揺さぶられっ子症候群(SBS)仮説に基づく訴追をめぐる会長声明

揺さぶられっ子症候群(SBS)仮説に基づく訴追をめぐる会長声明

 大阪高裁で、「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome[SBS])」仮説(以下「SBS仮説」という。)に基づく訴追を疑問視する判決が相次いでいる。
 2019年10月25日、大阪高裁第6刑事部は、生後2か月半の孫娘を揺さぶって死亡させたとして一審で懲役5年6月の実刑判決を受けた事件当時66歳の祖母に対し、病死であった可能性を認めて逆転無罪判決を言い渡した。
 2020年1月28日、大阪高裁第3刑事部は、事件当時1歳11か月の女児の頭部に暴行を加えて死亡させたとして起訴され、1審で無罪判決を受けていた男性に対し、検察官の控訴を棄却し、1審無罪判決を支持する判決を言い渡した。
 2020年2月6日、大阪高裁第5刑事部は、生後1か月半の娘を揺さぶって脳に重い障害を負わせたとする傷害事件で、一審で懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた事件当時33歳の母親に対し、低位落下による可能性を指摘し、逆転無罪判決を言い渡した。
 SBS仮説とは、乳幼児に医学的所見(硬膜下血腫、網膜出血及び脳浮腫)が生じた場合、暴力的な揺さぶり(虐待)によるものと推測する仮説である。上記各事件においても、SBS 仮説に依拠し、最後に接した保育者が加害者として訴追された。
 しかしながら、高裁無罪判決が相次いでいることに端的に示されているとおり、SBS仮説の信頼性は大きく揺らいでいる。現に、SBS仮説の発祥地である英米はじめカナダ、スウェーデン等では、SBS仮説の科学的根拠に疑問が投げかけられ、すでに多くの雪冤事例等が報告されている。日本の医学界でも、近時SBS仮説の機械的な適用を疑問視する声が高まりつつある。
 無罪判決がなされたとはいえ、大切な子が突然、死亡したり、脳に重い障害を負い、虐待を疑われ、家族と引き離され、長期間被告人の地位に置かれた当事者の苦しみは、想像に余りある。虐待が許されないと同時に、冤罪も絶対に許されない。訴追機関は、直ちにSBS仮説そのものを検証し、今後、誤った訴追がないように取組を始めなければならない。

2020年 (令和2年) 2月25日
       大阪弁護士会      
        会長 今川  忠

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