内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 賃金 】

通勤手当。自転車通勤にかえてももらえる?
会社の通勤手当の支給についてお聞きします。
私は最近健康のために自転車通勤を始めました。これまでは自宅から会社まで電車で40分ぐらいかけて通勤していたのですが、たまたまテレビで、自転車通勤している人のインタビューを見て、これはいい!と始めたのです。通勤時間は少し長くなり、1時間ちょっとかかりますが、満員電車に揺られて通勤するよりもずっと爽快で、すっかりハマってしまったのです。
ところが、私の会社では、社員全員に同額の通勤手当が支払われているのですが、私が自転車通勤を始めたことを知った担当者が、「自転車通勤者には通勤費用はかからないので、手当ては払わない」と言い出したのです。
会社の規定を見ても、もちろん「自転車通勤」については、何も書いてありません。担当者は「交通機関を利用しない者には通勤手当を払う必要はない」と考えたようですが、実際には通勤手当ては毎月もらう賃金の一部として皆あてにしてますし、私も天気が悪いときには、電車を使うこともあるのです。
こういう場合に、会社に通勤手当を請求することはできるのでしょうか?
相談者: 兵庫県在住の男性(39才)
大阪弁護士会に聞きました。
通勤手当について説明します。
およそ次のように決められています。
1.(1)交通機関を利用する場合は1ヶ月の運賃相当額が支給されます。但し、限度額を設けています(例えば4万5000円までとか)。
(2)自動車等で通勤する場合は距離数に応じて支給金額が決められています。例えば20キロメートルなら月額5000円とかと言った具合です。
(3)全員に定額支給することで、実際の運賃は考慮しない。
2.交通機関を利用する場合とマイ力ー、自転車を利用する場合とでは、前者の方が支給金額は多くなるのが普通です。
3.さて、質問のケースですが、通勤手当が全社員に定額支給されているということですが、そのような企業は恐らく4万円程度を支給していると思います。ただ、不平等感はあると思います。そして、このようなケースでは、実質的には賃金の一部として考えて良いと思います。
賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(労働基準法11条)。となっています。定額支給をしているところは、労働の対償として考えて良いと思います。
質問者の場合は、自転車で1時間くらいの距離ですから、1ヶ月の運賃も2万円までだと思われます。そうすると、4万円がなくなることは自由に使えるお金が減ることにもなります。
4.手当については、マイカーの場合、自転車の場合、交通機関利用の場合というように分類して定めているケースがありますので、会社でも規定を設ければそれに従うことになります。
ただ公務員の場合、たくさんの通勤手当をもらって自転車通勤していると、その手当が自由に使えることはオカシイという指摘もあります。
5.まとめますと、質問者のケースでは通勤手当は賃金の一部と考えられますので会社に請求することができます。
自転車で1時間走ることで疲れを残して勤務することのないようにして下さい。
出典: 土曜日の人生相談(2001年12月22日放送分)
戻る