内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 婚約不履行 】

婚約不履行、結婚相談所の責任は?
結婚前提の交際について相談があります。
私は結婚相談所で薦められた男性と半年ほど交際を続けていました。お互いに気にいっていると思っていたので、そろそろ結婚の話をしようか、と考えていたところ、突然彼が「別の結婚相談所で出会った女性とうまくいっているので別れてほしい」と言ってきたのです。
結婚相談所には「順調に交際している」と報告をしていましたので、2人の仲裁と、責任をとってほしい旨を伝えましたが、結婚相談所は「大人同士のことですし、そこまでの責任はとれません」と言われてしまいました。
これがコンパやナンパで知り合ったというならまだ分かりますが、結婚相談所で紹介されるということは、結婚が前提になっていることは明らかです。なのに同時に2つの結婚相談所をかけもちする姿勢は一種の結婚詐欺ではないかと思うのですが、この男性に責任をとってもらうわけにはいかないのでしょうか?また高いお金を支払って紹介を受けた結婚相談所には本当に責任はないのでしょうか?教えてください。
相談者: 兵庫県在住・匿名希望の女性(36歳)
第1 交際相手の男性の責任
1.相手の男性は、交際相手の女性の信頼を土足で踏みにじる人間として最低の男であると言えます。結婚相談所を利用して二股をかけるとは、社会的には許されない男であり、相談された女性が怒る気持ちは当然だろうと思います。
従って、そのような意味でこの男性には社会的責任はあると認められます。
2.では、法律上の責任もあるかとなると、これは、少しいくつかのケースを想定しないと簡単には法的責任の有無を判断することができません。
相談のケースでは、結婚の話も具体的に出ていなかった様なので、男性との間で婚約に至っていないと思われるので、婚約不履行による責任追求は難しいと考えられます。
次に男性の行為が、相談者に対する民法上の不法行為になるかどうかが問題となります。
その場合の判断基準としては、交際期間の長さ、性的関係があったかどうか、男性の不誠実さの程度等が検討されなければならないと思われます。
相談のケースの場合、交際が約半年であり必ずしも短期間とは言えないと思われます。
また、男性が他の結婚相談所で紹介を受けた別の女性と同時期に交際していたということで、男性について、不誠実さがうかがえます。ここで男性が最初から「遊び」のつもりで相談者と交際したのであれば、不法行為が成立する可能性はあると思われます。
ところで、相談のケースでは、男性との性的関係について不明なので、仮に、性的関係があった場合には、女性の貞操権が不当に侵害されたと考えることもできるので不法行為が成立する可能性があります。性的関係がない場合には、先に述べたように最初から女性を欺く意図があったケースの場合には不法行為が成立する可能性がありますが、最初から欺くつもりはなかった場合は難しいと思われます。
不法行為が成立する場合は、男性に対し損害賠償としてのいわゆる慰謝料が請求できると考えられます。
なお、実際に裁判となったケースで男性が結婚相談所で女性2人の紹介を受け、同時期に2人と交際中、女性の1人が約半年の交際中妊娠中絶までしたということで、女性から男性に対し損害賠償請求をして300万円男性が支払うことを命じた判決が平成8年東京地方裁判所で出ておりますので参考になるかと思います。
第2 結婚相談所の責任
結婚相談所は、通常会員登録をした男女に対し、それぞれ結婚相手として相応しい人を紹介する所ですが、紹介を受けた男性が先程述べたような反社会的なことをすることまで予測することは通常困難ですので、結婚相談所にその責任をとらせることは難しいと思います。
出典: 土曜日の人生相談(2002年7月27日放送分)
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