立川市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

立川市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明

 本年6月に東京都立川市において女性が刺殺された殺人被疑事件に関連し、週刊新潮(2021年6月17日号)は、被疑者とされる19歳の少年の顔写真、氏名、卒業文集などを掲載した。
 これは、少年の犯行について、氏名、年齢、容ぼう等によりその者が当該事件の本人と推知できるような記事又は写真の出版物への掲載(以下「推知報道」という。)を禁止した少年法61条に反する行為であり、誠に遺憾である。
 少年法は、少年が成長途中の未成熟な存在であることに鑑み、「健全育成」すなわち少年の成長発達権保障の理念を掲げている(第1条)。そして、少年による事件については、本人と推知できるような報道がなされると、少年の更生と社会復帰を阻害するおそれが大きいことから、事件の内容や重大性等に関わりなく、そのような報道を一律に禁止している(第61条)。
 上記週刊新潮の記事は、現行少年法では氏名、写真を報道することは禁止されているとしながらも、その一方で少年法の上記規定について違和感や疑念を禁じ得ないとの独自の見解を述べて、事件との関連性も報道の必要性も、到底あるとは考え難い少年被疑者のプライバシーを報道している。このような報道は、明らかに違法であって、法治国家において許されるものではない。
 なお、本年5月に成立・公布された「少年法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第47号。以下「改正法」という。)では本人推知報道の禁止が一部解除されることとなったが、そもそも、改正法は未だ施行されていない(令和4年4月1日施行)。また、たとえ改正法の施行後であったとしても、18歳・19歳のときに罪を犯した場合において公判請求された後に本人推知報道の禁止が解除されるとするものであるので、今回の週刊新潮の報道は、許容される余地はない。
 さらに、法改正にあたり、衆議院及び参議院各法務委員会において、本人推知報道の禁止が一部解除されるとしても、少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮すべき、との附帯決議がなされたが、今回の週刊新潮の報道は、この附帯決議の趣旨にも悖る。
 当会は、2017年3月14日付「名古屋市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」2018年4月24日付「滋賀県彦根市内で発生した少年事件の実名等報道に関する会長声明」などにおいて、新潮社に対して、少年法61条を遵守するよう重ねて強く要請してきた。それにもかかわらず、今回同様の事態が繰り返されたことは極めて遺憾である。
 当会は、改めて新潮社に対し、今後同様の実名報道及び写真掲載を行わないよう強く要請する。

 2021年(令和3年)6月24日
       大阪弁護士会      
         会長 田中  宏

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