遺産すべて弟に 認知症だった母の遺言有効? (2015年12月5日掲載)

Q. 先日、母が亡くなりました。法定相続人は長女の私と、長男の弟だけですが、全ての遺産を弟に相続させると記された遺言書が見つかりました。しかし、母は当時認知症で、相続のことを十分理解して作成した遺言書とは思えません。遺言の効力を争う方法はないのでしょうか。

■「無効の訴え」で争う 医療記録から立証重要

A. ご相談のケースでは、お母様が認知症であったため遺言をする能力が遺言書の作成時に備わっておらず、遺言が無効ではないかが問題となります。そこで「遺言無効の訴え」という方法で有効か無効かを裁判所で争っていくことになります。
遺言無効の訴えによって遺言が無効と判断された場合は、相続人間の遺産分割協議によって遺産を分割することができるようになります。遺言書に基づいて建物や土地などの移転登記の手続きが既に行われてしまった場合は、登記の抹消などの請求も一緒にすることが必要です。
 裁判では、入院中や通院時のカルテ、看護記録などの医療記録から、遺言書の作成日、あるいはできるだけ近い日の病状、言動などを立証していくことが重要です。これらの記録の開示に応じる病院も多くありますが、遺族でも入手ができない場合は、弁護士に委任の上で、弁護士法に基づき回答義務がある「弁護士照会」を利用するなどの方法もあります。
 お母様の担当医師や看護師などの病院関係者の証言や、見舞客などの証言も立証に有用です。当時のお母様の状況から考えて遺言の内容を理解することができたかどうか、遺言の法的な効力などを理解できたかどうかについて意見を求めるのも良いでしょう。
 逆に、このような手段で立証ができず遺言が有効と判断された場合はどうすれば良いのか。民法は、法定相続人は相続財産に対する最低限度の取り分(遺留分)があるとしています。この遺留分を請求する権利が「遺留分減殺請求権」です。
 相談のケースでは、遺言によって財産を取得する弟に対して遺留分減殺請求権を行使しなければ、遺留分(相続分の2分の1)を取り戻すことはできません。行使期間は1年以内なので、「仮に遺言が有効と判断される場合は、遺留分減殺請求の権利を行使する」と弟に書面で通知しておくと良いでしょう。

〈回答・大西隆司弁護士(大阪弁護士会所属)〉

※記事内容は掲載当時のものであり、現在の制度や法律と異なる場合もございます。

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