内容の根拠になる法律は放送された時点のものであり、その後法律が改正されている場合があります。掲載内容はあくまでも、参考にとどめていただき、実際の対応については弁護士に相談されることをお勧めします。

 【 事務管理 】

友人の名で懸賞応募。賞品は誰のもの?
懸賞のことで相談があります。
私はある食品会社の懸賞で、「商品券3万円分プレゼント」とあるのを雑誌で見つけ、応募しました。自分の名前だけでなく、家族の名前や友人Aの名前を使って、数十枚のハガキを出したのです。
しばらく経って、友人Aから電話があり、「応募してもいない懸賞の賞品が贈られてきた」と言うのです。まぎれもなくそれは私が応募したものでしたので、その旨を告げるとAは、
「断りなしに私の名前を使って応募したのは許せない。まして私の名前で当選し、手元に来たのだから、この商品券は私のものだ」と言うのです。
応募したのは私で、ハガキ代も結構かかったので、商品券を欲しい、と何度言っても取り合ってくれません。
こういった場合、やはり懸賞の商品券は友人Aの物となってしまうのでしょうか?
相談者: 和歌山県在住・匿名希望の女性(33歳)
答えは、商品券は友人Aのものとなります。その理由は次のとおりです。
この食品会社の懸賞は、「抽選にあたったら商品券3万円分をあげますよ」というもので、法律の世界の言葉で言うと条件付きの贈与契約ということになります。食品会社が懸賞の応募者を募集するのが契約の申し込みということになり、これに相談者が応募するのが契約の承諾ということになります。
また、相談者が友人Aの名前を無断で使って応募したのは、友人Aを代理する権限がないのに勝手に友人Aの名前を使って契約の承諾をしたということであり、法律の世界ではこれを「無権代理」(むけんだいり)と呼んでいます。この場合、友人Aには原則として商品券をもらう権利はありません。ただ、友人Aが「無断で名前を使われたけど、それはもう構わないから、私が応募したことにします。」と言えば、友人Aは自分自身が応募したことと同じになります。従って、この場合、友人Aは商品券を自分の物とすることができます。
これは、友人Aが一方的に得だという気がしないでもありませんが、次の場合と比較して下さい。友人Aの友達Bが、信用のないBでは金融機関がお金を貸してくれないので、Bより信用のあるAになりすまして、Aの名前でお金を借りたとします。この場合、一定の条件を充たせば、金融機関はAに対して請求することができますが、Aの方で「私が借りたわけではありませんが、友達のしたことなので、私が責任を取って、お金を返します。」と言えば、当然Aはお金を返済することができます。つまり、Aと金融機関との間で契約が成立したということです。このように、Aに不利なことをAが後から追認すれば、A自身が契約したことと同じになるのですから、Aに有利なことを後からAが追認しても、A自身が契約したことと同じになるはずです。これでわかっていただけますかね。
実際上も、本件の相談者は勝手に人の名前を使ったのですから、多少不利益を被っても仕方ないでしょう。もし、友人Aに商品券を持って行かれるのがいやならば、事前に断っておくとか、「これは自分の物だ」と主張しないような人の名前を借りるとか、友人Aの住所を自分の住所と同じにしておくとか、いろいろ対処方法はあったはずです。だから、そういう意味で落ち度があった相談者が不利益を被るのはある意味、仕方ありません。
相談者には申し訳ありませんが、やはり人の名前を無断で借りるというのはまずかったですね。今回の損はハガキ代程度ですから、授業料を支払って社会勉強をしたと思って、すっきりあきらめて下さい。
出典: 土曜日の人生相談(2002年11月9日放送分)
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