意見書・声明
意見書 会長声明等

 議員立法のありかた

1998年(平成10年)1月27日
意見の趣旨
 いうまでもなく国会は憲法上唯一の立法機関とされている。従って、議員立法そのものを否定的に評価することは許されない。しかし、残念なから現実の議員立法の実情は政府立法に比べて十分な検討と審議がなされていると言えない。むしろ、政府立法によった場合、法制審議会など各種の審議会など面倒な手続を要するので、これを回避するために議員立法の手法が用いられようとしている事情すら存在する。そこで、議員立法に際して少なくともつぎの諸点を改善すべきである。

  1. (議員立法のあり方についての調査・研究と基盤等の整備の必要性)
     わが国では、議員立法は15パーセントにも満たず、また、重要法案については少なかったが、今後、議員立法が国民の信頼を確保し、健全に機能するためには、これまでわが国において議員立法が少なく、しかかも重要法案について少なかった理由について検討するとともに、アメリカなど、議員立法が中心である國の議員立法のあり方、メリット・デメリット、必要な基盤、条件などを調査・検討し、その結果を踏まえ、わが国の議員立法のあり方についての各界の議論を深め、議員立法に必要な基盤の整備、条件の充足を図るべきである。

  2. (立法補佐職員などの補強)
     
    議員立法が適切に行われるためには、わが国では未だ少ない、議員立法活動を補佐する国会職員、立法担当秘書などの大幅な増員が必要である。

  3. (立法作業の透明性)
     これまでの議員立法の場合、議員と一部の関係者が協議して法案を作成し、その経過は開示されず、国会の審議も短期間で、国民がその内容を充分に知る機会さえ無いということがあったが、今後の議員立法においては、そのようなことがあってはならない。
     法案を検討する段階から、法案の意義、内容などの情報を国民に公開し、法案の発表、各界の意見照会などを行ったうえで、審議するという透明な手続が確保されるべきである。

  4. (国民の意見を聞く重要性)
    議員立法の場合も、政府立法の場合と同様に、事前に各政党の政策審議会、調査会などにおいて学者、弁護士、実務家、消費者団体、経済団体等の関係団体などの意見を聞き、問題点を十分に検討することが必要である。

  5. (法的な検討の重要性)
    議員立法は、政府立法のように法制審議会の審議を経ないこともあって、ややもすると、法的な考え方による検討がなされないまま、議員と一部の経済界などの関係者の協議で法案化が進むおそれがあるが、議員立法の場合も、法律学者、法曹実務家の意見を充分に踏まえ、種々の法的問題を検討したうえでなければならない。

  6. (行政情報利用の制度化)
    議員が立法提案を検討するに際して、与野党を問わず、当該法律案について関係官庁の保有する情報の利用が可能になる仕組みを検討する必要がある。

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意見の理由
第1 これまでの議員立法の実情

  1. 政府立法と議員立法

    (1) 政府立法=内閣提出法案=閣議を経て内閣総理大臣名で国会(衆議院先議が多い。)に提出される。閣法と略称する。
    (2) 議員立法
    衆議院議員が衆議院に提出(発議)する。衆法と略称する。
    参議院議員が参議院に提出(発議)する。参法と略称する。
    なお、委員会提出の法案があり、この場合、委員会の委員長が法律案の提出者となる。委員会提出の法案は概ね提出委員会で各会派が一致すると思われる法案であり、成立した議員立法はこの型が多い。
    (3) 1986年〜1995年の立法状況
    (法学セミナー1996年7月号21頁)

    法律案
    衆 法 参 法 閣 法
    提出件数 291 101 1008 1400
    (21%) (7%) (72%) (100%)
    成立件数 119 15 953 1087
    (11%) (1%) (88%) (100%)
    成立率 40.9% 14.9% 94.5% 77.6%


    議員修正
    衆議院 参議院
    提出件数 224 88
    成立件数 134 26

    (4) 1947年5月〜1992年1月の法案の提案・成立状況
    (五十嵐敬喜著『議員立法』三省堂27頁)
    衆 法 参 法 閣 法
    提出件数 2507 872 7124
    成立件数 907 145 6164
    成立率 36.2% 16.6% 86.5%



