内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 債権回収 】

貸金の取立
私は、不動産業を営んでいますが2年前ある取引先の企業の社長に200万円を貸しました。その社長とは20年来の付き合いがあったものの、金の貸し借りということで一応、念書を書かせました。
ところが半年ほど前にその取引先の企業が倒産、社長は家族もろとも夜逃げしてしまいました。
私にとって200万円は少なくない金額ですので、行方を必死で探し、ようやく居場所を突き止めました。
しかし、その元社長は妻のパート代で生活しているような有様でとても返済能力はないと言い張ります。
こんな場合、どうすればお金が戻ってくるのでしょうか?また念書はどれだけの効力を持つのでしょうか?
相談者: 京都市の58歳の男性
1.今すぐに返済してもらうのは、無理なようです。
2.ご相談のような場合の「念書」は、あなたがお金を貸したという事実を証明する証拠となるもので、その意味で大事な書面です。
3.ご質問の効力という点ですが、仮に「念書」がない場合でも、あなたが取引先の企業の社長にお金を貸したという契約、すなわち、返してもらえるという権利は生じています。従って「念書」がない場合でも、あなたはお金を返すようにと請求はできます。
但し、借りた相手方が、お金を借りたことを認めていれば問題はありませんが、もしも相手方が借りたことを認めない場合、裁判所でこちらの主張を認めてもらうために、苦労することになります。そこで、最初にお話ししたように、「念書」という書面は大事な意味をもつものといえます。
4.ところで、あなたが200万円を、取引先の企業の社長に貸して、「念書」を書いてもらったとのことですが、誰に貸したことになるのでしょうか。
ご相談の内容からすると、多分その社長個人に貸され、「念書」もその社長個人が署名・押印されたものと思われますが、そのことは、社長個人に請求できるのかどうかの重要な点となります。その社長が経営している会社に貸したというのであれば、社長個人には請求できないことになります。但し、「念書」に、社長個人もいわゆる「連帯保証人」として署名・押印しているのであれば、「連帯保証人」の責任として、社長個人に返済を求めることができます。
5.社長個人に対して、法的に請求ができるとしても、ご相談のように「無い袖は振れぬ」と言われれば、仮に裁判をされて勝訴しても、お金を取り戻すことは事実上、難しいことになります。
お金の返済という点の方法としては、
(1)少しずつでも良いと考え、分割での支払いの約束をし、その内容を書面にして、任意の履行を期待する。なお、社長とは20年来とのことですので、その奥さんともお知り合いでしょうし、分割返済について奥さんも責任をもってもらう(例えば、連帯保証人)方向での話をすることを考えられては。
この場合、分割返済が滞ったときには、その時点で裁判を出すかどうかを考えることになります。’
(2)現時点で裁判を出して、勝訴判決を得て、社長個人の再起をまって時間をかけて回収を図る。なお、裁判に相手方が来て、裁判所で分割返済の和解が成立する可能性もあり、この場合、分割返済が滞っても更に裁判を出す必要はありません。
ちなみに裁判の費用は、印紙・切手等の費用として約2万円、弁護士に依頼されると事件を開始する際に、着手金として金16万円(大阪弁護士会報酬規定の標準額)の費用が必要となります。
出典: 土曜日の人生相談(1998年5月30日放送分)
戻る