1.せっかく待望の妊娠をしたのに残念な結果になり、とてもお気の毒です。 ご相談の内容を見る限り、最初の病院での診断の段階で、子宮外妊娠であったことがわかっていれば、ご相談の様な事態にはならなかった可能性があります。そして、最初の段階で子宮外妊娠であることを発見し、適切に治療を行っていれば、無事赤ちゃんを出産できた可能性がありますし、子宮摘出手術を受けることもなかったと考えられます。 2.そこで、法律問題としては、最初に診断した病院と医師を相手方として民事上は損害賠償請求を行うことが考えられます。この場合、最初に診断した医師が、通常産婦人科の専門医として要求されている注意義務を尽くして診断を行っていたかどうかが問題となります。もし仮に、この注意義務を怠っていたならば、あなたを診察した医師に過失があることになり、病院と医師の双方に対して損害賠償請求を行うことが出来ます。尚、この場合の損害は、あなたの被った精神的苦痛に対する賠償(慰謝料)と最初に子宮外妊娠を発見し適切に治療していたら不要になっていた入院や手術等に要した費用が考えられます。 また、過失の態様次第では刑事上も業務上過失傷害等の罪名で刑事責任を問うこともできる場合があります。 3.あなたと同じ子宮外妊娠が見落とされ卵管破裂に至った民事事件で、最初に診断した医師に対し、強い下腹痛を訴えてきた女性に対し、子宮外妊娠ではないかと疑いを持ち、子宮外妊娠か否かの診断をつける義務を負っていたにもかかわらず、これを見落とした点に過失が認められると判断して医師側に損害賠償を認めた事例があります(東京地裁平成5年8月30日判決)。 4.しかし、ご相談のような医療過誤訴訟は、通常、とても高度な専門知識が要求される難しい訴訟です。特に相手方が、専門家である医者であるため、過失の立証に困難が予想されます。場合によっては、カルテを偽造されないとも限りませんので、訴訟を起こす前に予め証拠を確保しておく証拠保全という手続を取ることも考えられます。 いずれにしても弁護士に相談された方がよいでしょう。
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出典:
土曜日の人生相談(1998年7月11日放送分)
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