弁護士会から
広報誌
オピニオンスライス
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オリンパス株式会社元社員
濱田正晴さん
HAMADA, Masaharu
内部通報をきっかけとして不当な取り扱いを受け、訴訟も起こして会社と闘い続けた濱田さん。今は裁判の過程などを積極的に情報発信し、国民や国会議員らに働きかける活動をされています。2020年6月の公益通報者保護法の初改正にも重要な影響を与えました。オリンパスとの闘いを乗り越えた経緯や想い、企業における内部通報制度の取組みへの提言、公益通報者保護法に関する今後の展望などについてお伺いしました。
内部通報や会社からの
報復の経緯・想い
濱田さんには、2024年2月に大阪弁護士会が開催した「おおさか人権フェスタ」においても、「内部通報制度を斬る」と題してご講演いただきました。この講演でもお話しいただきましたが、まず内部通報に至った経緯や会社の対応などを教えてください。
私の上司が、極めて高度な技術の塊である非破壊検査システムの購入を決めて下さった特殊鋼関係の顧客企業の、そのシステム設置に関わっていた技術担当者を、取り引きの真っ最中であったにも関わらず、オリンパスに引き抜き、2006年12月にその担当者がオリンパスに入社しました。上司はその後も立て続けに技術者の引き抜きを企てました。私は、その顧客企業の機密情報が、オリンパスを通じてその技術者からライバル特殊鋼会社や鉄鋼会社等に漏えいし、不正競争防止法違反が起こり得るかも知れないとの危惧をいだきました。上司にこの危惧や問題性を直接指摘しても聞き入れられなかったので、2007年6月、社内の内部通報窓口に上司の行為を内部通報しました。そうすると、コンプライアンス室長は私に無断で、私への回答メールの宛先に通報対象者である上司を含めてしまい、私が通報者であることを漏らしたのです。のちにわかったのですが、コンプライアンス室長は、通報後、私への回答メール送信前に、既に守秘義務に反してその上司に私の情報を無断漏えいしていました。
内部通報から約4か月後の2007年10月に、私は営業チームリーダーの役職を外され、急遽新設された、部下なしの、チームにもグループにも属さない孤立的な部長付ポストに異動となりました。会社として見切りをつけていた新規事業について、孤立的にリサーチさせる、また先任者が煩雑な状態で放置したそれに関する資料整理も伴っての、「新規事業創成探索活動」という、一見意味があるように見えるけれど、実際は会社にとって無意味な作業を強いる報復人事でした。人事評価の点数も、116点からどんどん下げられ、ついには44.4点という不吉な数字にまで下げられてしまいました。
それはひどいですね。訴訟での争いについても教えてください。
2008年2月に配転命令無効確認等を求めて訴訟提起しました。2010年1月の一審判決は敗訴でしたが、2011年8月の二審判決は逆転勝訴となり、2012年6月に最高裁で勝訴判決が確定しました。ところが、オリンパスはそれでもなお制裁的な人事を続けたため、再度の訴訟提起をせざるを得ませんでした。ようやく2016年2月に、私の勝訴的和解で決着しましたが、法廷での闘争は丸8年に及びました。
東京弁護士会に人権救済の申し立てもされたようですが。
あまりにも人権侵害行為が激しかったものですから、最初に依頼した東京弁護士会所属の先生から、このままでは体を壊す可能性が高いと心配され、人権救済の申し立てをアドバイスされました。読売新聞の一面トップに実名で「人権救済申し立てへ」との見出しで取り上げてもらい、訴訟代理人弁護士名も明記され、他紙の新聞記者が私と直接コンタクトできるような対応もしました。その結果、新聞社のみならずテレビ局も含め、多数の追随報道に繋がり、社会全体への凄まじい影響になりました。実名顔出しでのマスコミ報道の力を強く実感し、報道して下さった全ての記者の皆様に今でも感謝しています。会社組織という狭く暗い小屋の中で、組織集団にボコボコにされ続けていたときに、マスコミの力でやっと外の光が差し込んだと感じました。
2度目の裁判の勝訴的和解後、会社での濱田さんの業務はどのようになりましたか。
