えましたが、なかなか思うとおりにはいかず気まずい生活が続いています。
夫の田舎の兄弟に、姑を引き取ってもらおうとも考えましたが、先方もすぐにはできないとのことです。
そこで相談なのですが、私に姑の面倒をみる義務はあるのでしょうか。夫の母は私の母でもありますし、私がやらなければ、とも考えるのですが、顔を合わせると小言ばかり言う姑と2人で暮らしていく自信もありません。何か良い解決法はないでしょうか。
相談者: 大阪府下にお住まいの58才の女性
ご相談の趣旨は、姑の面倒を見る義務があるかということですが、これを法律的に述べると、相談者が姑に対する互助義務や扶養義務を負うか否かということになります。
法律は、同居の親族について、互いに助け合う義務を負わせるとともに(民法730条)、一定の身分関係にある者に対し扶養義務を負わせており、三親等以内の親族にも扶養義務が生じる可能性があります(民法877条)。
そこで、まず前提として、相談者と姑の身分関係が問題となりますが、法律は、三親等以内の姻族を「親族」としています。そして、相談者は、ご主人が亡くなられたとしても姑と三親等内の姻族に該当することに変わりはありませんので、姑と親族関係があることになります。
従って、このままでは、相談者は、姑と同居の親族に該当するために互いに助け合う義務を負っています。
また、これまで姑と共同生活を営んでいたこと、また、姑から特に援助を受けてきた等の事情があるときには、相談者に扶養義務があるとされることも考えられます。しかし、この扶養義務については、三親等内の親族は、直系血族に次ぐ第2順位の扶養義務者とされていることから、第一次的には、姑の子供達(亡夫の兄弟達)に扶養義務があることになります(民法877条)。
従って、相談者としては、第一に、ご主人のご兄弟に姑の面倒を見るように働きかけて下さい。しかし、亡夫の兄弟達もすぐにはできないといって渋っているようですので、当事者間の話し合いで解決ができないときには、家庭裁判所に調停を申し立てて、姑に対する扶養の方法等について定めてもらうことができます(民法879条)。
また、ご主人が亡くなった後、相談者は、市町村役場に備えおかれている用紙に、死亡配偶者の氏名(ご主人の氏名)、本籍及び死亡年月日を記載して、市町村長に届け出ることにより姻族関係を一方的に終了させることができます(民法728条2項、戸籍法96条)。この届出を行うと、相談者には、姑との親族関係がなくなりますので、姑に対する互助義務及び扶養義務を負うことはなくなります。
出典: 土曜日の人生相談(1998年11月21日放送分)
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