検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

検察庁法改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明

 当会は、本年3月13日付けで、検事長の定年延長に関する閣議決定の撤回を求める会長声明を発出し、2月7日付けで定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について、国家公務員法第81条の3第1項を根拠に、その勤務を延長すること(以下「本件勤務延長」という。)の違法性を指摘して、撤回を求めたところである。
 ところで、司法権(刑罰権)の適正な実現のためには、検察権(捜査権・起訴権限)が適正妥当に行使されることが不可欠の前提となる。それ故、検察権は行政権の一部をなしているにもかかわらず、司法権の独立を確保するために、検察権の立法権及び他の行政権からの独立を担保する必要があるのであり、とりわけ、政党政治体制においてはこの必要性が強く存在するのである。
 検察庁法第14条が、法務大臣は検察事務に関して検察官を「一般に」指揮監督できることを定めつつも、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができるとしているのは、責任政治の原理からくる要請(憲法第65条、第66条第3項参照)と検察権の独立性担保の要請との調和からである。また、検察官の定年については、国家公務員法の適用を受けないものとされ、検察庁法第22条において、検察官の定年を裁量の余地なく法定化していることも、前述した2つの要請を調和し、司法権の独立の趣旨である司法権(刑罰権)の適正な実現を図るためである。
 ところが、政府は、上記会長声明発出と同日、検察庁法改正案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この改正案は、すべての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳に達した段階で、いわゆる役職定年制を適用するものである。さらに、特例として、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生じる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえ超えて、当該官職で勤務させることができるとしている(検察庁法改正法案第22条第1項ないし第3項、第5項ないし第8項、第9条第3項ないし第6項、第10条第2項)。
 しかし、このような改正案は、本件勤務延長の閣議決定に後付けで法的根拠を与えるとともに、検察庁法と国家公務員法の解釈についての恣意的変更を、法律上制度化するものと言わざるを得ない。
 そして何よりも、かかる改正案が成立することになれば、内閣が、検事総長、次長検事、検事長について、法定の定年を超えて恣意的にその役職に在任させることができるようになり、検事正を含む検事・副検事についても、法務大臣の裁量で同様の措置を執ることが可能になることから、政党政治体制であることとも相まって、司法権(刑罰権)の適正な実現の不可欠の前提条件である検察権の適正妥当な行使の実現が脅かされるおそれが強いと言わざるを得ない。
 よって、当会は、司法権の独立及び刑罰権の適正な実現のため、違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を重ねて求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に強く反対する。

2020年 (令和2年) 4月16日
       大阪弁護士会      
        会長 川下  清

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