内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 労災事故 】

仕事の打ち上げパーティー後の帰宅途中交通事故に遭った!
労災の認定基準についてお聞きします。
先日、会社の大きなプロジェクトが無事終わったことを祝うパーティが関係各社の人たちを招いて開かれました。
中心メンバーのひとりだった私も参加し、パーティ終了後の二次会、三次会まで付き合い、盛り上がりました。
ところが、深夜になって、帰宅しようとタクシーを拾おうとしたとき、飛び出してきた車と接触し、足を骨折する怪我を負ってしまったのです。
そこで伺いたいのですが、こういう場合の事故は、通勤中の事故と認定されるのでしょうか?
業務と直接関係ない用事で、普段と違う通勤経路を通った場合の事故は、通勤中の事故と認められないと聞いたことがあるので心配です。教えてください。
相談者: 兵庫県在住の男性(38才)
残念ながら、労災保険の適用を受けることはできません。
ご存知の通り、労災保険の給付は、業務に関して生じた事故に対してなされるものですが、通勤そのものは業務ではありませんので、原則として通勤中の事故については労災保険は適用されないのですが、労災保険法は法の定める要件を充たすときは、例外として通勤災害として保護するとしています。
そして、その要件とは、以下の通りであり、これを全てクリアーしなければ通勤災害として認められません。
(1)住居と就業の場所との往復であること
(2)就業に関する往復であること
(3)合理的な経路による往復であること
(4)合理的な方法による往復であること
(1)(2)について、パーティーそして二次会、三次会への出席が「就業」といえるかどうかです。就業といえるためには、あなたのしていることが使用者の指揮命令下にあるといえることが必要です。
まず、パーティーですが、これはプロジェクト終了後関係各杜の人たちを招いて開かれたということですから、会社主催で会社が費用を負担して開催し、あなたも会社の業務として関与されていたと考えられますから、会社の指揮命令下にあったといえますのでパーティー終了後の帰宅途上であれば、通勤災害であるといえるでしょう。
ところが、普通は二次会、三次会は参加自由ですし、仮にその費用が会社負担であるとしても、会社の指揮命令のもとにあるということはできないでしょう。
それでは、あなたは、プロジェクトの中心メンバーであったとのことですから、仮に上司の命令により、二次会、三次会もあらかじめ計画されており、なおかつ、社員の懇親というよりも、関係会社の接待ということであればどうでしょうか。この場合は、業務性が認められる可能性が大きいでしょう。
さて、話をもとに戻して、パーティーに業務性が認められ、二次会、三次会は認められないとして、つまり、(1)(2)にいう「就業」はパーティーであるとして(3)(4)の要件が認められるかどうかを考えてみましょう。
この場合は、二次会、三次会の参加によって、合理的な経路を逸脱したかどうかが問題とされます。そして、二次会、三次会は通常パーティーに必ず伴うものではない(二次会は通常伴うものであると考える余地があるとしても、三次会は無理です)ので、二次会、三次会の参加によって、合理的経路による帰宅ではないと判断されますので、やはり通勤災害として認定されることは困難でしょう。
出典: 土曜日の人生相談(2001年9月22日放送分)
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