内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 売買のトラブル 】

業者に欠陥住宅の補修を求めることができるのか?
欠陥住宅の補修の件でご相談します。
我が家は念願の新築の建て売り住宅を購入しました。昨年末の建築中に契約し、先々月入居したのです。
ところが暮らし始めてみると、押し入れの壁紙の一部が剥がれかけていたり、台所のコンロの横の壁にヒビか入っていたり、階段の踊り場の床部分の板が浮いていたり、欠陥部分と思える箇所が何ヵ所か発見されました。
販売業者に苦情を言って修繕を依頼したのですが、「細かいことにこだわり過ぎじゃないですか」などと言われる始末で、まだ修理に来ません。
そこで伺いたいのですが、こういう場合強制的に修理させるにはどうすればいいのでしょう。またこの春から新しく「住宅品質確保促進法」という法律が施行されたと聞いたのですが、この法律は助けになってくれるでしょうか。
相談者: 兵庫県に住む女性(42才)
1.建築中の建売住宅の購入については、民法上、売買契約と請負契約のいずれにあたるのかという問題があります。
売買契約は、代金を支払って物を買うという、日常的によくある契約です。
請負契約は、例えば「家を建ててもらう」などのように、一定の仕事の完成を頼むかわりに、その代金を支払うという契約です。
建築中の建売住宅の購入については、オーダーメイド的な要素が多少なりともあれば、請負契約と考えることも可能ですが、やはり一般の売買と同様に「商品を購入する」という面が強いため、売買契約と考えられるのが通常です。
2.念のため、両方の場合について、民法上とることのできる手段を示します。
まず、請負契約の場合。建物の引渡後5年以内(堅固な建物なら10年以内)は、請負業者に対し、手抜き工事等による不良個所の修繕と、損害賠償の請求ができます。
次に、売買契約の場合。契約時には分からなかった不良個所のせいで、居住に耐えない場合には契約を解除することができますが、そうでない場合には、損害賠償の請求ができるだけです。この請求ができる期間は、買主が不良個所があることを知ってから1年以内です。
売買契約の場合は、修繕の請求ができませんが、自分で修理業者に修繕を頼んで、かかった費用を販売業者に損害賠償請求することができますから、結果的にはあまり変わりません。
3.このように、販売業者に強制的に修理させるまでもなく、自分で業者等に頼んで修繕してから、いずれの場合にも認められる損害賠償請求権を利用して、販売業者にその費用を請求すると良いでしよう。
ただし、契約上これらの請求ができる期間を短く制限していることが多いので、注意して契約書をチェックして下さい。これらの期限切れを防ぐためには、内容証明郵便等により、期間内に修繕を要求したという証拠を残しておく必要があります。
また、将来の損害賠償請求に備えて、不良個所の写真を撮っておき、修理代金の請求書や領収書などを大切に保管しておくべきです。
4.最後に、住宅品質確保促進法についてですが、これには「新築住宅を普通に使用していたのに、床や天井等の建物の主要構造部分に欠陥が発生した場合、新築後10年間は、施工業者がこの欠陥を無料で修理しなければならない」という画期的な制度があります。
しかし、この法律が適用されるのは、平成12年4月1日以降に契約したものに限られます。残念ながら、昨年末に契約済みである本件の場合、住宅品質確保促進法は適用されません。
出典: 土曜日の人生相談(2000年8月26日放送分)
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