大阪市の『「東日本大震災に伴う市営住宅活用実施要綱」及び「東日本大震災に伴う市営住宅付帯駐車場活用実施要綱」の一部改正について(案)』に対する意見公募に対する当会の意見書

大阪市の『「東日本大震災に伴う市営住宅活用実施要綱」及び「東日本大震災に伴う市営住宅付帯駐車場活用実施要綱」の一部改正について(案)』に対する意見公募に対する当会の意見書

2016年(平成28年)10月6日
大阪弁護士会       
会 長  山 口 健 一


 東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)による被災県からの新たな要請を受け、大阪市は、「東日本大震災に伴う市営住宅活用実施要綱」及び「東日本大震災に伴う市営住宅付帯駐車場活用実施要綱」を一部改定し、改定案について平成28年9月14日付で意見公募に付しているところである。
 当会は、従前より、東日本大震災及び福島第一原発事故からの県外避難者に対して、応急仮設住宅としての期限を一年ごとに延長するのではなく、避難者が今後の生活場所を決定することができるまでの間、持続的な住宅支援策を打ち出すべきである旨の意見を表明してきており、直近では、本年8月22日付で国及び福島県に対して、福島第一原発事故からの避難者について公営住宅無償提供の継続を求める会長声明を発出し、併せて、同月26日付で避難者に公営住宅を提供している大阪府及び府下の各市町村に対しても独自の支援策を確立するなどして避難者への公営住宅の確保施策を行うこと等の要望書を送付しているところである。
 そこで、今回の大阪市のパブリックコメント募集についても、これらの内容を踏まえて、以下のとおり意見を述べる次第である。

第1 意見の趣旨
1 東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故の被害者に対する独自の住宅支援策の必要性について
 大阪市は、被災各県からの依頼に対応するだけではなく、福島第一原発事故による被害者が避難を選択する権利を有することを尊重し、避難者に対する公営住宅の期限を付さない提供や世帯状況に応じた住み替え、優先入居枠の設定等、継続的な住宅支援制度を、大阪市独自に確立すべきである。
2 活用できる者の資格(東日本大震災に伴う市営住宅活用実施要綱第3条及び東日本大震災に伴う市営住宅付帯駐車場活用実施要綱第3条1号(旧4条第1号))について
 活用できる者の資格は、「東日本大震災により住宅が滅失し、もしくは住宅が著しく損壊したために当該住宅に引き続き居住することができない、もしくは避難指示の発出等により緊急に住宅からの避難を余儀なくされている者、又は東北地方太平洋沖地震等発生時に東京電力福島第一原子力発電所の周辺に居住し、当該原子力発電所の事故に伴い大阪市内に自主的な避難を希望する者」とすべきである。
3 使用許可期間(東日本大震災に伴う市営住宅活用実施要綱第10条及び東日本大震災に伴う市営住宅付帯駐車場活用実施要綱第4条(旧第5条))について
 使用許可の期間については期限をもうけず、避難者の希望に応じて継続的な使用を認めるべきである。

