大阪弁護士会の活動

貧困・生活再建問題対策本部の活動

どうして、弁護士が貧困対策なのか

貧困は、本来生まれながらにして享有している人権を侵害するものです。
憲法13条は、個人の尊厳原理に立脚し、幸福追求権について最大の尊重を求めています。また、憲法25条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。ところが、貧困状態では、こうした人権が保護されていません。

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としています。貧困問題を解決することは、まさに、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することであり、弁護士の使命なのです。

貧困・生活再建問題対策本部設立の経緯

日弁連は、2008年の第51回人権擁護大会において、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を満場一致で採択しました。この決議の趣旨及び大量の派遣切り等の雇用不安が広がる社会情勢を踏まえ、日弁連は、2008年12月に貧困と人権に関する委員会、2010年4月には、貧困問題対策本部を設置しました。このような経緯を受けて、大阪弁護士会でも、2010年9月、貧困・生活再建問題対策本部が設立される運びとなりました。

組織構成

大阪弁護士会では、以下の部会を設け、様々な取り組みをしています。

  1. ディーセントワーク部会
    貧困問題を解決するには、ディーセントワークを確保することが大切です。ディーセントワークとは、働きがいのある人間らしい仕事のことです。具体的には、権利が保障され、十分な収入を得ることができ、適切な社会的保護のある生産的な仕事のことです。
    ディーセントワーク部会では、非正規労働やワーキングプアの問題に取り組んでいます。具体的には、公共工事や公共サービス委託事業で働く人たちの労働条件を確保する「公契約法・公契約条例」の制定を求める取り組みなどを進めています。
  2. 女性と子どもの貧困部会
    貧困と格差が広がる中、経済的・社会的弱者になりがちな女性や子どもは、厳しい状況に置かれる傾向があります。実際、日本の母子世帯は、極めて厳しい生活状況に置かれており、厚生労働省の2011年度全国母子世帯等調査によれば、母子世帯の平均就労収入は年181万円しかありません。このような問題意識のもとで、女性と子どもの貧困部会は、次のような問題に取り組んでいます。
    • 裁判所の実務で用いられている養育費算定方法の問題点についての検討と、ブックレットの出版等による啓発活動
    • 母子生活支援施設や婦人保護施設の生活実態調査と、今後取り組むべき課題についての検討
    • 男女賃金差別の克服に向けた取り組み
    • 母子家庭をめぐる各種社会保障制度の現状と課題についての研究
  3. 生活保護部会
    生活保護は憲法25条が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障するために重要な制度です。しかし、「水際作戦」と呼ばれる違法な窓口規制や、偏見を煽る「バッシング」が蔓延し、2013年度には制度史上最大の生活保護基準引き下げ等の抜本改革が行われています。この部会では、生活保護制度が「最後のセーフティーネット」として本来の機能を発揮することができるようにするための取り組みをしています。また、後述する生活困窮者自立支援制度における法律相談に関する研修会や意見交換会等の企画・運営を行っています。

主な取り組み

1.貧困問題市民懇談会、各種シンポジウム

当本部では、様々な取り組みをしていますが、その内容を広く社会に広めなければ、意味がありません。そこで、貧困問題に関心をもつ市民の方々と定期的に懇談会を持ったり、シンポジウムを開催するなどしています。これまでの取り組みは次のとおりです。今後の予定は、大阪弁護士会のホームページのトップページで随時掲載いたします。

2015年度
  • アメリカ調査報告会「アメリカの労働時間規制と最低賃金制度」
  • 奨学金とブラックバイトから考える若者の貧困
  • 早く行きたいアベノミクスの向こう側~労働者のための労働法制の復権を目指して~
  • ドイツにおける最低賃金制度と雇用社会のゆくえ
2016年度
  • これからどうなる?社会保障~財源を生み出す公正な税制を考える~

2.各種相談会・電話相談会

また、各種相談会・電話相談会も行っています。これまで行った相談会は次のとおりです。
今後の予定は、大阪弁護士会のホームページのトップページで随時掲載いたします。

電話相談会「暮らしとこころの相談会」
解雇や賃金未払いなどの労働問題、生活保護、公的貸付、多重債務などの生活問題、それらを原因とするこころの問題などに弁護士が無料で相談に応じます。
毎年、春と秋に実施しています。本年の開催日時および電話番号は大阪弁護士会ホームページのトップページから、イベント欄にてご確認ください。
電話相談会「全国一斉労働相談ホットライン」
労働者を取り巻く様々な問題に対応するため、現在の労働環境における問題に対して適切な助言を行うこと、および労働者の深刻な事態、不安、悩みを明らかにするための電話相談(ホットライン)です。
毎年、夏に実施しています。本年の開催日時及び電話番号は大阪弁護士会ホームページのトップページから、イベント欄にてご確認ください。
電話相談会「全国一斉生活保護ホットライン」
貧困に苦しむ人が増える中で、生活保護制度の重要性が高まっています。しかし、生活保護の申請窓口では、違法に申請を拒絶し、あるいは申請すらさせない等の違法・不当な行為が発生しています。また、生活保護を受けた後にも、生活保護制度に対する偏見や無理解から、生活保護受給者が不安に思うことが出てくることがあります。
そこで、生活保護制度利用者の深刻な実態、不安、悩みを明らかし、それに対し、適切に助言を行うためのホットラインを毎年、年末年始に行っています。本年の開催日時及び電話番号は大阪弁護士会ホームページのトップページから、イベント欄にてご確認ください。
電話相談会「全国一斉奨学金問題ホットライン」
教育費の高騰と経済的困難の拡大により、大学等に進学するために奨学金に頼らざるを得ない人が増加する一方で、非正規雇用の拡大等により、安定した職と賃金を得て奨学金を無理なく返済していくことができない者が増えています。
そこで、奨学金の返済が困難な場合に、適切な救済制度を周知し、法的整理や訴訟対応について、弁護士が助言するための電話相談(ホットライン)です。
不定期に開催しています。開催する場合には、大阪弁護士会ホームページのトップページから、イベント欄にて告知いたします。

3.生活困窮者自立支援制度

平成27年4月から、生活困窮者自立支援制度が始まりました。この制度は、全国の福祉事務所設置自治体が実施主体となって、官民協働による地域の支援体制を構築し、自立相談支援、住居確保給付金の支給、就労準備支援事業そのほか生活困窮者の自立促進に関し包括的な事業を実施するものです。

このうち、自立相談支援では、債務整理・自己破産、離婚、立ち退きなど、法的な問題を含む相談が多数含まれており、その適切な解決には、弁護士による法律相談が必要不可欠です。

そこで、当本部では、大阪府下の各自治体と連携の下、生活困窮者の法律問題に取り組んできた弁護士を、各自治体に派遣し、自立相談支援を補完する法律相談を行っております。詳細は各自治体によって異なりますが、①定期的に弁護士を自治体に派遣して、法律相談を行う、②随時、相談員からの事例相談、③随時、相談員からの電話相談、④相談員を対象とした研修会の実施等、各自治体からの要望に応え、法的支援を行っております。

2016年10月末日時点で、大阪府下の8つの自治体と委託契約を締結し、上記相談活動等を実施しております。当本部は、この連携を大阪府下の全自治体と進めていくことを目標としておりますので、当本部の上記活動に興味関心のある自治体や生活困窮者自立支援事業の受託事業者の方で、当本部の活動に興味・関心のある方は、以下の連絡先まで、ご連絡ください。

大阪弁護士会 委員会部 人権課
TEL.06-6364-1227 / FAX.06-6364-7477

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