元職へは復帰しませんでした。私は、5年間のニューヨーク赴任経験があり、2001年度にはオリンパスアメリカのデジタルカメラなどの映像機器部門で、日本人初の北米トップセールスを記録してアワードを受賞しました。この実績や世界各国への頻繁な出張など世界舞台でのビジネス遂行を通じて、高いレベルのグローバルビジネス実践能力を身につけました。和解後、オリンパス人生最後の5年間は、人事本部にて、グローバル教育のリーダーとして、海外赴任する社員への異文化理解研修と英語実践力強化研修の主査を任され、他企業管理職に外部講演も行うなど、充実した満足のゆく業務で締めくくることができました。
裁判や人権救済申し立てなどを通じて、会社は変わったのでしょうか。
第一次訴訟係属中の2012年1月に、東京弁護士会は会社に対し、内部通報事実の上司への無断漏えいや、配置転換、達成できない業務目標の設定、部外者との接触禁止等を人権侵害行為と認定し、処置として最も重い警告を発しました。更に、私の公益通報者保護法改正実現に至るまでの尽力が東京弁護士会に評価されて2021年に人権賞を受賞したこともあり、会社は内部通報者の人権擁護の重要性や社員への人権侵害行為の卑劣さがやっとわかったと思います。
当時の想いについてもう少しお伺いします。内部通報後の報復人事、1回目の裁判勝訴確定後でも継続的な制裁と、そこまで酷いことをされながら、会社に残られたのはなぜなのでしょうか。
第一に、愛社精神です。第二に、私は絶対悪いことはしていない、むしろ良いことをしている、その私が何で辞めなきゃいけないんだ、辞めるべきは内部通報への報復としての違法配転命令や人権侵害など理不尽な行為を繰り返した者たちだ、という憤りです。
「愛社精神」はどのような点で感じていたのでしょうか。
私は元々、カメラの開発部門にいました。オリンパスは独創的な発想でユーザーがあっと驚くようなカメラをつくり続けてきていました。物づくりには真剣味以上の真剣味があって、周りの先輩も、かなり厳しいことを言われながらも、強いやりがいをもってカメラの開発・設計・生産立ち上げを、一生懸命やっていました。愛社精神の原点はオリンパスのカメラに魅了されていたからでした。オリンパスは、カメラと並行して、内視鏡事業、いわばガンとの闘いという難しい分野にも取り組んでいました。心を豊かにするカメラと、人をガンから守る内視鏡、心も体も一緒になっての健康を目指す企業であり、そのバランスが非常に魅力的でした。オリンパスのファンであると同時に、オリンパスの社員であるという誇り、これが途絶えることはありませんでしたし、今も同じ、いやそれ以上です。オリンパスOBとなり、私はオリンパスが、極めて高い倫理観を持って事業推進し続けることを期待し、見続けていきます。
濱田さんのキャリアがあれば、辞めて別の会社に行くという選択肢もあった中で、それでも残り続けたのはどんなところがポイントだったんですか。
私の中ではオリンパス以外に魅力のある会社はありませんでした。昔からグローバル事業展開を重視する熱い想いや、内視鏡というオリンパスならではの独創的技術にて常に世界で圧倒的シェアを誇っている状況を見ても、他にはどこにもない魅力のある会社です。私との裁判闘争あたりから、なにかと本業とは異なる話題に尽きない会社ですが、私との法廷闘争の前までは内部告発や不祥事とは無縁の、のほほんとしたあったかい雰囲気の社風の会社だなと思っていました。だから私は会社を信用して内部通報したのです。
あとは、意地ですね。好きで入った会社であり、悪いこともしてないのに私が辞める理由が見つからないし、左遷されて干される理由も見つからない。
内部通報後、裁判をやる前もやり始めてからもイライラの連続でした。どんなに同僚から無視されようと、上司から理不尽なことばを投げかけられようと、人事部管理職から幾度も呼び出しがこようと、それらを何事もなかったようにうまくかわしていく、そしてサラリーマンは雇われている立場であることには間違いないのだからと、悔しさを噛みしめて、ただひたすら仕事のない会社に行く。それができなければ負けだと自分に言い聞かせ続けました。会社の中では何もできないので。
一方で、法廷闘争では、裁判資料の作成、立証など、正当な手法で会社に対して牙をむきました。これも、愛社精神が極めて強かったからできたのかもしれませんね。