第2 意見の理由
 1 福島県は、2015年(平成27年)6月15日、避難区域外の避難者については、福島第一原発事故による避難者に対する災害救助法に基づく住宅支援を2017年(平成29年)3月に打ち切るとした。その際、福島県は、従前の住宅支援策に代え、新たな支援策として民間賃貸住宅家賃への支援(避難者に対する帰還・生活再建に向けた総合的な支援策)を打ち出した。このような方針変更は、福島県と国が協議をし、国の同意のもと行ったものである。
 2 しかしながら、この支援策の対象は狭く、家賃補助率も低く、期間もわずか2年間でしかないという不十分な内容であるため、大阪府内の避難者は今後の生活への不安を訴え、当地における避難の継続を希望している。
2016年(平成28年)6月20日に発表された福島県避難者意向調査結果でも、避難者全体の55.3%、区域外避難者においては64.9%もの避難者が応急仮設住宅に入居されている実態がうかがわれる。また、現在の生活での不安や困っていることとして「住まいのこと」を回答された方は、全体で43.2%、区域外避難者においては51.1%にのぼる。さらに、県外避難者の今後の生活予定では、現在の避難先市区町村(福島県外)に定住したいが22.3%と最も多く、次いで現時点では決まっていないが20.6%とされ、被災当時の居住地に戻りたいと回答された避難者のうち、戻る条件として、45.4%の方が「地域の除染が終了する」、39.2%の方が「放射線の影響の不安が少なくなる」を挙げており、合計で84.6%もの方が今なお放射線による影響を懸念している実態が読み取れる。この状況は、福島県外から避難をしてきた方々も同様であると考えられる。
 3 放射性物質による汚染が長く継続するという原子力災害の特性に鑑みれば、放射性物質の影響から長期にわたって避難する選択は極めて合理的であり、その避難する権利の具体的支援策として、住宅確保の支援策は避難者の生活の最も重要な基盤を保障するものとして、憲法はもとより「原発事故子ども・被災者支援法」によって十分な対応がなされなければならない。上記の福島県避難者意向調査結果でも、避難指示区域内外を問わず、今後も、放射性物質による影響が無視できる程度になるまで避難を継続することを希望する避難者が多数存在することが明らかであり、これらの避難者の避難先住宅が奪われることは、人権侵害になりかねない。
 4 一方で、避難者が現在避難している大阪府内の各自治体においても、住民である避難者の生活を支援することは、公営住宅法の枠内で、住宅管理主体としての独自の政策判断をもって対応をすることは十分に可能である。大阪市営住宅条例第4条第2項1号において、災害による住宅の滅失の場合は公募によらないで市営住宅に入居させることができると規定されおり、放射線による影響を懸念して避難を継続する者は、災害による住宅の滅失に準ずるものとして公募によらない入居は可能と考える。
併せて、福島県からも、各都道府県等に対し、平成27年10月29日付福島県避難地域復興局長名義で「応急仮設住宅の供与終了に伴う住宅確保等について(依頼)」において、各種公営住宅の確保と必要に応じた国への要望が提案されているところである。
 5 したがって、まず、大阪市は、国の施策、あるいは福島県等被災県からの依頼をまたず、福島第一原発事故を理由として大阪市に避難しているすべての者が、避難を選択する権利を有することを尊重し、避難者に対する住宅確保に関して、公営住宅の期限を付さない提供や世帯状況に応じた住み替え、優先入居枠の設定等、継続的な独自の住宅支援施策を確立すべきである(意見の趣旨第1)。
 6 また、今回の一部改正案では、被災県からの依頼に対応するかたちで、活用できる者を極めて狭い範囲に限定している。特に、対象者から、避難指示等対象区域外からの避難者を除外していることは、上記の福島県避難者意向調査結果に照らしても、非常に問題が大きい。区域外からの避難者の多数が、今後も、避難を継続する希望を有していることは明らかである。避難者の多くは、避難のために仕事を退職せざるを得なかったり、あるいは、母子避難を余儀なくされるなど、経済的に大きな負担を負っている。このような状況のなかで区域外からの避難者に対する無償住宅支援を終了させた場合には、避難者が行き場を失い、住まいを失うことで、就学・就労の基盤も奪うことに繫がり、事実上、帰還を強要することに他ならない。これは望まない被ばくを避けるために避難をする権利を侵害するものといえ、極めて問題のある施策と言わざるを得ない。
 また、避難先における生活状況の変化があるにもかかわらず、避難住宅を変わることができないという施策の問題点についても、既に、多く指摘されているところである。
 したがって、無償住宅支援を受ける者の資格については、従前と同様に、「東北地方太平洋沖地震等発生時に東京電力福島第一原子力発電所の周辺に居住し、当該原子力発電所の事故に伴い大阪市内に自主的な避難を希望する者」を含めるべきであり、また、「既に福島県外の都道府県住宅もしくは市町村営住宅又は雇用促進住宅等公的賃貸住宅に避難している者でないこと」という条件はなくすべきである(意見の趣旨第2)。
 7 加えて、住宅支援期間を1年間として、翌年に更新されるか否かが分からないという施策の問題点は、既に多方面で指摘されているところである。住居は、生活すべての基盤でありこの安定なくして安定した生活はない。そして、前記のとおりの原子力災害の特性からすれば、住宅確保の期間を1年程度として、かつ期間の更新について保障がない状態は避難者の生活を不安定にし、その不安を大きくするものと言わざるを得ない。避難者が、その生活基盤を確保して安心した生活を送るためには、継続した住宅の提供が不可欠である。したがって、避難元が避難指示対象区域内であるか外であるかを問わず、避難者が、今後の生活を自ら選択できるようになるまでの間、期限を定めず継続的に無償住宅支援を継続すべきである(意見の趣旨第3)。

以 上

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