成年被後見人の選挙権回復 投票の誘導が心配-<法律のツボ>
投票の意思を確認し候補者情報提供を
Q.知的障害のある知人がいます。弁護士が成年後見人になっており、これまでは選挙権が失われていました。
4日公示された参院選から選挙権が回復すると聞きましたが、詳しく教えてもらえますか。
また、特定候補のみの情報を伝えられるなど投票を誘導するような不正は起きないのでしようか。
A.これまでの公職選挙法は、成年被後見人の選挙権を認めていませんでした。
しかし、東京地裁は今年3月14日、この公選法の規定は憲法に反し無効である、との判決を言い渡しました。
判決はまず、参政権は国政への参加の機会を保障する国民の基本的権利であり、全ての国民に平等に与えられるべきものであると指摘しました。その上で、障害のある方も主権者であることは言うまでもなく、成年被後見人から選挙権を奪うことは、自己決定の尊重などの成年後見制度の趣旨や国際的な潮流にも反するとして、憲法違反の判断を下したのです。
この判決を受け、先の国会において公選法が改正され、今月以降の選挙から成年被後見人にも選挙権が認められ、投票できることとなりました。
とはいえ、質問者の知人の方は知的障害があるとのことですので、このニュースを知らないかもしれません。
また、知っていても、候補者などの情報を得ていないかもしれません。
そこで、周囲の方や成年後見人の弁護士から知人の方に投票の意思を確認し、必要に応じて候補者の情報などを提供することが望ましいと思われます。
ところで、成年被後見人の投票を誘導するような不正が起きないか心配とのことですが、今回の公選法の改正で、成年被後見人が自分で投票用紙に記入することができない場合、投票事務に従事する人だけが代理(補助者)として投票できるとされました。
また、成年被後見人が入院・入所されている病院・施設などにおいて不在者投票を行う際には、市区町村の選挙管理委員会の選んだ立会人を立ち会わせるよう努めなければならないとされました。
これらの改正により公正な投票が確保されることが期待されます。
〈回答・那須良太弁護士(大阪弁護士会所属)〉
2013年7月13日 毎日新聞大阪版朝刊掲載