不注意で他人のDM破棄 (2015年6月13日掲載)

Q. 先日、マンションのポストに入っていた郵便物を自宅で確認していたら、誤って別の階の家族あての商業用ダイレクトメール(DM)が入っていました。後にその家のポストに入れておこうとテーブルの上にDMを置いていたところ、新聞の折り込みチラシと一緒になってしまったようで、破棄してしまいました。不注意だったのは認めますが、意図的ではありません。重要なDMではなさそうでしたが、このまま黙っていたら何らかの責任や罪に問われますか。

■不利益生じない場合 損害賠償の責任なし


A. お尋ねの件に関しては、刑事上の責任と民事上の責任に分けて考える必要があるでしょう。まず、刑事上の責任については、私用文書毀棄罪(刑法259条)、器物損壊罪(刑法260条)、信書隠匿罪(刑法263条)などの適用が一応考えられます。私用文書毀棄罪は、権利や義務に関したことが書かれている他人の文書を毀棄(棄てたり破ったり)した場合に刑罰を科するものです(5年以下の懲役)。商業用DMは、単に広告の類いが多いでしょうから、通常私用文書毀棄罪にいう権利・義務に関する文書には当たらないことが多いでしょう。
 ただ、毀棄した文書が権利や義務に関するものではない場合でも、他人の文書を毀棄した場合、器物損壊罪として処罰される場合があります(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)。また、他人の手紙を隠した場合には信書隠匿罪が適用される場合もあります(6か月以下の懲役もしくは禁錮または10万円以下の罰金)。
 しかし、お尋ねの事案の場合、相談者は意図的にDMを破棄しようとしたわけではなく、不注意で破棄したのですから、刑法上の処罰の対象とはなりません。上記各罪は、いずれも過失による場合を処罰対象としていないからです。
 では、民事上の責任についてはどうでしょうか。民法では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されています(民法709条)。
 したがって、たとえ不注意で行った行為でも、それにより他人の権利や利益を侵害した場合には、そこから生じた損害を賠償する責任が生じる場合があります。そこで、破棄したDMの内容が、これを受け取った受信者に何らかの利益を与えるものであった場合(たとえば商品券が入っていた場合)、これを捨ててしまった相談者は、場合によってはDMを受け取るはずだった人に対して利益に相当する金額を損害として賠償する責任が生じることがあります。この場合、誤って投函した配達業者と責任を分担することになるでしょう。ただ、単に広告だけが入っていたような場合には、他人の権利や利益を侵害したものとまでは言えず、また損害も発生していないので、損害賠償の責任は生じません。 

<回答・森直也弁護士(大阪弁護士会所属)>

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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