内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 ストーカー 】

ストーカー被害。どの程度で警察は助けてくれるの?
ストーカー被害の件でご相談します。
私は大阪市内の会社に勤めるOLですが、近頃ストーカーに悩まされています。相手は会社の先輩社員です。会社の宴会でことばを交わしたのが最初で、その後交際を迫られたのですが、断りました。ところが彼はあきらめずに、頻繁に電話をかけてきたり手紙を送ってきたりするのです。「迷惑だからやめてください」と言っても、一向に治まりません。上司に相談しても、彼は一見大人しくまじめなタイプなので「そこまで想われてるなら付き合ってやったら」と逆に言われてしまう始末です。
この間は、帰宅途中に私を待ち伏せていたため、「今度したら警察に通報する」と怒ったところ、待ち伏せはしなくなりましたが、自宅に無言電話がかかるようになりました。友人に相談したところ「それぐらいの被害では警察は動いてくれないだろう」と言うのですが、私は非常に不安です。
そこで相談なのですが、こういう場合、警察に通告することで、こういった行為をやめさせることはできるのでしょうか。またどの程度の被害があれば警察が取り締まってくれるのでしょうか。
相談者: 大阪府に住む女性(24才)
1.警察に被害届を出し、警察が実際に取り締まりをしてくれれば、多くの場合、ストーカーは、ストーカー行為を止めるでしょう。
ただ、警察は、犯罪を取り締まる機関ですから、ストーカーが何らかの犯罪行為をしたという場合でなければなりません。
考えられる犯罪としては、脅迫罪(例えば、あなたやあなたの親族の身に危険を加えると脅すなど)や強要罪(例えば、脅かして無理矢理面会させたなど)です。無言電話では、脅迫罪や強要罪には該当しませんが、無言電話で精神を患うようなことにでもなれば、傷害罪となります。
次に、どの程度の被害があれば、警察は取締をしてくれるかということですが、一概には言えません。
脅迫らしい行為、強要らしい行為をすべて取り締まることは不可能です。要は、「これはひどい。放置できない。」という程度の被害がなければ、実際上、警察は、取り締まりをしないでしょう。
そこで、重要な点は、先輩社員がどれだけひどいストーカー行為を行ったかという証拠を残しておくことです。
行為がエスカレートして、脅迫行為をするようになれば、その内容を録音しておくなどして下さい。電気店に行けば、お手持ちの録音機に接続して会話内容を録音できる簡単な装置が市販されています。
手紙が送りつけられているようですが、内容の如何に関わらず、処分しないで取って置いて下さい。
また、話し合いの機会を持った場合、会話内容をこっそり録音しておくことも有効かもしれません。会話の流れによれば、先輩社員が今ままで行った無言電話やストーカー行為を自ら認める発言をするかもしれないからです。但し、何が起こるか分かりませんので、2人きりになる場所は避け、ホテルのロビーや喫茶店など誰か他の人がいるところで会ってください。
さらに、無言電話を含めて先輩社員からいつ何をされたかを詳細にメモに残しておくことや、友人や上司にその都度報告しておくことをお薦めします。これも証拠となりうるからです。無言電話の状況を録音しておくことも証拠となる場合があります。
なお、先輩社員からの電話の対応について、NTTには、「迷惑電話お断りサービス」がありますので、詳しいことは、NTTにお問い合わせ下さい。
最後に、警察への通告する方法ですが、被害届と告訴があります。
被害届は、単にあなたが被害にあっているという事実を警察に届け出るだけですが、告訴はさらにストーカー行為をした先輩社員を処罰して欲しいという内容も含みます。
2.少し先の話しになりますが、平成12年11月24日、ストーカー行為規制法が施行されます。
取締の対象となるのは、(1)被害者につきまとい、待ち伏せなどをする、(2)交際や面会などを強要する、(3)無言電話やいたずら電話(ファックスも含む)をするなどです(その他の行為については、添付の資料参照)。
この法律により、被害者は、ストーカー行為をしないよう警告を発することを警察に求めることができます。
さらに、警察の警告にも従わず、繰り返しストーカー行為をなすおそれがある場合には、公安員会は、ストーカーに対し、ストーカー行為の禁止を命ずることができます(警告と命令の差異は、主として罰則にあらわれます。)
ストーカー行為を反復して行った者に対しては、罰則があります。繰り返しストーカー行った者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が処せられ(但し、告訴が必要です。)、さらに、公安委員会の命令に反し、ストーカー行為を繰り返した場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
この法律ができたことにより、警察は、従来、脅迫罪等の特定の犯罪に該当しなければ、取り締りにくかったストーカーに対しても、対処しやすくなったといえます。
但し、この法律が施行された場合でも、先輩社員がストーカー行為を繰り返し行っているという証拠が必要でしょう。
新法が施行される前ですが、余りひどい場合には、警察に相談に行くべきです。
3.なお、警察の取締によってストーカー行為を止めさせる方法の他に、裁判所に申立を行い、ストーカー行為を止めさせるという方法があります。
これは、面談禁止の仮処分といって、例えば、「半径○メートル以内に接近してはならない。接近した場合には、ペナルティとして○○円支払わなければならない。」という趣旨の決定を裁判所から貰うのです。
しかし、この方法による場合でも、「まとわりつくにも程がある。」と言える場合でなければならないと思われます。
出典: 土曜日の人生相談(2000年8月19日放送分)
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