内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 その他 】

「自己都合」退職と「会社都合」退職
失業手当の給付条件について
私は5月にそれまで22年間勤めていた会社を退職しました。
社長から、業績不振のため人を減らしたいのでやめてほしい、と言われたので、それに渋々従ったのです。
その後、失業手当の給付を受けようとハローワークを訪ねて手続きをしたところ、退職理由が「自己都合」になっているため、「会社都合」での退職に比べて、手当ての支給期間が短いことがわかったのです。
そういえば、辞めるときに、会社から「名目上でいいので、退職届を書いて欲しい」と言われて、深く考えずに「一身上の都合で…」という退職届を書いたのですが、そのために「自己都合」として届けられたようなのです。
会社にだまされたようで腹が立つのですが、今から退職理由を「会社都合」に変更して、手当ての給付期間を変更することはできないのでしょうか。
相談者: 岡山県在住の女性(43才)
あなたは、会社の社長から業績不振のためにやめて欲しいと言われ、それに渋々従い、退職したわけですから、雇用保険法第23条所定の特定受給資格者にあたると思われます。特定受給資格者とは、離職理由が、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕がなく退職を余儀なくされた受給資格者(「事業主から直接若くは間接に退職を推奨されたことにより退職した者」を含む。平成13年4月1日以降に退職した人に適用される改正省令参照。)を言い、失業給付の所定給付日数が、自己都合で退職した人よりも手厚く保護される方を言います。
ところが、会社からとにかく退職届を書いて欲しいといわれ、「一身上の都合で…」という退職届を書いてしまい、会社は、自己都合で退職した者、つまり、特定受給資格者にあたらないとして職業安定所に届けたようで、会社の届出内容と事実とが食違っている状態になっています。会社は、助成金の給付や解雇に関する争いを回避することとの関係で、このような事実と反する届出をすることがしばしばあります。
では、退職理由を是正して、特定受給資格者としての給付を受けるにはどうすればよいでしょうか。
退職者が、特定受給資格者かどうかを、第1次的に判断するのは、職業安定所です。
そして、職業安定所は、会社が主張する離職理由のみではなく、退職者の離職票を確認してから判断します。ですから、離職票に「一身上の都合による退職」と記載してあれば、それに署名・捺印せず、職業安定所に異議を言うことができます。
本件では、一身上の都合と記載された退職届けにより、事実と反する会社の主張が認められる可能性が高いので、あなたの主張が正しいことを客観的に示す資料、例えば離職者の応募事実が分かる資料があればそれを添付し、具体的にいつ、どこで、誰から、どういう形で、退職するように勧奨を受けたのか、どうして一身都合上ということを退職届けに記載したのかを具体的に記載した書面を提出して異議を申し立てることになるでしょう。職業安定所は、あなたの異議により、調査した上で、裁定することになります。
もっとも、仮に、既に特定受給者でないことが決定されているとすれば、上記のような異議は言えません。その場合、裁判で決着することも考えられますが、時間と費用がかかりますので、失業給付に関する処分に対する不服申立手続として、雇用保険審査官に対する審査請求の制度があります。この制度の詳しい手続内容については、最寄りの労働局に行けば教えてくれるでしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2001年10月6日放送分)
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