濱田さんにとって、愛社精神と、何で俺が辞めなきゃいけないんだという反骨精神が要だったようですが、誰にとっても内部通報は勇気がいることです。通報者として、どんな心持ちで通報すればよいか、通報者向けにメッセージがあればお伺いしたいです。
一旦内部通報すると決めて実行したのであれば、何があっても受け止めるしかないです。何も起きないかもしれないし、何か起きるかもしれない。それも全部受け止める覚悟で通報する。その根底としては、揺るがない信念をもつこと、正当な内部通報をしたことは、会社のためになる正しい行動だと信じることです。何が起きても受けて立つし、負けないということですね。そもそも、会社からは、「些細なことでも内部通報するように」などと通報行為が求められているのに、通報者が報復を覚悟して通報しなければならない背景には、配転命令に関する企業の圧倒的裁量権や人事評価裁量権を認めている判例を度外視する公益通報者保護法の重大な瑕疵があると思います。内部通報をした後、会社内で理不尽と感じることがあったら、従業員が勤務しながら自分の所属する組織と法廷闘争することが前提である法律って、普通に変だと思います。その苛烈なリアリティーを、著書「オリンパスの闇と闘い続けて」に書きました。
内部通報制度に
本気で取り組む
企業は内部通報制度をどのように運用すべきか、という点についてもお伺いしたいと思います。内部通報制度に関するアンケートを取ると、通報してももみ消されるのではないか、通報するとバレるのではないかという不安の声が多く上がってきます。内部通報をしてもらいやすくするため、会社はどういうことをすればよいとお考えですか。
代表取締役が1か月に1回ぐらい自分の顔を出して、従業員に対してオンラインでもよいので、メッセージを発信することが大切です。これはどこの会社も一緒です。代表取締役が顔を出して「内部通報者は絶対保護する、オリンパス内部通報訴訟に代表されるような裁判闘争にまでは、絶対に至らせない」などと具体的な事例を交えて話すべきだと思います。コンプライアンス担当の課長から本部長くらいの管理職メッセージでは緩いのです。難しい話は要りません。経営トップが、法令順守に関してのみならず、企業倫理を含むコンプライアンス順守に関しても、ちょっとしたことでもよいから通報して欲しいと、顔を出して発信する。従業員としては、これを見ると信用度が増すと思います。
経営トップが従業員の前で内部告発者に対する感謝を述べたというケースもあったようですが。
「内部通報」ではなく、「内部告発」に至ったということは、「内部通報」ができなかったという残念な実態を強く噛みしめないといけない*1。この点への「反省」こそ、述べるべきことだったと思います。
内部通報制度に関わる人材についてはいかがでしょうか。
私は、企業における内部通報制度構築の本気度を知るためのリサーチの一環で、いわゆる転職サイトや企業の求人情報を見ていますが、私の知る範囲では「内部通報制度に関する専門人材」がストライクゾーンに入るような募集をかけている企業はゼロです。あくまでも、法務出身者や法務知識のある人という、一般論での募集に過ぎません。人材については、企業側の本気度がまだまだといったところだと思います。
私が関与している会社でも、担当者が少なくて、通常業務もありながら通報対応をするということで、大変そうな会社があります。専門人材みたいな形で、採用活動も含めて対応している会社は正直ないだろうと思います。
採用がないということは、本気度がないということだと思います。通報件数を増やし、通報後の対応の質も上げるために、公益通報者保護法に沿った内部公益通報制度を構築するための人材募集をするべきです*2。その前に、公益通報者保護法が難解過ぎて理解できない経営者や担当者が多いのが現況ですから、まずは公益通報者保護法を踏まえた内部公益通報制度構築の基礎研修を受講する必要があると思います。この際、多くの企業でやりがちなeラーニングのような研修ではなく、私が語っているような通報経験者の実体験に基づく、「公益通報」の法的定義などにも踏み込んだ研修の受講でないと意味がないと考えています。
日本の会社は中小企業が多く、公益通報者保護法でも、中小企業では内部公益通報対応体制整備は努力義務になっています。中小企業における内部通報制度について、ご意見はございますか。
