追突事故 被害者から高額請求 (2015年5月30日掲載)

Q. 交通事故の被害者から高額の賠償を請求されて困っています。追突事故を起こし、前方の車に乗っていた女性の首に軽い打撲を負わせてしまいました。ところが、その女性が治療を受けた病院で階段から転落し、足を骨折する大けがをしたのです。女性は翌月に結婚式を控えていたそうで、「ハワイの挙式がキャンセルになった。あなたの交通事故のせいだ」と責められ、キャンセル料を請求されています。これも私が支払わないといけないのですか。

■直接要因の被害賠償のみ 不当支払必要なし

A. たとえ被害者の請求であっても、不当な金額を支払う必要はありません、交通事故の加害者は、交通事故によって生じた損害のうち、通常生じる損害(通常損害)について賠償すれば足ります。特別な事情により生じた障害(特別障害)については、加害者が予見できた例外的な場合にのみ賠償すれば足ります。
 今回の事故によって被害者が直接受けたけがは、首の軽い打撲だけです。足の骨折がなければ、ハワイで挙式は可能だったと考えられます。
 たしかに、事故がなければ被害者は病院に行くこともなければ、病院の階段から転落して足を骨折することもなかったでしょう。その意味では、挙式のキャンセル料も事故により生じた損害と言えます。しかし、首の軽い打撲というけがによって病院の階段から転落するということは、通常生じるような事情ではなく、足の骨折による損害は特別の事情により生じた損害であると言えます。 そうであれば、足の骨折に起因するキャンセル料も、同様に特別の事情により生じた損害と言えますが、加害者は通常、このような事情を予見することはできないでしょう。
 したがって、今回の相談者の方は、キャンセル料の支払いに応じる必要はないと考えます。
 ちなみに、交通事故により被害者が入院し、6日後に控えていた海外挙式がキャンセルとなったという事例では、入院によって結婚式を延期せざるを得なかったので、挙式のキャンセル料は交通事故によって通常生じる損害という判断がされた裁判例があります。
 この事例は、キャンセルの直接的な原因となったけがが交通事故によって発生している点で、本件とは異なります。

<回答・辻健司朗弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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