建築士法の改正
平成27年6月25日より,改正建築士法が施行されました。
ここで簡単に改正の概要をご紹介します。建築士法が対象としているのは建築士・建築士事務所ですが,契約書面交付義務や権限・義務の明確化が改正の中心となっているため,紛争を未然に防ぐためにも,今後建築主になる方に興味を持って頂ければと思います。
(1) 設計監理契約は必ず書面で行うこと!
延面積が300㎡を超える建築物の設計又は工事監理について,書面による契約締結が義務付けられました。施工契約については既に規制があったところ,設計監理契約についてもその範囲が広げられたものです。
これまで,設計監理契約にあたり契約書面の交付が必須ではなかったため,設計監理者の義務の範囲が曖昧で,トラブルの原因になることも少なくありませんでした。今後は法定の記載すべき内容を含む契約書面が交わされることにより,設計者や監理者の義務の範囲が明らかとなります。設計監理者としては法定の記載すべき内容について,意味を理解しておく必要があります。
なお,核家族が居住する普通の戸建て住宅の延面積は概ね100~200㎡なので,自宅を建てる場合には書面による契約が義務付けられません。しかし,しっかりとした仕事をする事務所ならば,300㎡以下でも書面による契約をすることが多いです。これから家を建てようとお考えの方は,設計事務所選びの指標にすると良いかもしれません。
(2) 設計監理は小規模でも丸投げ禁止
延面積が300㎡を超える建築物の新築工事について,委託者が許諾しても,設計又は監理業務の一括再委託が禁止されます。これまでも階数3以上かつ延面積1,000㎡以上の共同住宅で一括再委託が禁止されていましたが,今回の改正で規制対象の範囲が拡大されました。
規制を受けるのは元請事務所だけではありません。下請事務所が下請業務を丸投げすることも禁じられますので,ご注意ください。
(3) 国土交通大臣の定める報酬の基準に準拠した契約締結の努力義務化
努力義務にとどまりますが,報酬額設定の標準値が定められます。もちろん,高度な仕事は単価が高くなりますが,その結果,基準から報酬額が大きく外れてしまう場合は,その理由を契約書に明記するのが安全でしょう。
(4) 設計業務等に関する損害賠償保険の契約締結の努力義務化
こちらも努力義務にとどまりますが,事業者が万が一の賠償義務のために保険に加入する等の必要な措置を講ずることが求められるようになりました。
(5) 建築士事務所の区分明示の徹底
建築士事務所の一級・二級・木造の区分を明示することか徹底されました。重要事項説明書や工事現場での確認済みの表示等では,確実に区分を明示しましょう。
(6) 管理建築士の責務の明確化
建築士事務所の最高技術責任者ともいうべき管理建築士の責務が明確化されました。これは管理建築士の権限が大きくなったと言えますが,裏返せば,トラブルが紛争化したときに,管理建築士が義務違反を問われる可能性が高くなることになります。いかなる義務があるかしっかり理解しておきましょう。
その他,情報開示の充実を目的とした建築士免許等提示義務,建築設備士の法定,暴力団排除規定の整備,建築士個人に対する国土交通大臣等の調査権の新設等の改正がなされました。日本建築士会連合会のページで大変有用な情報提供がされていますので,ご興味ある方はぜひご覧ください。
専門家責任
専門家責任がより進化・明確化された改正ですね。毎回,建築をテーマとした興味深い記事をありがとうございます!!
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