どんな大きさの会社でも、やるべきことはやらなければならない、と私は思っています。どんなに大変でも、です。ですから、この法律は、会社規模にかかわらず会社に体制整備義務を課す法律に変わる必要があると考えています。
その前提として、国は、消費者庁だけでなく、本法が労働法と密接に関係するため厚生労働省も巻き込んで的確な制度構築や運用のアドバイスを提供、特に中小企業には、無料研修を提供する制度構築をしなければならないと思います。
ことオリンパスについていえば、どういった取組みをするのがよいと思いますか。
私を、内部通報制度担当の社外取締役に選任すればいいんです(笑)。大企業においての、改正された公益通報者保護法に従った実効力ある真の内部通報制度、つまり内部公益通報制度の構築と運営は、専任の取締役が存在したとしても不十分なほど、膨大な仕事量になるはずです。
それいいですね(笑)。
でも、私はオリンパスOBだし、好むと好まざるとに関わらず、公益通報、内部通報のジャンルでは社会的にも有名な存在になっており、何よりオリンパスに対しての訴訟で最高裁勝訴が確定しています。なので、そういったことは現実的でないかも知れません。とはいえ、オリンパス自身が過去の私への人権侵害行為の真の反省を表明するためにも、また、従業員に実効性ある教育をするためにも、社外取締役ではないとしても、私をコンプライアンスの研修講師に抜擢すれば良いと思います。そうすることによって、会社として、経営者はもとより従業員全てが守るべき、企業倫理と法令の両方の順守、通報者の人権擁護に関し、二度と過ちを犯さない会社に変われると思います。
※1 「内部通報」とは、企業内で起きている不正行為などを社内や企業が定めた相談窓口に相談することをいい、「内部告発」とは、監督官庁やマスコミなどの外部へ通報することをいいます。
※2 「内部通報」のうち、公益通報者保護法3条1号・6条1号に定める公益通報(労働者等による事業者内部への公益通報)を「内部公益通報」といいます。常時使用労働者数300人超の事業者は、内部公益通報に適切に対応するために必要な体制を整備することが義務付けられています(同法11条2項)。
消費者庁・検討会への期待
消費者庁は、2024年2月以降、内部通報制度に関し、就労者向けアンケートや企業向けアンケートを公表すると共に、「不正の早期発見・是正に向けた経営トップに対する提言」を公表しました。内部通報制度をより実効的なものにするために、いくつか提言がなされていますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
アンケートは表面的な回答にとどまり、内部通報する側の心理や、窓口担当者の真の心理に基づいた本質の深掘りが欠落していると感じています。そもそも、「内部通報」と「内部公益通報」の違いさえも理解できていない会社が圧倒的だと思いますので、組織内には様々な相談案件が混在する中で、それをどのように改正された公益通報者保護法にマッチさせて行くのか、内部公益通報と相談通報を区別するのか、現場に赴き、窓口担当者に直接ヒアリングをすることが必要です。
また、内部通報制度を導入したと回答した2448社のうち、年間受付件数が5件以下又は把握していないと回答した企業が65%あります。
「経営トップへの提言」は企業が公表した不祥事に関する調査報告書を分析したものですが、その内容を、中小企業を含めて、どのように実効力に繋げるかが課題なのです。
2024年5月からは公益通報者保護制度検討会も始まり、議論が進められていますが、この点についてはいかがですか。
検討会に関して意見したいところは色々ありますが、まずは、委員選考根拠が不透明であり、少なくとも、経団連出身者が委員に入っているにもかかわらず、内部通報当事者が委員に入っていないことが、根本的な問題だと思います。また、最近の公益通報裁判関係の報道をしているマスコミ関係者等も委員に入っていません。このような人選は、通報現場のリアリティーを度外視している感を拭えず、本気度に疑念を抱かざるを得ません。もし、通報者情報を守秘しなくてはならないとの言い訳があるのならば、少なくとも、8年間も内部通報がきっかけで訴訟や人権救済申し立てを余儀なくされて苦しんだ実体験者の私のところに聞きにきてくだされば、惜しみない協力をするのですが、聞きにこられる気配もありません。実体験者の声を度外視するような委員会に終始すると、委員会が終わってからまとめた内容も含め、国民の不信感や、内部通報制度に対する無関心の助長に繋がると思います。通報の現場を置き去りにして、上辺だけの調査、評論、あるべき一般論ばかりになると、本質を見失うことになります。なにもやらないよりは委員会はやったほうがよいとの考えはもちろんありますが、消費者庁には、通報の現場感覚を磨くあらゆる手段を考え、実行してもらいたいと思います。