  2. どのような法律が議員立法として成立したか。

    (1) 地域開発または特定地域に対する助成のための法律
    (例) 山村振興法(1965年)、関西文化学術都市建設促進法(1987年)
    ∵ 地元の選挙民や自治体からの要望が強いうえ、与野党の意見がまとまりやすい。
    (2) 特定の業界または団体の要望に応えるための「士法」と「業法」
    (例)土地家屋調査士法(1950年)、行政書士法(1951年)、調理師法(1958年)、クリーニング業法(1950年)、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律(1957年)
    (3) 提案議員の道義観や倫理観などに基づいて提案された法律
    (例)酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律(1961年)、動物の保護及び管理に関する法律(1973年)
    (4) 政府から提案しにくい法律
    (例)新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(1978年)、無限連鎖講の防止に関する法律(1978年)、いわゆるサラ金規制法(1983年)
    ∵ 立法に対する強い社会的要請があるにもかかわらず、所轄省庁間の調整や手続に時間がかかり、臨機応変に対処できないもの、或いはその時点で政府として積極的に提案することが躊躇される内容のもの。
    (5) 国会関係の法律
    (例)国会法(1947年)、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(1947年)、議員における証人の宣誓及び証言等に関する法律(1947年)、公職選挙法(1950年)は議員立法で制定され、1956年の第8次改正まで議員立法で行われたが、最近では参議院の比例代表制を採用した改正(1982年)、衆議院議員の定数是正に関する改正(1986年)は政府提案であった。



  3. アメリカとの比較

    日本では立法は主として官僚が行うものであり、官僚機構は、膨大な量と高い質を有している。
    アメリカでの立法の中心は議会と議員である。議会は自律性が強く、委員会中心主義の議会となっている。議会は議員個人の活動に依拠しており、政党の拘束力は弱い。これら議員の活動を補佐するための議会スタッフの人数は1989年現在で23,000人。なお、連邦議会の両院及び附属機関の職員の合計は30,926人と膨大である(五十嵐前著51頁)。
    これら日本とアメリカとの相違が以下のような立法補佐機構の差となってあられわる。
    (1) 委員会スタッフ
    日本では国会のなかに常任委員会と特別委員会がおかれている。この委員会を補佐するために、法律案等の起草のための調査、参考資料の作成を行う調査員がいる。その数は衆議院177人、参議院132人、合計309人。
    アメリカでは、各常任委員会は原則として18人以内の専門職員を雇用できる。その他、各委員会は予備金のなかから多額の調査費の支出が認められ、多くのスタッフを雇用している。
    1991年度予算では、上院7,077万ドル、下院6,110万ドルが計上され、委員会スタッフの数は1989年現在では上院1,116人、下院2,267人、合計3,383人であり、日本の10倍である。
    (2) 立法秘書
    日本では通常の秘書として2名、政策秘書として1名が公設秘書として与えられる。
    アメリカでは、上院議員には秘書雇用のため人口100万人未満の州選出議員には年間81万4034ドル、人口2800万人以上になると、178万4637ドルが支給される。上院議員が雇用できる人数には制限がない。1989年現在、秘書総数は4075人。議員一人当りでは40.8人であり、各上院議員は、このうち数名(7〜8名くらいで職業は弁護士)を立法または調査担当に任命している。
    下院議員は一人当り年間47万5000ドル(1991年)の秘書雇用手当を受ける。各議員は、この手当の範囲内で、常勤秘書18人、非常勤秘書4人、合計22人の秘書を雇用することができ、全体では、7,584人となっている。議員秘書の多くはワシントン事務所と選挙区の事務所に配属されているが、ワシントン事務所の秘書の1〜2名が立法担当秘書となっている。
    (3) 法制局
    日本には内閣法制局と衆参両議院の法制局がある。議員法制局は、議員の依頼を受けて法律等の調査や起草作成を行う。又、法制局では政策を法律化することができるかどうかを厳しくチェックする(法案審査機構の役割)。
    衆参両議院とも各73人、合計146人から構成されている。
    アメリカでは各議院の事務局に立法顧問局をおいている。立法顧問局は、条文の作成と修正につき専門的立場から助言を行うだけで、政府の可否や内容そのものにはタッチしない。
    下院は52人、上院は20数人のスタッフで構成されている。
    (4) 国会図書館
    日本では、国会図書館のなかの「調査及び立法考査局」が国会議員や事務局等の依頼に基づいて、政治、外交、経済等のあらゆる分野にわたる調査を行っている。1992年現在、スタッフは144名。
    アメリカの議会図書館調査局(CRS)は、同国の中央図書館でもある議会図書館に附属する高度に独立性をもった部局であり、世界でもっとも規模の大きい立法補佐機構である。
    CRSは、不偏不党の立場で、総合的な調査や専門的な観点からの問題分析から一般的な情報提供などを行い、議会の両院、委員会、議員及びそのスタッフの活動を援助する。
    CRSは、1989年度で50万1546件の依頼に応え、その時々の重要問題を解説したイッシュー、ブリーフ、CRSレヴューその他の定期刊行物を発行し、議員、秘書らを対象とした研修会を開催している。スタッフ数は860人(1989年度)である。

