証人尋問と当事者尋問
訴訟事件の中で、弁護士がかなりエネルギーを使うのが、証人尋問(当事者尋問)です。当たり前ですが、普通に生活をしている人が、法廷で証言する(させられる)ことはまずありませんので、最初は、皆さん、かなり戸惑います(何を隠そう弁護士である私も、新人のころは随分緊張しました)
今日はその中でも、よく依頼者から質問されることへの回答と、個人的な所感を少々、、、
■あるある質問① 「証人尋問で嘘をついたらどうなるんですか?!」
冒頭から微妙に言葉を使い分けていますが、実は、法廷の尋問は、「証人尋問」と、「当事者尋問」に分かれます。証人尋問は、訴訟当事者(原告、被告)以外の第三者の尋問、当事者尋問は、言葉通り、訴訟当事者の尋問です。ちなみに、法人が訴訟当事者になっている場合、その代表者は当事者として扱われます。
なぜ、最初にこの違いに触れたかというと、当事者尋問と証人尋問は、法律上は、結構取り扱いが違うからです。
まず、偽証をした場合、証人は、偽証罪に問われます。法定刑は3月以上10年以下の懲役で、罰金はなく、なかなかに重い罪です。
ところが、当事者が偽証をしても、偽証罪は適用されません。何が適用されるかというと「10万円以下の過料(かりょう。あやまちりょうともいう。)」です。聞きなれない言葉かと思いますが、過料とは、法律上は行政罰と呼ばれるもので、刑罰(犯罪)ではありません。
普通の感覚だと、ウソつきは等しくウソつきなのに、なんでこんなに取り扱いが違うんだ?と思うでしょう。偽証の取り扱いがここまで異なる法律上の理由は、民事訴訟法の教科書に譲るとして、私も、一個人としては、おかしいなあと思います。
ちなみに、当事者が虚偽の陳述をした後で、訴訟が終結する前に、虚偽の陳述をしたことを認めたときは、裁判所は、事情により、過料の決定を取り消すことができる、とされています(適用された事例を知りませんが、、、)。
なんだか、優しいなあ、と思いますね。
■あるある質問② 「証人or当事者が出頭しなかったらどうなるんですか?!」
これも、当事者と、証人とで、結構違います。
当事者が出頭しなかった場合や、宣誓、陳述を拒んだ場合は、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法208条)。刑事事件でよく耳にする「黙秘権」は、民事訴訟では通用しないということですね。
証人の場合は、いろいろと規定あります。まず、正当な理由なく出頭しないときは、10万円以下の過料or罰金、拘引に処される場合があります(民事訴訟法192条1項、193条)。
さらに、正当な理由なく出頭しない証人は、勾引(強制的に裁判所に連れてくること。)されます。警察が、証人の身柄を拘束して、裁判所に連れてくるわけです。なかなか怖いですね。
そんなわけで、当事者尋問と証人尋問は結構違います。裁判所も、この点明確にするため、尋問の冒頭で、証人についての取り扱いと、当事者についての取り扱いが違う旨、実は明確に述べていますので、注意して聞いてみてください。
■ 尋問についてはまだまだ、あるある質問のネタがありますが、今日はこの辺で、、、