内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 養育料 】

私立学校進学費や塾費用は、養育費の範囲に含まれる?
離婚の際の養育費についてお聞きします。
夫の浮気が原因で、このたび大手メーカーに勤める夫と離婚することになりました。子供は小学5年生と1年生の2人の娘がいて、私が引き取って育てることになりました。
現在は、慰謝料と財産分与、子供の養育費の件で争議中です。
特に養育費についてはこちらの希望額と折り合わず、もめています。私は子供を、大学までエスカレーター式の私立の中学校に通わせたいと考えていますし、ピアノのレッスンも受けさせてやりたいので、2人分の養育費もそれが可能なだけの金額をもらいたいと考えています。
ところが、夫は「養育費として認められるのは、一般的な教育の範囲までなので、私立学校への通学やピアノのレッスン代などは認められないはずだ」と主張するのです。
そこで伺いたいのですが、子供の養育費として認められるのは、どの範囲までなのでしょうか。私立校への通学やピアノ教室の月謝などの費用は認められないのでしょうか。
相談者: 大阪府に住む女性(37才)
1.養育費について
(1)夫婦が離婚するにあたり、財産的に解決する必要があるものとして、慰謝料や財産分与の他に、未成熟の子がいる場合、養育費の問題があります。
(2)親は子に対して扶養義務を負うものであり(民法877条)、親子関係は離婚によっても消滅しないことから、離婚後も、親権等の有無に関わらず、養育費の負担という問題が生じてくるわけです。
未成熟の子を母親が引き取るケースが多く、通常の場合、父親と比べると経済力が劣ることから、父親にどの程度養育費を負担させるかという形で問題となります。
(3)慰謝料や財産分与についても、範囲・程度・履行方法等を決めるのは容易ではありませんが、過去の清算という面が強くまだわかりやすいのに比べ、養育費は月払いの形になることが通常で、将来的なことを視野に入れてのものですから、一層難しい問題となります。
2.養育費の対象・時期について
(1)まず、養育費は、未成熟の子に対して支払われるべきものですが、未成熟とは、必ずしも未成年とは一致せず、一般には、高校卒業程度までが未成熟とされます。ただ、大学生などは成人していても未成熟とされる余地があり、逆に中学卒業後就労している場合など、未成熟の子として扱われないこともあります。
(2)大学生については、家庭環境を考慮し、その環境で大学進学が通常のことと考えられる場合、大学卒業までの養育費が認められやすくなります。
3.養育費の算定方法について
(1)養育費について、夫婦間で合意ができれば、とりあえず、それに越したことはないわけですが、合意できなければ、審判などで決定してもらうことになります。
(2)養育費の算定といっても、法律的に算定方法が定まっているわけではなく、裁判例を見ても様々です。
ごく抽象的には、子の必要生活費を算出し、父母の間での分担額を決めるという形になります。
(3)本件のケースでは、エスカレーター式の私立校、ピアノのレッスン代等が問題となっています。しかし、現段階においてお子様がまだ小学生ということですから、今の内に将来のことを全て決めてしまうというのは不可能に近いことだと思われます。
私立校進学やピアノのレッスンが現実化した段階において、それらを考慮することも不可能ではありませんが、父親は、私立校進学やピアノのレッスンを受けさせることに異論があるわけでしょうから、生計を別にする父親に対してどこまで負担させられるかという観点から考える必要があります。そうすると、算定基準は自ずと低くなってしまうと考えられた方がよいでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2000年9月16日放送分)
戻る