内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 契約のトラブル 】

雨漏り修繕工事の不完全。どうする?
工事の支払について相談があります。
昨年、自宅が雨漏りするので業者(A社)に連絡し、工事を依頼し、修理してもらいました。しかし、先日また同じ場所から雨漏りがするので、どうなっているのか、とA社に問い合わせ、来てもらったのです。そして雨漏りのする天井の部分を開けてみた人が、びっくりするようなことを言ったのです。「ああ、これはずさんな工事をしてますねえ…」
A社はこの1年間でトップが代わり、社員も多く代わったそうです。昨年工事をした人は既に辞めており、先日自宅に来た人は新入り組だそうで、このずさんな工事をA社が請け負ったものであることを知らなかったと言います。
現在A社から請求書が届いているのですが、私はこの場合、今回の工事の支払をする必要があるでしょうか?A社がずさんな工事をしたと認めたことにはならないでしょうか?
相談者: 滋賀県在住・匿名希望の女性(52歳)
1.あなたは業者(A社)に家の雨漏りの修理を依頼したということですから、あなたはその業者と請負契約を結んだことになります。
請負契約というのは、仕事の完成を目的とする契約ですから、特別の約束をしない限り、仕事が完成されるまで注文者は請負人(業者)に対して報酬(工事代金)を支払う必要はないわけです。
ただし、いったん仕事が完成したということで工事が終わったけれども、それが不完全であった場合(この場合も本来は仕事がまだ完成されてないと言えるのですが)は、民法に特別に規定があって、注文者は相当な期間(工事完了に必要な期間)を定めて、もう一度請負人に不完全な箇所を修理してもらうことや損害賠償を請求できることになっています。これを法律用語で請負人の担保責任といいます。そして不完全な箇所を直してもらう事を瑕疵の修補(かしのしゅうほ)といいます。
2.本件では、1年前に工事をしてもらった同じ箇所から再度雨漏りがするとのことですので、前の雨漏りの工事は完全ではなかったということになり、しかも同じA社の社員がこれを認めているのですから、A社に担保責任が発生するでしょう。
A社のトップが替わり、社員の多くも1年前と代わっていたとしてもA社は以前のA社と同一性を維持していますから、やはり現在のA社に請求できます。
3.ですから結論を言いますと、あなたはその業者(A社)に対して、もう一度雨漏りの修理を請求する事ができ、そして修理の完了するまでは工事代金の支払いを拒むことができます。但し、代金の支払いを拒めるのは、もう一度雨漏りの修理を業者に要求し、業者が修理をするまでの期間ですから、雨漏りの修理を請求しないで業者に工事代金の支払いだけを拒むということはできません。
なお、この請負人に対する修理の請求は、原則として仕事が完成してから1年以内に請求する必要がありますが、例外的に土地の工作物については5年以内に請求すればいいことになっています。建物も土地の工作物ですから、あなたの場合もまだ請求する事ができますから、早くA社にもう一度修理をするよう要求してください。
出典: 土曜日の人生相談(2002年7月20日放送分)
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