内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 婚約不履行 】

婚約者が会社を辞めて定職を持たない。婚約解消できるか?
婚約不履行のことでお聞きします。
私は2年ほど前に、付き合っていた男性から結婚を申し込まれました。当時、彼は勤めていた会社をやめて自分で事業を興すと張り切っており、私も彼に期待して結婚を承諾し、婚約指輪も受け取ったのです。
ところが彼は最初の資金調達でしくじり、急にやる気をなくしてしまったようで、結局定職を持たずにブラブラするようになってしまったのです。「このままでは結婚できない。せめて定職に就いて」と彼を叱咤激励したのですが、一向に生活を改めようとしません。私は彼を信じて仕事も辞めていたので、それまでに自分が貯めた貯金も使い切ってしまいました。
彼には愛想が尽きたので、婚約を解消して別れたいと思っているのですが、こういう場合、彼を婚約不履行で損害賠償請求はできるのでしょうか?
相談者: 兵庫県在住の女性(28才)
婚約は、法律の規定にはありませんが、判例で認められていて、法的にも保護されます。法的に保護される婚約とは、男女が誠心誠意をもって将来夫婦になろうという合意のことを言います。相談者の場合、彼と結婚の約束をした上婚約指輪も受け取っているので、誠心誠意をもって将来夫婦になろうと合意が認められ、法的に保護される婚約が成立していると言えます。このような婚約が成立すれば婚姻をする法律上の義務が生じます。一方が婚約を破棄したり履行しない場合は、他方は債務不履行として損害賠償を請求することができます。
相談者の場合は、明確な結婚の予定日を守らなかったわけではなく、彼の方から婚約の破棄を申し出ているわけでもないので、そもそも婚約が不履行の状態になっているかが問題となりますが、相談者はおそらく結婚の準備のために仕事を辞めたように考えられ、婚約からすでに2年という長い期間が経過しているので、婚約は不履行の状態にあると言えます。
さらに問題は2年間婚約を履行しないことに正当な事由があるかどうかです。
この場合の正当な事由は一般的に将来の夫婦生活の円満な遂行の妨げになる事由のことを言います。相談者の詳細な事情がわからないと判断はむずかしいですが、相談者は彼との結婚を前提に、家事に専念するため仕事を辞めたように伺えます。そして結婚生活の資金は彼が稼ぐ計画になっていたように思われます。しかし、彼は事業に頓挫した後、特に理由もなく約2年間も定職に就いて収入を得ていないようです。彼は相談者の貯金も頼りに生活していたのではないでしょうか。こういった事情なら彼が長期間定職に就かないことが将来の夫婦生活の円満な遂行を妨げていると言うことができ、彼の婚約不履行には正当な理由がないと考えることができます。
したがって、相談者は彼に対して、婚約不履行を理由に、損害賠償請求することができます。
損害賠償の内容としては、慰謝料、相談者が退職したために得られなかった収入が考えられます。なお、相談者の場合にはあてはまりませんが、結婚式場や新婚旅行の申込金・キャンセル料、仲人への謝礼金なども損害賠償に含まれる場合もあります。
ただ、彼は定職に就かず収入も乏しそうなので、損害賠償を請求できても、実際上彼から損害賠償金を取れる可能性は高くないかも知れません。
出典: 土曜日の人生相談(2002年2月9日放送分)
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