大阪弁護士会について
令和6年度 役員就任のご挨拶
私たち8名は、この度、2024年(令和6年)度の大阪弁護士会の会長及び副会長として、4月から1年間、当会の運営を担っていくことになりました。
尊重(リスペクト)されていますか、あなたは?わたしは?
~弁護士は一人ひとりの思いを大切にします~
これが、私たちが掲げた今年度のスローガンです。
人権を尊重するとは、個々人をリスペクトする、個々人を大切にするということを意味すると考えます。人権を身近に感じていただくため、「尊重」に「リスペクト」という読み仮名を付けました。人権を身近なものとして認識し、個々人に「尊重(リスペクト)されていますか?」と問いかけたいと考えます。
現在、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争など世界情勢は極めて不安定です。私たち弁護士は、このような時こそ、「法の支配」、「人権」の重要性を訴え続けなければなりません。また、元日の能登半島地震では甚大な被害が発生し、復興には長い道のりが予想されます。当会として、被災されたみなさまの思いを大切にして、1日も早く平和な日々が戻ってくるように「持てる力」を発揮します。
私たちは、このような思いのもと、次のような取組みを進めてまいります。
- ① 個人の思いを大切にする人権活動の支援
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当会は、長年にわたり地道な人権活動に取り組んできました。私たちは、当会の「持てる力」を活用して、「リスペクト」されていないという思いの解消に取り組みます。その中でも、特に注目しているのは子どもの人権です。1989年に子どもの権利条約が制定されて今年で35年になります。2023年には憲法及び子どもの権利条約の精神にのっとったこども基本法が施行されました。私たちは子どもの問題、特に子どもの意見表明権については強い関心を持っています。
また、近時、女性に対する差別、子どもに対する虐待、高齢者や障がいのある人、外国人、性的マイノリティなどに対する不当な取扱いなどが、身近な人権問題として認識されてきています。また、貧困問題も解決すべき課題です。
私たちはこれらの人権問題に積極的に取り組み、一人ひとりがリスペクトされる社会を目指します。 - ② 市民、企業に寄り添う取組み
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(1)総合法律相談センターの活性化
当会では、社会のすみずみまでリーガルサービスが行き届くようにするために、総合法律相談センターを設置し、常設相談所あるいは巡回相談所として運営しています。今年度は、インターネットで相談担当弁護士の氏名や取扱分野を確認して相談予約ができる新システムをスタートさせるなど、市民のみなさまがより利用しやすいように総合法律相談センターを拡充し活性化します。(2)中小企業・NPO法人等に対する法的サポートの拡充
大阪は特に中小企業の街です。当会ではそのような中小企業・小規模事業者に対する法的サポートを拡充します。例えば、弁護士が会社に出向いて会社の定款や株主名簿、株主総会・取締役会の開催状況や議事録等を確認し、改善点等をアドバイスする「会社の健康診断」を導入したいと考えています。これによって、中小企業のコンプライアンスやガバナンス強化、成長の支援、また、スタートアップ支援につながることを期待しています。
また、NPO法人を支援している中間支援組織との連携も含めて、NPO法人等への法的サポートを拡充していきます。 - ③ 行政手続き・行政サービスにおける弁護士関与の普及
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行政手続きや行政サービスに弁護士が関与することは、行政手続きの透明性を確保し、人権擁護の観点をより実質的に浸透させていくことにつながります。当会としては、そのような観点から今後もそれら関与の拡充に努めます。例えば、各種行政庁による立入調査や行政処分手続きにおける弁護士の関与は十分ではなく、それら対象となった事業者や市民のみなさまに対するサポート体制の構築に努めます。
また、児童福祉の領域では、子どもの意見表明権に関連してアドボカシー(意見や意向の代弁)の導入が始まりつつあり、良質の対応ができる弁護士の養成を検討・実施します。 - ④ 刑事関係
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プレサンス元社長冤罪事件、大川原化工機事件をはじめ、いまだに冤罪事件が発生しています。捜査段階の被疑者の取調べに弁護士の立会いがないことが大きな原因となっています。このため、一部重大事件しか実施されていない取調べの録音・録画は、全件、全過程につき実施が必要です。取調べへの弁護士立会いを求める運動や勾留に対する準抗告強化運動などを継続し、人質司法からの脱却を目指し、継続・強化します。また、法廷内での手錠腰縄問題対応、死刑廃止に向けた運動、再審法制の改正の取組みについても継続・強化します。
- ⑤ 会員の不祥事対策
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当会は、昨年12月に、会員が国際ロマンス詐欺等の被害金返還請求事件を受任する際に、広告業者から派遣された事務員に事情聴取や委任契約を締結させるなどしていた非弁提携の事案を公表しました。このように、広告業者等が弁護士に対して非弁提携を持ちかけることが増加しているため、非弁提携に対する調査の強化、弁護士倫理研修の実施、注意喚起などすみやかに対応します。
また、メンタルダウンに起因して、事件放置等の不祥事が発生することがないように、弁護士のメンタルヘルスに関する研修のほか、メンタルの不調に陥った会員に寄り添うメンタルヘルス相談や会員職務適正化支援特別嘱託制度のより一層の活用を検討します。 - ⑥ 能登半島地震被災者への法的支援
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令和6年1月1日の能登半島地震における甚大な被害状況が明らかとなってきています。日弁連でも災害対策本部が設置され、支援活動が行われていますが、当会においても、引き続き、金沢弁護士会をはじめとした被災地の弁護士会、また、近弁連など各弁連とも連携しながら、フリーダイヤルによる無料法律相談の実施、その他できうる限りの支援をします。