47歳の父、胆管がんで死亡 会社に補償は可能?-<法律のツボ>
まず労基署に労災申請を
Q.父が昨年、胆管がんで亡くなりました。まだ47歳でした。
父は4年前まで、印刷会社で「校正印刷」の仕事をしていました。
印刷会社の従業員が同様に胆管がんを発症するケースが相次いでいると聞き、父が亡くなったのも労働災害が原因ではないかと疑っています。
どうやって調べたらいいのでしょう。そして、会社に補償を求めることはできるのでしょうか。
A.最近、印刷工場で働いていた多数の労働者が胆管がんを発症して死亡していることが判明し、大きな問題となっています。
厚生労働省の調査では、印刷洗浄液に含まれていた有機溶剤の「ジクロロメタン」と「ジクロロプロパン」が原因だった可能性が高いと指摘されています。
胆管がんは50歳未満で発症するのはまれな病気ですので、47歳で亡くなったあなたのお父さんも、上記の化学物質が原因の可能性が高いと思います。
労働災害で命が奪われた場合、労働墓準監督署への労災申請を先行させ、認定が得られれば会社に損害賠償を求めるのが一般的です。あなたは会社に賠償を求めたいとのことですが、まずは労災申請しましょう。
労災と認定されるには、胆管がんが「業務上災害」であることが要件となります。
具体的には▽印刷工場で上記の化学物質が使われていたのか▽業務で上記の化学物質を吸う可能性があったのか▽他に発症の原因はないのか--などが問題となります。
このことは労基署も調査しますが、遺族側も当時の同僚や担当医師に話を聞き、結果を労基書に報告するなど、認定を受けられるよう積極的に意見を述べるべきです。できれば専門の弁護士に依頼する方がよいでしょう。
次に会社への賠償請求です。
賠償を受けるには、業務上災害であることに加え、会社が安全配慮義務を怠ったことが要件となります。
上記の化学物質のうちジクロロメタンは有機溶剤中毒予防規則の対象物質として規制されていますので、会社には工場に排気装置を設置し、労働者にマスクを使用させる義務があります。
会社がこれらの義務に違反していたのであれば、賠償を受けることは十分に可能です。
なお、会社に労災上乗せ補償制度がある場合も多いので、労災認定を受けた場合は確認すべきです。
〈回答・谷真介弁護士(大阪弁護士会所属)〉
2013年8月24日 毎日新聞大阪版朝刊掲載
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