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マンガで労働法! 緑橋昂輝&白田弁護士の労働事件簿
第3章 転勤、これって嫌がらせ!?
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父の介護ができなくなったらどうしようかと不安でしたが、なんとか転勤を回避することができました。
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良かったですね。
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交渉の際に、会社に嫌がらせ目的があることや父の介護の事情を強調してくださったんですよね。
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そうですね。
会社が労働者の職務内容を変更することや、部署や勤務場所を変更することを「配転」と言います。「配転」のうち、転居が必要な場合が今回の「転勤」ですね。
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人事に関わることだし、会社に言われたら、怖くて、なかなか逆らえないです。
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配転命令が無効になることもあります。
勤務場所や職務内容を限定する合意がある場合は、合意に反する配転命令は出来ません。例えば、契約書で「勤務場所を大阪府内に限定する」と定められている場合、大阪府以外への配転命令は合意違反で無効になります。
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僕も白田先生に契約書をチェックしてもらいましたが、勤務地や仕事の内容を限定する合意はありませんでした。合意がない場合は、どうなるんですか。
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諦めるのは早いです。勤務地や職務を限定する合意がない場合でも、最高裁判所の判例では、
①業務上の必要性がない場合
②不当な動機・目的をもってなされた場合
③労働者に著しく大きい不利益を負わせる場合
は、無効となると判断されているんですよ。
※東亜ペイント事件(最二小判昭和61年7月14日 労判477号6頁)
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不当な動機・目的ってどんな場合に認められるのでしょうか。
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裁判例として、労働者が内部通報をしたこと等に反感を抱いた上司が行った配転命令について、動機が不当であると判断されたものがありますね。※
今回のケースと似ているのではないでしょうか。
※オリンパス事件 東京高判平成23年8月31日 労判1035号42頁
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「著しく大きい不利益」って、どれぐらい大きい場合を言うのでしょうか。
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配転によって病気の家族を介護・看護できなくなってしまう場合に、労働者に「著しい不利益」があると認めた裁判例があります。※
育児・介護については、育児介護休業法26条に、子の養育や家族の介護が困難にならないように配慮しなければならないという配慮義務が定められています。会社が配転を命じる際に配慮を行ったかどうかは、考慮されることになるでしょう。
※ネスレ日本事件 東京高判平成18年4月14日 労判915号60頁
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こんにちは!今回は私の活躍もありましたよね~。
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そうなんだよ。本当に助かったよ~。
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嫌がらせで転勤させられてしまうなんて本当に酷いと思って…、何か協力できないかと思ったんです。
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今回の転勤に関して、大和田さんの協力が得られたことは非常に大きなポイントでしたね。
交渉のはじめでは反論していた社長も、萱島さんとの会話を聞いていた人がいると知り、言い逃れができなくなったようです。転勤の問題に限らず、会社との交渉の中で、「言った・言わない」状態になってしまうことがありますので、重要な場面を見聞きしていた方が証言に協力してくださるのは心強いですね。