出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明

出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明

 2021年(令和3年)2月19日、政府は出入国管理及び難民認定法改正案を国会に提出した。
同法案は、法務大臣の私的諮問機関である「収容・送還に関する専門部会」による提言に対して、当会が2020年(令和2年)8月4日に発出した声明において指摘した多くの問題点を放置している上に、罰則の創設など、入管当局の権限の強化に終始するものであり、本来、改正の目的となるべき入管収容に関する問題改善につながるものではないため、当会は同法案に強く反対し、廃案とすることを求める。
 無期限ともなり得る長期収容についての抑制や抜本的対策は講じられておらず、司法審査は及ばないままである。在留特別許可制度においても、その考慮要素において、子どもの最善の利益が明示されておらず、手続保障も不十分である。難民条約の締結国であるにもかかわらず、難民認定申請に対して認定率が極端に低いといった構造的問題には手を付けない一方で、3回以上の難民認定申請者等について送還を原則として可能とすることは、迫害を受けるおそれのある国への追放・送還を禁じる「ノン・ルフールマン原則」(難民条約33条第1項)に反する可能性をさらに高めるものである。
 収容に代わる監理措置制度は、全件収容を原則としていることから、現行の仮放免制度と同様、収容は最後の手段であるという国際基準に反している。さらには、対象者を指導・監督する義務を過料の罰則をもって民間人である監理人に負わせ、監理人を支援者かつ監督者という板挟みの利益相反状態に置くものであり、対象者を身体拘束から解放する制度としては機能しない。
 他にも、仮放免逃亡罪や退去命令拒否罪など不合理な罰則規定の創設など、幾点にもわたり、現状の問題の放置及び規制強化の傾向がみられ、到底容認できるものではない。
 かねてより、我が国の出入国管理制度に対しては、国連の各委員会から恣意的な収容の在り方や難民認定率の低さ等に関し、勧告を受けてきた。それらの問題の解決には、入管の裁量・権限を抑制し、その監視体制を構築することが必要不可欠であるにもかかわらず、本法案にはそれらの要請に応える規定は一切盛り込まれていない。
 そもそも、本法案の改正は、2019年(令和元年)6月、大村入国管理センターでナイジェリア国籍男性の餓死事件があったことを直接の契機としたものであるが、本法案提出後の本年3月6日にも、スリランカ国籍女性が名古屋出入国管理局収容施設内で死亡する事件が発生し、その原因究明や総括もなされていないままである。現在の出入国管理行政に関する改善がなされず、恣意的な運用を許す制度がこのまま温存されるならば、このような悲劇が繰り返されることが強く懸念される。
 当会としては、以上の理由により本法案に強く反対し、廃案とすることを求めるとともに、適切な司法審査の導入を含め、入管の裁量・権限を適切に抑制し、その監視体制を構築する法改正を検討するよう求める。

以上

2021年(令和3年)4月30日
       大阪弁護士会      
        会長 田中  宏

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