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 第2.今回の議員立法によるストック・オプションに関する商法改正の経過と問題点
     
  1. 今回の改正の概要

    (1) わが国初の本格的なストップ・オプション制度を盛り込んだ「商法の一部を改正する法律」(平成9年法律第56号)が5月21日付けの官報により公布(利益償却手続の特例法も、法律第55号として公布)。
     自己株式を取得してこれを譲渡する方式(会社が、使用人のみならず取締役にも自己株式を譲渡できるようにし、そのため、210条の2による自己株式の取得制度を、従来の発行済株式総数の百分の三から十分の一に改正)と、一定の要件のもとに取締役又は使用人に新株引受権を付与する方式(280条ノ19を新設)の二通りのストック・オプション制度が認められた。
     前者の方式は、本年6月1日を施行期日としている。

    (2) 改正法案成立までの経緯
     昭和60年自民党の中に法務部会商法小委員会が設けられた。(委員長は、一時期を除いて太田誠一衆議院議員。)
     そこで、ソニー会長の盛田氏がストック・オプション制度導入を提唱。
     又、過去20数年間に9回にわたって経団連からから「ストック・オプション導入のための商法改正要望」が立法当局に提出された。そして、平成6年の商法改正が行われた。これは、従業員持株制度のための自己株式取得規制の緩和である。
     当時、経団連は平岩外四会長の時代。平岩会長が宮沢総理に対して景気対策の一環として「自己株式規制を緩和して欲しい」と要請した。そして太田議員等が法務省を説得して短期間(約一年)で改正が実現したとされている。但し、その時の経済界の要請は従業員持株制度のための改正ではなく、主目的はストック・オプション制度だったが、とりあえず一般的にもわかりやすい従業員持株制度のための改正とした。
     平成7年、通産省の「特定新規事業実施円滑化臨時措置法」の一部改正が行われて、対象を限定しつつ、新株式の有利発行について商法の規定の例外を設けることでベンチャー企業におけるストック・オプション制度の一つの類型が作られた。
     平成9年3月頃は、法務省としてはストック・オプション制度の導入について平成10年には改正したいということであり、政府としても平成9年3月28日の閣議決定「規制緩和推進計画の再改定について」において、ストック・オプション制度の導入は平成9年度中に結論を得て平成10年の早期に導入するとされていた。
     その後日本の株式市場が大変不安な要素を抱えていることなどから(金融不安を解消する手段の一つとして)、ストック・オプション制度の導入は一年前倒しということになったとされる。自民党法務部会商法小委員会で、太田議員、保岡興治議員らが中心になって同小委員会の原案、骨子を作成。
     さらに自民党、社会党、さきがけを含めて「商法改正等に関するプロジェクトチーム」を作り、前記骨子について了承される。
     自民党山崎拓政調会長、橋本内閣総理大臣らの要請により、法務省、大蔵省の協力のもと作業をすすめた(両省が他の既存の法体系との整合性をつけるための作業をしたとされる)。
     そして、平成9年4月30日、自民・社民・さきがけの与党三党に新進・民主・太陽各党を加えた超党派の共同提案の形で、国会(衆議院)に提出された。
     同年5月7日、衆議院法務委員会可決。
     翌8日、衆議院本会議通過。
     5月15日、参議院法務委員会で午前中に参考人として(江頭憲治郎東京大学法学部教授、伊藤邦雄一橋大学商学部教授)聴取。
     午後、質疑、討論、採決。
     同年5月16日参議院本会議で可決成立。

