最低賃金の大幅な引上げを求める会長声明
1 本年7月頃、中央最低賃金審議会は、厚生労働大臣に対し、2022年度(令和4年度)地域別最低賃金額改定の目安について答申を行う予定である。毎年、同審議会の答申に基づき、全国の地域別最低賃金審議会が地域別最低賃金の改定額を答申し、これを受けて都道府県労働局長が地域別最低賃金の改定額を決定する。昨年7月16日、中央最低賃金審議会は、全国一律で時給28円を目安に引き上げるよう答申し、これを受けて、全国各地の地方最低賃金審議会は、地域別最低賃金を決定した。大阪府でも前年度より28円引き上げられ時給992円とされ、2021年(令和3年)10月1日から適用されている。2021年度の全国加重平均では930円となっている。
2 政府が発表した本年6月7日付閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる「骨太方針2022」)では、「最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指」すとする一方、その時期について「できるだけ早期に」とするだけで具体的に明らかにせず、また、引上げ額について、「公労使三者構成の最低賃金審議会で、生計費、賃金、賃金支払力を考慮し、議論する」と抽象的な表現に留まっている。全国加重平均1000円という基準は、2010年(平成22年6月18日)付閣議決定「新成長戦略」において、2020年までに達成すべき目標として掲げられていた数値であり、そこから10年以上が経過した現在においても未だこの目標に程遠い点は看過できない。
3 また、昨今、新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ問題を始めとする国際情勢を背景に、原油や穀物等の物価が高騰し、その帰結として、わが国では、多品目に渡る生活必需品の値上がりが生じている。一般に、低所得者層であるほど消費支出に占める生活必需品の比重が高く、今後、生活必需品の値上がりが市民の生活に深刻な影響を及ぼすことが予想される。かかる状況下では、家計改善のためにも最低賃金の大幅な引上げは喫緊の課題といえる。
4 他方、物価高騰は消費者のみならず中小企業にも大きな打撃を与えている。最低賃金の引上げの環境整備のためには、社会保険料の事業者負担の免除・軽減など中小企業への支援強化が不可欠であることから、政府は、上記閣議決定で示したとおり、中小企業へのきめ細かな支援や取引適正化等にも取り組むべきことは言うまでもない。
5 以上から、当会は、中央最低賃金審議会に対し、全国加重平均1000円以上を速やかに実現できるよう、例年以上の大幅な最低賃金額の引上げを内容とする答申とすることを求めるとともに、大阪地方最低賃金審議会に対しても、中央最低賃金審議会の提示する目安に縛られず、大阪府の最低賃金を大幅に引き上げることを求める。
大阪弁護士会
会長 福 田 健 次