特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)に反対し、撤回を求める会長声明
・特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)に反対し、撤回を求める会長声明
今般、特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)(以下「基本方針案」という。)が公表され、意見募集がなされている。
当会は、カジノ解禁について、暴力団対策上の問題、マネー・ローンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響等様々な問題があることに加え、我が国では近代法制定以前から厳禁され刑罰の対象とされてきた賭博行為を特定の場所・特定の者に限定して非犯罪化するものであり、また史上初めて民間賭博場を公認するという我が国の刑事司法政策に極めて重大な変更をもたらすものであること等を理由に、2014年(平成26年)6月及び2016年(平成28年)12月に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(以下「カジノ解禁推進法」という。)案に反対する会長声明を、2018年(平成30年)5月に特定複合観光施設区域整備法(以下「カジノ解禁実施法」という。)案に反対する会長声明を発出し、一貫してカジノ解禁に反対してきた。
ところが、今回の基本方針案のカジノ解禁の有害影響排除についての項目を見ても、IR事業者に対して、暴力団等のカジノ施設への入場禁止、そのための監視及び警備、マネー・ローンダリング防止のための措置などの対策について「確実に実施していくことが必要である」、カジノ施設利用に関し「依存防止のために万全の対策を講ずることが求められる」など抽象的な記載しかなく、都道府県に対しても同様に「周辺地域の状況に鑑み、規制を適切に講ずることが求められる」、「施策を講ずることが求められる」など抽象的な記載にとどまり、具体的な対策はなにも記載されていない。
上記のように当会がカジノ解禁による弊害等を列挙して反対の会長声明を発出するのみならず、パブリックコメントその他でも弊害を理由に多くの反対意見が出され、世論調査(昨年度実施された報道局による調査)でも反対が多数を占めており、国民の理解や納得が得られた状況とは到底いえない。にもかかわらず、基本方針案では、弊害に対応した対策にはなんら進展がないと言わざるを得ず、カジノ解禁推進法やカジノ解禁実施法と同様に、カジノ解禁に伴う上記弊害の除去が全く期待できない。
さらに今回の基本方針案は、それが公表される前から、都道府県等において、当該特定複合観光施設区域の整備の実施に関する方針(以下「実施方針」という。)の作成や民間事業者の公募及び選定のための手続を進めることが想定されており、国の基本方針が所定の手続を経て定められ、その基本方針に即して都道府県等が実施方針を定め(カジノ解禁実施法6条)、その実施方針に即して民間事業者を公募により選定する(同法8条)という法の定めたプロセスを無視するものである。
そこで、当会は、基本方針案の撤回を求め、改めてカジノ解禁に強く反対するものである。
大阪弁護士会
会長 今川 忠