内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 日照権と電波障害 】

近所に新築マンションが建ち、テレビ映りが悪い。
住宅のトラブルの件でお聞きします。
最近我が家の近所に新築マンションが建ちました。それ以来、我が家のテレビが映りにくくなったように思うのです。画像が不安定に揺れたり、波のような縞模様が画面に重なったりして、非常に見づらいのです。最初は、アンテナの調子が悪いのかと思っていたのですが、ご近所にも数軒同じような症状に悩まされている家があると聞き、原因はその新築マンションに違いないと考えました。そこで、マンションの販売業者に電話をして、困っている旨を伝えると「調査します」とのことでした。
ところが1ヵ月になるのに、改善される様子はありません。再度電話をいれても「まだ調査中」とか「はっきりわからない」などと答えるばかりです。
そこで相談なのですが、こういう場合、警察や裁判所に通告することで、販売業者に強制的に改善策をとらせることはできるのでしょうか。
相談者: 兵庫県に住む女性(47才)
お尋ねの電波障害について受忍限度を超えるような状態である場合には、新築マンションの建築主に対し、改善するよう求めることができます。
まず、自宅のアンテナの改良により原状に復するのであれば、その改良にかかった費用を損害として賠償請求できます。
高層マンションの場合は、この様な小手先の改善策では効果が無いでしょうから、そのマンションの屋上部分に建築主の費用で共同のテレビアンテナを設置するよう求めていくことができます。相手方が自主的にこれをしない場合は、裁判を起こしていくことになります。
刑事事件ではないので警察に通告しても警察は対応しませんし、裁判所には単に通告だけではだめで、正式な裁判を起こさなくては強制的な改善策を取らせることはできません。
テレビの写りが悪くなったことにより、強制的に改善策を取らせるためには、裁判を起こすしか方法はありません。
警察に行っても、刑事事件ではないので、取り合ってくれないでしょう。
そこで、誰に対し、どのような内容の請求を、いかなる場合に認められるかを考えて、裁判をしなればなりません。
1.誰に対して。
建築主(施主)に対し、訴えを提起することとなります。建築主がマンションを建てたために、電波障害が生じたからです。
なお、分譲マンションでは、販売代理店が現実に販売することが通常ですが、販売代理店は、あくまで販売のための代理店ですので、販売代理店に対しては、何も言えないのが普通です。
2.何を求めるか。
裁判で、建築主に対し、たとえば、「マンション屋上に共同受信アンテナを建て、ケーブルを各戸に引け。」と要求できればよいのですが、このような設置要求をすることは困難と思われます。この請求を認める直接の法律がないからです。もっとも、裁判外での話し合いの段階で、建築主に対し共同受信アンテナを設置するよう要求し、相手がこれに応じれば、何の問題もありません。
法律上、建築主に対して求めうるのは、「私たちの電波障害をお金で償え。」ということです。
現実には、より高性能な地上波アンテナへの取替費用や、衛星放送・ケーブルテレビ放送受信装置設置費用等を求めることとなるでしょう。
すなわち、電波障害の改善は、自分たちで行い、それに要した費用を建築主に請求できるということです。
3.どのような場合に、金銭の要求ができるか。
まず、マンションが建ったことにより、電波障害が生じたといえなければなりません。電波障害の調査については、社団法人日本CATV技術協会近畿支部(TEL 06-6353-7827)に問い合わせて下さい。
但し、マンションによる電波障害の現状が判明しても、マンションが建っていないときの状態と比較検討しなければ、マンションが建ったことにより、電波障害が生じたと判断することは困難です。
建築主は、マンションを建築する際、どの範囲に電波障害が生じるか予め調査することが通常です。そのため、建築主が予めこの調査をしているなら、裁判上、電波障害調査結果を提出させることができる場合もあります。
次に、マンションが建ったことにより、現実に電波障害が生じたからといって、建築主に対し、金銭的な賠償をせよという訴えを裁判所が直ちに認めてくれるわけではありません。
被害の程度や地域性等いろいろな要素から、請求が認められない場合があります。これを、「受忍限度」と言います。要するに、「みんなで生活しているのだから、お互い様でしょ。それ位は、我慢しなくてはなりません。」ということです。
受忍限度の範囲は、ケースバイケースなので、一律に回答を出すことはできませんが、一般的に、商業地域や工業地域では請求が認められにくなる傾向があります。なぜなら、もともと、このような地域は、高い建物が建つことが予定されているからです。
出典: 土曜日の人生相談(2000年8月12日放送分)
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