オンライン接見の実現を求める会長声明
現在、法制審議会の刑事法(情報通信技術関係)部会では、刑事手続における情報通信技術活用のあり方について議論が行われており、被疑者又は被告人(以下「被疑者等」という。)と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人になろうとする者(以下「弁護人等」という。)とのビデオリンク方式による接見(電子データ化された書類の授受を含む。以下「オンライン接見」という。)についても検討がなされている。
接見交通権は、憲法34条前段が保障する弁護人依頼権の中核をなす権利である。オンライン接見は、現在の情報通信技術の発展からすれば、容易に実現可能であり、憲法、刑事訴訟法の規定の趣旨からして、刑事訴訟法39条1項の接見交通権との位置づけの下に、当然に実現されるべきものである。
身体の拘束を受けている被疑者等にとって、身体拘束の当初から、弁護人等の援助を受けることは重要な権利である。特に、逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとって、今後捜査機関の取調べを受けるに当たっての助言を得るための最初の機会であって、憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが防御の準備のために不可欠である。オンライン接見は、ほとんどの事案で現在実現していない逮捕直後の接見を実現することができる点で極めて重要なものである。
また、被疑者等が遠隔地に所在する場合においては、地理的な要因によって起訴後の接見が困難になることがあり、そのため、公判前整理手続や公判手続の遅延を招く、起訴後に十分な接見ができないといった深刻な事態が生じている。こうした場合も、オンライン接見を用いて、被疑者等が継続的に弁護人の援助を受けられるようにする必要性が高い。さらに、日本語を解さない被疑者等と弁護人等の接見についても、オンライン接見の導入により、通訳人の確保や頻回の接見が容易になり、被疑者等の弁護人依頼権の保障が飛躍的に高まる。
刑事手続のIT化は、被疑者等の人権保障を拡充するという観点を踏まえて進められなければならない。近畿弁護士会連合会においても、2021年11月19日、「刑事司法における情報通信技術の利用に際して被疑者・被告人の権利保障を求める決議」を行い、オンライン接見の実現を含め、情報通信技術を活用する権利及び機会を保障することにより、被疑者等の防御権保障の拡充を求めたところでもある。
なお、オンライン接見が、被疑者等と弁護人等との接見交通である以上、その秘密性が保障されなければならないのは当然である。また、オンライン接見を実効性あるものとするためには、将来的には、弁護人がいつでも、どこからでも迅速にオンライン接見できるような環境を整えるべきである。
以上の通り、当会は、留置施設・刑事施設等に拘束されている被疑者等の弁護人依頼権を保障し、接見交通をより充実させるため、被疑者等と弁護人等とのオンライン接見を速やかに導入するよう求める。
大阪弁護士会
会長 三 木 秀 夫