内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 購入/契約 】

自殺した人がいるマンションを買ってしまった!
中古マンションの売買契約の解除についてお聞きします。
我が家は、このたび新聞のチラシで見つけた中古マンションを購入しました。
ところが、契約も済み、頭金も払って、引越しの準備をしているときに、近所の人との話で、そのマンションのその部屋で過去に自殺した人がいるということがわかったのです。仲介した不動産屋さんに聞くと「そんなことは知らなかった。売り主は何も言わなかった」とのことでした。
別に幽霊が出るというわけではないのですが、なんだか怖いので、売買契約を解除したいと不動産屋さんに相談しました。担当者は「気になるのでしたら、解約された方がいいですね」と、売り主さんに売買契約の解除をお願いしてくれたのですが、売り主さんは「家族が自殺したのは5年も前のことで、リフォームもしたし、住むには問題ない。自分たちも、この5年間は問題なく平穏に暮らしてきた」と言い張って、契約解除に応じてくれないと言うのです。
そこで伺いたいのですが、このような場合、売り主が解約解除に応じてくれないときに裁判に訴えて、契約解除を強制的に行うことはできるのでしょうか。
相談者: 近畿某市在住の男性(45才)
ご相談の件ですが、結論から申し上げると、売買契約を解除して既に支払った頭金の返還を求めることができます。
居住用不動産の売買において、その建物に目的を達することができないような瑕疵(つまり、欠陥)があるときは、民法の規定により、売買契約を解除することができます。
ところで、本件の場合、購入した建物で自殺した人がいるということが、売買契約の解除を求めることのできるまでの瑕疵(欠陥)に該当するかどうかが問題となります。
例えば、売買契約のときに発見できなかった屋根の欠陥により雨漏りがひどくて住めないとか、シロアリ被害があり、柱や梁がぼろぼろで補修には、多額の費用がかかるような場合に、売買契約を解除できるというのは、理解しやすいと思います。
しかし、その建物で自殺者があったということは、建物の構造的な欠陥でもないし、居住するには、支障がありません。人によっては、全く気にしない人もあると思います。
しかし、例えば、売買目的のマンションで6年半前に首吊り自殺があったことを知らずにマンションを購入した人が、売買契約の解除を求めて起こした事件ですが、横浜地方裁判所平成1年9月7日の判決では、売買契約の解除を認め、次のように述べています。「購入者は、永続的な居住の用に供するために本件建物を購入したものであって、右の場合、本件建物に買受の6年前に縊首自殺があり、しかも、その後もその家族が居住しているものであり、本件建物を、他のこれらの類歴のない建物と同様に買い受けることは通常考えられないことであり、右居住目的からみて、通常人においては、右自殺の事情を知ったうえで買い受けたのであればともかく、子供を含めた家族で永続的な居住の用に供することは、はなはだ妥当性を欠くことは明らかである。」
また、居住用建物に附属する物置の中で服毒自殺を図った後、病院に運ばれて死亡した事実のある不動産売買の事例で、仙台高等裁判所平成8年3月5日は、同じく契約の解除を認め、次のように述べています。「そのようないわくつきの建物を、そのような歴史的背景を有しない建物と同様に買い受けるということは、通常人には考えられないことであり、原告もそのようないわくつきのものであると知っていれば絶対に購入しなかったものと認めることができる。」よって「本件土地及び建物に隠れた瑕疵はないとすることはできない。」
このように本件では、契約を解除することができると考えらえます。
出典: 土曜日の人生相談(2001年7月7日放送分)
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