内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 不倫 】

妻が男性と交遊。どの程度なら離婚原因に?
離婚原因となる不貞行為についてお聞きします。
私と妻は3年前に結婚しました。妻は専業主婦ですが、今年のはじめ頃から、どうも様子がおかしい、と感じるようになりました。急に化粧に凝るようになったり、仕事中に家に電話しても、留守にしていることが多くなったのです。帰宅してから問いただしても、「ちょっと買い物に行っていた」とか「主婦の友達と会っていた」などと言うのです。
浮気してるのでは、と感じたので、私は興信所に頼んで、昼間の妻の行動を監視してもらいました。その結果、妻は昼間、近所の塾講師の男と頻繁に会っていることがわかりました。ただ一緒に食事したり、お茶を飲みながら話をしている程度で、一線を越えた関係ではないようです。
それでも私としては、こそこそ男と会っていた妻を許すことはできないので離婚したいと思っています。妻に調査結果を示したところ、「男と会っていたのは事実だが、他愛ないおしゃべりをするだけで浮気の意図はなかった」と言います。
そこで伺いたいのですが、どの程度の交際から、離婚の原因となる不貞行為と認められるものなのでしょうか。お茶を飲んだりするぐらいでは、不貞行為とはならないのでしょうか?
相談者: 大阪府在住の男性(36才)
1.離婚原因
夫婦の一方が他方に対し、離婚を求める場合、協議が整わない場合には、裁判所において、離婚の訴えを起こす必要があります。
その場合、夫婦の一方に一定の事由が存する必要があります。民法上、「離婚原因」と呼ばれるもので、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病の4つに加えて、「婚姻を継続しがたい重大な事由」がある場合にも、離婚が認められることとされています。
たとえば、夫の激しい暴力や理由のない性交拒否、著しい生活の不一致、長期の不和による別居等がこれにあたります。
2.不貞行為とは
まず、「不貞行為」についてですが、民法770条第1項第1号は、裁判上の離婚原因として、「配偶者に不貞行為があったとき」と明記し、不貞行為を離婚原因の1つとしています。
ここで、「不貞行為」とは、夫婦の一方が配偶者以外の異性と性的交渉をおこなうことと定義づけられています。
したがいまして、妻が夫以外の男性と精神的にいかに愛し合っていたとしても、性的交渉がない限り、離婚原因となる「不貞行為」とは言えません。
3.本件事例について
(1)本件事例についてみると、本件では、相談者が興信所で調査してみても、妻が夫以外の男性と頻繁に会って、食事をしたり、お茶を飲みながら話をしている程度で、性的交渉をおこなっていないとのことです。
したがいまして、本件では、相談者は、妻の「不貞行為」を理由に離婚を求める事はできません。
(2)しかしながら、相談者の妻が夫よりも、その男性を深く愛するようになっている等の場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条第1項第5号)を理由に、離婚を求める余地がないわけではありません。
ただ、たとえば、妻が夫よりも他の男性を心底愛してしまって、家事もしない、家にほとんどおらず、その男性とデートを重ねる等の夫婦共同生活そのものが重大な危機に直面する程度にいたることが必要だと思われます。
(3)本事例では、こそこそと男性とあって食事したり、お話をしていた程度のようですので、その程度では「婚姻を継続しがたい重大な事由」にも当たらないように思われます。
したがいまして、本件では、なかなか離婚の訴えを提起しても、離婚は認められないと思われます。
出典: 土曜日の人生相談(2001年12月15日放送分)
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