ヒールマーク
事務所開設から2か月以上が経ちました。
事務所のエントランスだけはタイル張り風になっていますが、そこにヒールマーク(黒い靴底のすり跡)が目立つようになってきました。
もちろんまめに掃除しないといけないのですが、このヒールマークを消す作業は結構大変です。
実は、僕、4年前のちょうど今ころの時期にヒールマークと戦っていたことがあります。
06年の5月に新司法試験を受験した後、9月の最終合格発表、11月の司法修習生としての採用までの間はロースクール生でも何でもない無所属、無職の状態におかれます。
その間も不合格の場合に備えて勉強は続けるのですが、貯金を切り崩したり親の仕送りに頼れるのでなければ生活費を工面できませんので、その時期に生まれて初めてアルバイトをしてみることにしたのです。
運よく合格できていたとすれば人生で最初で最後のアルバイトになる可能性もありましたので、せっかくなら家庭教師や塾講師といったものよりも何かいい経験になりそうなものはないかと考えました。
その結果、某百貨店の清掃のアルバイト(クリーンスタッフ)をすることに決めました。
百貨店の清掃なら、開店前の早朝の作業になりますので、その後に勉強の時間を確保することもできますし、百貨店の裏側?も見られて面白いんじゃないか、クリーンスタッフのような裏方の作業をしてみたいと思ったのです。
新入りの担当業務は、①店長室の掃除、②地下と2階の間にある全階段の掃除、③各階のバックヤードにある段ボールとゴミ箱(バスタブくらいの大きさがあります)を下ろして1階の外にある処理機に入れてまた元の階に戻すといったものでした(そのすべての作業に大まかの時間が決まっていて、大急ぎで効率的に確実にこなさなければいけません)。
普通まず入ることのない店長室に入れたことやすっぴんで不機嫌そうに出社してきて自社スペースで自社製品で化粧して開店と同時に接客モードに切り替わる美容部員を見かけるなど貴重な?経験もしましたが、各階段やフロアに無数に着いているヒールマークを床に這いつくばってひとつひとつ消す作業はやはり大変でした。
着いた直後のものなら雑巾やモップでこするだけで簡単に落ちるのですが、頑固なものになると専用の洗剤を付けて金属製のヘラでこそぎ取ることが必要になります。
今もヒールマークを見るたび、冷房の入っていない時間帯に汗とほこりまみれで床に這いつくばっていたあのころを思い出します。
これをいい経験、貴重な経験などと言ってしまうことは清掃業務を生業としている方々に失礼かもしれませんが、僕にとっては忘れ得ない、いい時間でした。