全国紙の朝刊の1面に記事が載るほど世間の耳目を集めた今回の日弁連会長選挙の再投票。さすがに誰もこの話題に触れないわけにはいかないと思い,内外から批判があるのは承知の上で,「中堅に片足を突っ込んだ若手」弁護士の独り言をつらつらと書き連ねたいと思う。少々堅い話になるが,どうかご容赦いただき,しばらくお付き合いいただきたい。 今回の再投票の結果についてはいろんな評価ができるのだろうが,残念ながら私自身はその結果を分析するだけの能力を持ちあわせていないので,ここで評価を述べるのは差し控えることとしたい。ただ,一つだけいえることは,結果は概ね予想どおりのものであったということである。まさか大阪で得票数が逆転するとは予想していなかったが・・・。いずれにしても,稀にみる激戦を制して当選された次期会長には,目先のことだけにとらわれることなく,未来の法曹界の展望も見据えて,会長の職務にあたっていただきたいと切に願う次第である。 ところで,今回の選挙でも大きな争点になったところであるが,若手弁護士の就職難や質の低下を理由に,司法試験合格者を減らすべきだとする声が弁護士会内でも徐々に大きくなってきているように思える。しかし,私自身は,こうした声に少なからず違和感を覚えている。就職難が叫ばれているのは何も我々の業界に限ったものではなく,他士業や一般企業もみな同じである。にもかかわらず,弁護士業界は就職難だから司法試験合格者を減らせ!などといってみても何の説得力もない。そんなことをいえば,むしろ,試験にさえ合格すれば職にあぶれることはないなどというギルド的な固定観念を捨てよ!といわれるのがオチであろう。また,「質の低下」というときの「質」とは一体何を指しているのか疑問に思うことも多い。犯罪に手を染めたり,クライアントとの関係で不適切な対応をしたりして懲戒処分を受けた弁護士はこれまでにも少なからずいたわけで,しかも,こうした懲戒処分を受けている弁護士のほとんどは,若手弁護士ではなく,経験豊富なベテラン弁護士なのである。であるならば,本当の意味での「質」の維持を求めるのであれば,司法試験合格者を減らすよりも,むしろ,弁護士に定年制を設ける方がよっぽど理に適っているであろう。 では,私自身は法曹人口の増員に賛成なのかというと,決してそういうわけでもない。司法の現場にいる一人として,今の段階で急激に法曹人口を増員すべき社会的背景が備わっているのかが正直なところよくわからないからである。つまり,私としては,法曹人口問題について明確な意見を持っていないのが現状である。そんな私が偉そうなことをいえる立場でもないのかもしれないが,ただ,少なくとも,今言われているような就職難や質の低下といった事情が果たして司法試験合格者を減らす理由となりうるのかについては,今一度立ち止まって考え直すべき必要があるのではないかと思っている。

>

> 懲戒処分を受けている弁護士のほとんどは,若手弁護士ではなく,経験豊富なベテラン弁護士なのである。

怖いですね。
ベテランだと一般的に信用してしまいますからね。

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