相続登記について
相続を原因として不動産の登記名義を変更する、これは一般的によく行われていることです。権利に関する登記を申請する場合には登記原因証明情報の提供が必要で(不動産登記法61条、不動産登記令7条1項5号ロ本文)、相続による権利の移転の場合には相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(不動産登記令別表の22)つまり、戸籍謄本等が必要になります。
かかる情報を提供させる趣旨は、①被相続人の死亡の事実の確認、②相続の登記の申請人が被相続人の相続人であることの確認、③他に相続人がいないことの確認、のためであるとされています。 戸籍が整備されている日本においては①~③の事実を簡単に証明できるのが通常ですが、ごくまれに戸籍が古すぎる、廃棄した、焼失した、関係人の中に日本国籍でない者がいるなどの事情により戸籍謄本や除籍謄本がそろわないことがあります。
このような場合、③の事実が戸籍によっては証明できないことになります。このような場合、実務上は、廃棄処分により除籍謄本を添付できない、といった市町村長等の証明書の他、他の相続人全員から自分たち以外に相続人がいない旨の上申書・証明書(※印鑑証明付)を添付することで代替できるとされています(昭和44年3月3日付民事甲第373号 民事局長回答)。 しかし、この他の相続人全員からの上申書・証明書を印鑑証明付で取得するというのは容易なことではありません。
しかも、縁戚関係上他に相続人がいないことを証明しなければならないので、「他の相続人全員」の中には民法上は相続人ではないとされる相続放棄をした人も含まれてしまうのです…。相続放棄をする方の中には相続に関わり合いたくないからこそ相続放棄をしたという方もいらっしゃいますので、相続登記に協力してほしい、などといっても「そんなことは自分の知ったことではない!」とへそをまげられてしまうことだって十分ありえるのです。
実務上「他の相続人全員」の上申書・証明書が取得できなかった場合にこのようにすれば代替できる、ということは確立しておらず、どうしても登記をしたいということであればあとは登記官の個別判断です。
一例としては、相続人の一部に特定の相続人から他に相続人がいないことの上申書・証明書が取得できなかった理由について説明をした上申書を作成し、印鑑証明を添付することなどが考えられます。
私が関与したとある事案では、被相続人の前妻との間の子から他に相続人がいないことの上申書・証明書がどうしても取得できなかったところ、相続人の方の一人に、何年も前に離婚してから親戚づきあいがないので協力してくれないのもやむを得ないといったような趣旨のことを上申してもらいましたら、無事、登記を受理してもらうことができました。
登記の移転が必要になる事案では、本当に登記が実現できるのかというところを検討することが本当に大事であると思います。司法書士の先生と相談をしながら慎重に進めていくことの重要性を感じています。
戸籍・除籍謄本
戸籍・除籍謄本がそろわないことはしばしばありますよね。
保存期間が80年から150年に延びて、廃棄済みの問題は減ったのでしょうか?
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