内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 治療費・リハビリ 】

どこまで言えば示談成立?
交通事故の示談金についてお聞きします。
先日、自転車に乗って交差点を直進していたときに、左折してきた車にひっかけられて転倒してしまいました。
その車のドライバーの男性がすぐ降りてきて、「大丈夫ですか?」と聞いてきたのですが、そのときは、さほどとも思わず「大丈夫です」と言ってしまいました。その男性は「本当は病院に同行したいが、今急用の最中なのでこれで許してほしい」と言って、現金3万円を財布から取り出して、ボクに握らせると「じゃ、これで示談金ということでよろしく」と去って行ってしまいました。特に書類を取り交わしたりはせず、口頭のみの示談でした。
大した怪我はしていないと思っていたボクは、「ラッキー!儲かったー!」と喜んでしまったのですが、その夜から足首が紫色に腫れ上がり、慌てて病院に行ったら、「骨折してます」とのこと。治療費もけっこうかかりそうです。
そこで、あらためて事故を起こした相手を探し出して、治療費を請求したいのですが、一度示談金を受け取ってしまっているボクにはその権利がないのでしょうか?相手の人相と車種、ナンバーの一部は覚えているのですが…。
相談者: 大阪府在住の男性(24才)
交通事故の損害賠償の場合、当該交通事故が原因の治療費・入院に関する費用・通院交通費・入通院で仕事ができず収入減となった場合の休業損害・入通院期間に応じた慰謝料・後遺症が発生した場合は等級に応じた労働能力喪失割合による損害及び慰謝料・物損が主な損害となり、これに被害者側の過失相殺割合を減額し、更に被害者が別のところから損害の補填を得ている場合はこれを控除したものが損害として加害者に請求できます。
この様に、交通事故の損害は入通院の治療が終わるか又は後遺症が固定してからでないと算定できませんので、示談も通常これ以降に行われます。
では示談とは何でしょうか。示談は、通常加害者が損害の支払義務を認めてこれを一定の条件に従って支払うことを約し、被害者がその支払条件に記載以外の請求を行わないことの債務免除を骨子とする、和解契約の一種です。これが有効に成立すると、被害者に後日別個の損害の発生があっても請求できないことになります。
では本件の状況下で、示談は有効に成立しているのでしようか。確かにドライバーの男性は「これで許してほしい」「示談金ということでよろしく」と発言して3万円支払っています。おそらくこれは、3万円で示談を成立させたい、これ以上の賠償は免除してほしい、という趣旨でしょう。対する相談者の男性は確かに3万円を受け取っていますが、これは上記損害額算定方法や示談の効力を明確に認識したものとまでは思われず、3万円以上の債務免除を含む示談を成立させる確定的な内心の意思まではなかったものと思われますので、示談即ち和解契約は成立していないと考えます。従って、相談者は治療費等の発生した損害額に過失相殺割合を減額し既払金3万円も減額した残金を加害者に請求できます。
さて、相手の身元の割り出し方法ですが、車種とナンバーの一部を覚えて折られるので陸運局に行き、車検証を請求してください。そうすればその車の所有者・使用者等が判明します。これを手がかりに調査して下さい。
出典: 土曜日の人生相談(2001年8月25日放送分)
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