内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 親権 】

親権の変更をしたい!
親権のことについてご相談します。
3年前に私の父が緊急入院し、その世話をするために実家(遠方です)に帰ってから、そのまま自宅に戻らなかったのが原因で離婚しました。
従来から夫が私に暴力をふるっていたので、どうしても帰る気になれなかったのです。もちろんおいてきた、当時小学校5年生の娘のことは気になっていましたが、転校させるわけにもいきませんし、自宅で生活させていました。
自宅に戻らなかったことを責められ、夫は私に離婚を迫りました。そして子供の親権をも譲ったのが大失敗でした。その後、夫は娘にまで手を出すようになったと分かったのです。娘は少し性格が荒っぽくなってきているようなので、それも心配ですし、第一このままではかわいそうだと思っています。
そこで、あらためて私が娘を引き取って育てたいと思うのですが、親権を私に変更することは可能でしょうか。またどのような手続きをとればいいでしょうか。さらに親権を獲得できた場合、養育費なども請求できるのでしょうか?
相談者: 大阪市在住・匿名希望の女性(42歳)
1.まず結論から言いますと、(1)親権者の変更は、家庭裁判所での調停または審判という手続を踏めば可能です。そして、(2)親権者の変更がなされた場合、相手方に対して養育料を請求することも可能です。
以下、その内容について説明します。
2.親権者を変更する手続は、法律に定められています。具体的には、親権者の変更は、父親と母親の間で勝手にすることはできず、必ず家庭裁判所に調停か審判を申し立ててすることになっています。
3.調停は、家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらって、話し合いで問題を解決するという手続です。話し合いで折り合いが付きそうであれば、調停の申立をしてみるのも1つです。
しかし、相手方が、親権者の変更にテコでも応じないようであれば、家庭裁判所に家庭環境等を調査してもらって、どちらが親権者として相応しいのか決めてもらう必要があります。これが審判の手続です。
いずれの手続も、最初に家庭裁判所に申立書を提出する必要があります。弁護士さんに手続をしてもらうのが安心ですが、家庭裁判所には申立書の定型書式がありますから、それに書き込みをして、自分で申立の手続をすることも可能です。
4.審判で親権者が変更されるのは、法律上「子の利益のため必要があると認めるとき」であるとされています。これは、具体的には、以下のような事情を総合考慮して判断されます。
まず、親側の事情として、(1)子供にどのような養育環境を準備してあげられるか(居住環境、教育環境、家庭環境など)、(2)子供に対する愛情や監護の態度、(3)親の心身の健全性などが考慮の対象になります。
また、子供側の事情として、(1)子供の年齢や心身の状況、(2)子供の精神的安定(親に対する愛情、友達関係、学校関係、それまでに維持されてきた安定した生活環境の存在など)、(3)子供の意思などが考慮の対象になります。
5.あなたの場合、夫がお嬢さんに暴力を振るっているというのですから、今のお嬢さんの生活環境が望ましいものではないことは明らかです。暴力がお嬢さんの性格にも悪影響を及ぼしているということも、心配です。あなたにも「お嬢さんに良い養育環境を準備してあげられるか」という問題はありますが、この場合、親権者の変更が認められる可能性は高いといえます。
6.あなたに親権者の変更が認められ、あなたがお嬢さんの監護をするようになれば、養育にかかる費用(養育料)の請求もできます。この問題も、親権者の変更と同様に、話し合いが可能なら調停で、話し合いが難しければ審判というように、家庭裁判所に申立をして解決することになります。
養育料の具体的な額は、両親の生活レベル、財産や収入、子供の年齢などを考慮して決められます。特に裕福でもなければ、養育料は月3万円から多くても月5万円になることが多いようです。
7.ただ、せっかく決まった養育料を相手方から支払ってもらえないというケースも決して少なくありません。その場合、相手方の財産に強制執行をするということも考えられますが、そのためには、相手方が財産をもっていて、かつ、それがどこにあるのかを把握している必要があります。そのため、強制執行をしようとしても、思いのほか手間がかかったり、殆どうまくいかなかったりするのが現実です。
まずは相手方の養育料に頼らなくても、お嬢さんに十分な養育環境を与えられる方法を考えるのが、賢明であると思います。
出典: 土曜日の人生相談(2002年10月5日放送分)
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