    (3) 議員立法にした理由、改正を急いだ理由について
     立法者側の意見その1(月刊取締役の法務、1997.5.25号、8頁。太田誠一議員に対するインタビュー。)
      \府提案だと時間がかかる。
     ◆ゝ聴立法は、立法府が法律を制定して、それに基づいて行政が執行するとの建前に合致する(行政が立法企画に参画する場合は、議員が発案したことに対してサジェストするかサポートするという立場でなければならない)。
      経済のボーダレス化が急速に進み、企業経営をめぐる制度・慣行もグローバル・スタンダードに合わせる必要がある。
     立法者側の意見その2(商事法務NO1458。1997.6.5。「ストック・オプション制度等に係る商法改正の経緯と意義」保岡興治。3頁。)
     「従来の概念法学的な商法解釈・立法にこだわらず、諸外国の潮流を見ながら弾力的に商法改正を行っていく必要があると政治判断するに至ったものである。今後とも、必要があれば、積極的に議員立法を検討し、迅速、的確な改正を行い、求められる改革を推進すことも考えられる。」



  2. その問題点

    (1) 平成6年の商法改正との関係
     経済界からの要望に応じて平成6年度に従業員持株制度のための自己株式取得の規制緩和をしたばかりであること。

    (2) オープンで自由な論議がないままに強行された
     法制審議会で審議しなかった。公平を欠く。
     これまでの商法改正は法務大臣の諮問機関である法制審議会のイニシアティブの下に、大学、弁護士会、中小企業団体等を含む経済団体等に対する問題点公表、試案発表、意見照会等が行われた後、その結果を踏まえた法制審議会の審議を経るというオープンな過程を経て行われてきた。

    (3) 改正作業の密室性
     立法社は、事前に改正案を発表して国民に対し、その内容及び改正の必要性を充分に説明するとともに、各界の意見を聴取したうえで、改正手続をすすめるべきであった。
     しかし、今回は改正案の事前の発表等もない。法案は自民党と一部の経済界の関係者が協議してそれに法務省・大蔵省等の一部官庁が協力する形で作成され、法案の内容は、これら関係者以外に一般に開示されることはなく、ようやく国会提出の数日前(4月24日)に新聞にその骨子が報道されるに過ぎない。
     国会の審議も短期間で終了したため、国民がその内容を充分に知る機会さえなかった。

    (4) 緊急性があったのか
     従来の方式でも迅速な商法改正は可能であること。
     自己株式制度に関する平成6年の商法改正は一年足らずの間に行われた。
     今回の改正が何故法律学者、法曹実務家等の発言の機会を実質的に封ずるような形で短期間に行わなければならない緊急性があるのか、答えられなければならない。

    (5) 株主代表訴訟との関係
     今回の商法改正を推進した経済界の一部に、株主代表訴訟を事実上困難にする商法改正が、今回と同じ方法、即ち、経済界と一部官庁だけが実質的に関与できる形で早急に行われることを待望する声がある。
     しかし、今回のような不透明・秘密主義的なやり方の下に制度の変革が行われては決してならない。

    (6) 証券市場および会社監視機構の整備等の環境面
     ストック・オプションは、証券市場の価格形成が経営者・従業員の努力・貢献を反映する健全かつ公正なものであることを当然の前提とするが、わが国は現在、証券市場の信頼回復のために根本的な改革を目指している。公正な証券市場という前提条件が充足されないままストック・オプションを導入すると社会的な軋轢を増大されることにもなりかねない。
     会社のために誠実・忠実に職務を遂行すべき取締役・従業員の義務と、ストック・オプションによってもたらされる株価上昇による個人的な利害との間に、利益相反関係が大きく広がることになる。個人的な利害を優先させるために経営判断等を歪める可能性に対しては、株式会社法による経営監視制度の充実が不可欠の要件である。わが国においてはこの面で、取締役会の経営監視機能の強化ないし監査役・監査役会の独立性強化といった課題が解決されていない。
     アメリカにおいても、近時はストック・オプションを富の偏在を招く歯止めの利かない報酬制度であるとする指摘も見られる。

    (7) その他具体的適用、条文解釈の問題点
     その他、改正法には具体的な問題点が多数ある。
     法の具体的適用に当たって誰に相談すればよいか。立法に至る検討過程がほとんど知らされなかったために、事前の準備がままならなかった。改正に伴う関係省令、通達などの改正の段取りは準備万端か。又、条文の解釈が明確でないところも指摘されている。