検討会ではどのような議論がされることを期待されますか。
人選について強く意見したい理由は、内部通報を行うと、通報者とそれを受ける窓口担当社員に実際どのような戸惑いや苦悩があるのか、被通報者となる企業側の対応の難しさや職場環境への悪影響などのリアリティーも見えてこず、検討課題の形成さえもできないからです。改正法を、企業等の内部通報の現場でごく自然に実効力をもって活用できる、真の生きた法律に変革させるためには、「通報者が民事訴訟に訴えなければ権利回復の糸口さえも掴めない状況が継続している実情」にスポットを当てた議論が必要だと思います。第1回検討会で、通報者側が民事訴訟をせざるを得ないという問題に言及されていた委員もいましたが、この労働裁判の過酷さに踏み込む議論がなされることを期待します。
公益通報者保護法の改正に関してはいかがでしょうか。
2022年施行の改正法では、私のオリンパス内部通報訴訟事件などの実例・判例を受け、通報者情報を無断漏洩した窓口担当者に刑事罰が、企業に内部公益通報対応体制整備義務が課されるなど、法律が進歩しました。施行してから2年近くが経過して検討会が発足し、一歩ずつではありますが、企業経営者等が、公益通報者保護法に対する意識度を増さねばならない状況となったことは大変意義のあることだと思います。
委員の人選のあり方、進め方などに対して、苦言は申し上げましたが、これらの苦言を、活きた検討会の結果を生む糧と考えていただき、この検討会が改正法施行3年目の見直し検討に対して有意義なインパクトを与えることを切に期待したいです。
内部通報に関わる弁護士へ
顧問弁護士が社外窓口を務めるケースについてはどのように思いますか。
顧問弁護士は、会社の利益のために活動するのが基本ですから、顧問弁護士が内部通報窓口担当者となるのは、利益相反ともなりえ、良くないと思います。また、顧問弁護士でない独立した弁護士でも会社側に寄り過ぎると、内部通報がしにくくなると思います。企業の内部通報窓口を担当する弁護士としては、どうやったら内部通報をしやすくなるかを、会社と一緒に検討してもらいたいと思います。
また、顧問弁護士か否かを問わず、改正公益通報者保護法では、内部公益通報対応業務従事者が通報者情報守秘義務違反をすると刑事罰の対象となりうることが、大きな変更ポイントとなっています。内部通報窓口を担当される弁護士の方々は、どのようにして通報者情報を秘匿して調査から回答、そして是正へと駒を進めていくのか、事前に確たる手法を整えておく必要があると思います。
大阪弁護士会では、公益通報者サポートセンターという、公益通報をしたい人向けの電話相談窓口を運営しています。内部通報に関わる弁護士に期待する役割や気を付けて欲しい点などはございますか。
まずは弁護士会などの公益通報関連の委員会に所属して研鑽いただくことが重要かと思います。
また、私が行った弁護士会での講演のときに、外部通報窓口を担当されている弁護士の方がおっしゃった「薄氷を踏む思いだ」という言葉が印象に残っています。内部通報には、人生の基盤である「労働」という収入の源が断ち切られるかもしれないという怖さがあります。同僚や仲間を失ったり、通報者とその家族の暮らしに取り返しのつかないダメージを与える可能性を秘めています。人の人権と命に関わる問題なのです。だからこそ、弁護士の皆さんには、本当に内部公益通報に値するのか、この法律のこの条文や行為に抵触するから、こういう手順でやると保護対象になる、但し、企業側には配転命令権など広い裁量権があるのでリスクはある、ということなどを確実にアドバイスしていただきたいと思います。
公益通報にかかわる弁護士として、注意したいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
2024年(令和6年)2月10日(土)インタビュアー:林 尚美
山本美愛
横瀬大輝