内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 貸金請求 】

「返済はいつでもいいいよ。」て言われて借りたお金。いつ返さなければならないの?
借金返済についてお聞きします。
7年前、夫の急な入院などでお金が入り用になり、知人から200万円借りました。その知人は長年の友人で、自営業で、余裕もあり「返済はいつでもいいよ」と言って貸してくれたのです。私もそのことばに甘えて、余裕ができたときに少しずつ返していましたが、まだ残額が130万円ほどあります。
ところが知人の事業が最近うまくいかなくなり、資金繰りで苦労するようになったようです。そして私に「申し訳ないが、速やかに全額返済してほしい」と言ってきたのです。
確かに私が借りたお金ですし、相手の事情もわかるのですが、現在私には返済できる余裕がないのです。この借金については、私が書いた「金200万円確かに借り受けました」という書類のみがあり、返済方法について明記したものはありません。
こういう場合、相手の要求通りに返済しなければならないのでしょうか?
相談者: 香川県に住む女性(46才)
1.相談者は(1)7年前に200万円借りたことは間違いなく(借用証もある)、(2)「返済はいつでもいい」という約定であったので、今まで少しずつ返済してきた(返済合計は約70万円)。利息の約定はない。
この場合、「返済はいつでもいい」という約定の解釈(契約当時の貸主・借主の意思、すなわち両者がどういうつもりでそういう約定をしたか)によって結論が分かれる。
2.これが、単に返済期限を定めなかっただけだと解釈されれば、貸主が「相当の期間を定めて」返還を請求すれば、相当期間経過後には借主に返還義務が生じる。この点は、貸主の請求が「相当の期間」でなくても、客観的に「相当の期間」経過後に借主に返還義務が生じる。したがって、相談者は「速やかに」返還する義務はないが、「相当の期間」経過後には返還義務を負う。しかも全額の返還義務を負う。
問題は「相当の期間」とはどれ位の長さか、であり契約の目的・金額その他の事情によって決まるという他ない。
なお、借主が、返還義務を負うに至る期間が到来した後には、無利息のものでも、遅延損害金(年5%)の支払い義務が発生するので「相当の期間」がどれ位の長さかは重要である。
3.注意すべきは、「返済はいつでもいい」という約定に、何らかの別の意味が込められていたか否かである。
相談者が7年前に借りた時、200万円をまとめて返済する資力がないということを貸主も承知で、相談者の言う「余裕ができたときに少しずつ返す」という何らかの分割払いの合意がなかったか。「余裕ができたとき」ということが、客観的に(貸主にも認識可能な状態で)「返済はいつでもいい」という約定がなされたのか否かの問題である。
4.通常は2で述べた「返済期限を定めなかった」金銭の貸借と解釈される。したがって「相当期間」経過後には相談者は130万円を一括して返済すべきであるということになろう。
3で述べたことは、通常の解釈を覆す「特段の事情」であり、本来立証困難なことである上、この点については、設問だけでは何とも言えない。
出典: 土曜日の人生相談(2000年9月9日放送分)
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