  3. 各方面の批判

    (1) 「開かれた商法改正手続を求める」
     商法学者声明文(平成9年5月12日)から。
     「情報を国民に十分に公開し、われわれ法学研究者、あるいは法曹実務家等の意見も十分踏まえ、種々の法的問題を検討した上でなされるのであれば、われわれは、議員立法による商法改正に反対するものではない。
     今日の発達したマスコミ、電子媒体等を利用すれば、議員立法の下でも国民各層の意見を十分反映できるオープンな手続の下で法改正が行われることも可能であると考える。」

    (2) 日本弁護士連合会会長鬼追明夫殿に対する司法制度調査会委員長池田達郎の平成9年5月16日付け、商法改正(ストック・オプション)の件についてと題する書面から。
     「立法府に対して次の点を提案しその実現を強く要望する。
      [法府は議員立法に対する国民の信頼を確保し、行政府の立法手続に負けないようにするため、行政府と同様に、立法府内に法制審議会を設置すること。
     ◆[法府は、議員立法を行う場合には、その法案の内容について、立法府内の法制審議会において、各界から幅広い意見を聴取し、十分に検討すること。」

    (3) 東京弁護士会会長堀野紀の平成9年5月30日付け、「ストック・オブション制度の導入に関する商法改正法案の立法手続についての声明」から。
     「議会制民主主義のもとにおいて、近時、情報公開法の制定などをはじめとして、議員立法の重要性を国民は意識しつつある。
     しかし、その立法手続においても、広く事前に情報公開がなされているか、民意を十分に反映させる手続的保障はあるか、法的問題点を十分に検討し尽くしているか、透明性の高い手続において法案が確定したか、国会審議は国民に開かれているというが実質審議がなされているか、等について、国会としては国民の納得が得られる手続過程を示さなければならず、そうでなければ主権者である国民の信頼を得ことはできない。・・
     立法についてのアカウンタビリティー(説明責任)の重要性を認識し、国会、政府、学界が建設的な意見交換と相互批判のもとに立法手続の改革・改善を実行し、活動していくことを強く求めるものである。」

    (4) 森本滋京都大学教授の「議員立法によるストック・オブション制度」商事法務1459号7頁以下から。
     「今後ますます企業法制の機動的な改正が必要となり、議員立法による商法改正がなされることも予想される。議員立法について、提案の趣旨・内容ないし問題点が国民の前に明らかにされ、世論を換気し問題点を整理した後、それを受けて国会ないし関係委員会において十分に審議され法改正がなされることは、わか国の民主主義の発展にとり有意義なこととして、評価する・・・
     法制審議会商法部会の審議には時間がかかりすぎ実体経済のスピードにあわないと批判される。この批判には謙虚に耳を傾け、商法部会の審議の機動性を確保し、さらに、それが利害関係人や法律専門家の意見を実質的に集約する場となるために、組織および運営について見直す必要があろう。審議の透明性を確保する措置も講じられるべきである。今回の議員立法が法制審議会商法部会の組織運営の改革につながることを期待する。」

    (5) 日本経済新聞、平成9年5月14日付け社説「ストックオプション議員立法を歓迎」から。
     「官僚支配のなごりで、国会に提出される法案のほとんどは、各省が審議会の審議を経て法案化したものであり、国会はそれをほぼ追認するのが実態である。これに対し、ストックオプションに関する議員立法は国会の本来のあり方に則したものである。大いに評価したい。
     ただ気になるのは、あらかじめ各党間協議で意見調整されるため、委員会などでの国会審議は短く、問題点が国民にみえにくい点である。」


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第3 議員立法の問題点

 
憲法上、国会が唯一の立法機関とされている以上、議員立法それ自体を否定的に評価するわけにはいかない。しかし、政府立法の場合に行われるような十分な検討がなされないまま、単に国会におけるいわゆる数の力だけが不適切な法律が成立することは好ましくないことは明らかである。従って、各政党レベルの調査室等においても政府立法の場合と同様に法案作成段階でも十分な検討をする必要がある。具体的には、当該法律案についての専門家、弁護士、実務家、利害関係のある経済団体、消費者団体などの関係団体の意見も十分に聞く必要がある。また、当該法律案についても政府官庁の保有する情報も提供される必要がある。さらに、当該法律案の審議についてはその審議過程あるいはその前段階の法案の作成過程を含めて国民に公開し、国民の意見、意向を見極めながら審議を進めることが必要である。

以 上
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