内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 遺産分割 】

親の面倒を見る約束で相続した財産。約束違反の時は?
相続と扶養のことでお聞きします。
私の父は5年前に死亡しました。そのとき父の遺産は、母と兄と私で相続することになったのですが、母の面倒は兄夫婦が看るということで、母の取り分も兄が相続するということにし、私も同意しました。
しかし、今年になって、母よりも先に兄が病気で死亡してしまったのです。そこで、母の面倒を誰が看るかということで、問題が起こりました。これまで母の面倒を看ていた兄嫁は、同居中、母と折合いが悪かったらしく、兄が死亡したのを機に、兄嫁は実家に戻るというのです。
そうなると、母の面倒は私が看るしかないのですが、死んだ兄が相続した財産は、兄嫁と兄の子供に行くわけで、私としては納得がいきません。せめて遺産を分けてもらうように、兄嫁に求めることはできないのでしょうか?
相談者: 京都府在住の女性(51才)
1.ご相談の件ですが、結論から申し上げると、法律上、兄嫁に兄が相続した遺産を分けてもらうように請求することはできません。
2.まず、父親の遺産については、相続人である母、兄、そして相談者の3名で遺産分割協議の結果、兄が相続し、所有権を取得しました。このとき、兄が母の面倒をみることが前提となっていたとのことですが、そのような話し合いがなされて遺産が分割されたとしても、一度分割され、兄に帰属した父の遺産は、兄の自由な財産になってしまいます。つまり、兄がどのように使おうと自由な財産になってしまうのです。
従って、兄が亡くなれば、兄の財産は、法律上、兄の相続人である兄嫁と子供に相続されてしまいます。これは、母親の面倒を見るためという話し合いがあったとしても、兄の財産になってしまった以上、法律的には、仕方のないことなのです。
では、あなたが母親の面倒を見るために、兄嫁に何か言えるでしょうか。
親の面倒は、第1次的には、子が見なければなりません。他方、兄嫁は、子を差し置いて扶養義務を負うわけではありません。兄嫁は、あくまでも姻族になりますから、血族である子供がいないとか、兄弟がいないなどの場合などに限り扶養義務が出てくることになります。
従って、母親の面倒は、あなたが見なければなりません。そして、この経済的負担については、原則的には、あなたが自分の財産で負担しなければなりません。
母親の面倒をみるためという話し合いの結果、兄が父の遺産を相続し、それを兄の死後、兄嫁が相続したのですが、この財産に目的による制限は法律上は、ありません。つまり、あなたは、法律上、兄嫁に何らの請求権もないことになります。
3.では、このような状態にならないようにするには、どうすればよいでしょうか。
まず、父の死後、遺産分割する段階で、母もきちんと相続すべきです。そして、母、そして、扶養義務者である兄とあなたとの間で、母の面倒を見るのに必要な経費を誰が普段し、またどのように支出するのかを明確に取り決めておく必要があります。例えば、母の面倒をみるのに要する経費については、母の相続分から支出し、その会計などを兄があなたの承諾を得ながら管理することなどです。
4.このようにたとえ、善意の発想で行なったことでも、後の事情によってはそれが報われないことがあります。従って、あとのことをよくよく考えて遺産分割などをしておくべきでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2002年1月5日放送分)
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