OSAKA BAR ASSOCIATION

宣言 環境憲章  

20世紀、人類は、限りある資源を大量に使用し、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムのもと、物質的な豊かさを追求してきた。しかし、その結果、深刻な公害被害が発生し、また、多くのかけがえのない自然環境が破壊された。さらに、地球温暖化、オゾン層破壊、広範な化学物質汚染など、環境破壊は地球規模で進行しており、人類を含む地球上のあらゆる生命が生存基盤を脅かされるに至っている。

今、人類の一人ひとりが現在の危機的な状況を自覚し、持続可能な循環型社会への転換を図るために、積極的に行動していくことが求められている。

当会は、社会正義の実現・人権擁護を使命とする弁護士の団体として、悲惨な公害を根絶するための活動や、良好な自然環境を保全・再生するための取り組み等を積極的に行ってきた。これらの活動は、会の内外に向けての不断の活動と努力によって将来の弁護士会に引き継がれなければならない。

当会は、地球規模で進行する環境問題に対し、法律家団体として果たすべき役割を自覚し、21世紀を環境の世紀とすべく、以下のとおり行動することを宣言する。
  1. 公害の根絶、豊かな環境の保全・再生、持続可能な循環型社会の実現に向けて、法制度の充実と実効性ある裁判制度の確立に努める。

  2. 地球環境保全のため、国内外のNGO等との連携を強め、国際的な視野に立って幅広く活動する。

  3. 弁護士会の活動や弁護士業務のあり方を真摯に見直し、環境への負荷を可能な限り低減するための行動計画を策定し実行する。
2002年(平成14年)3月6日
大阪弁護士会



提 案 理 由


第1 地球規模での環境問題
20世紀、人類は、科学技術を飛躍的に発展させ、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムのもと、物質的な豊かさを追求してきた。しかし、その結果、深刻な公害被害が発生し、また、多くのかけがいのない自然環境が破壊されてきた。

さらに、地球温暖化、フロンガスによるオゾン層破壊、広範な化学物質による汚染など、環境破壊は地球規模で進行しており、人類を含む地球上のあらゆる生命の生存基盤が脅かされるに至っている。

かかる認識のもと、1992年、ブラジルで開催された国連地球サミットにおいて採択されたリオ宣言では、地球環境問題が人類共通の課題として位置づけられ、持続可能な社会を構築する必要性が確認された。このリオ宣言を実行するための行動指針として、「アジェンダ21」が採択され、これを受けてその後、地球温暖化問題に対処するために、1997年12月開催の気候変動枠組条約第3回締約国京都会議において、京都議定書が採択され、二酸化炭素等排出削減の目標が掲げられるなど、さまざまな取り組みが行われている。

当会も、社会正義の実現・人権擁護を使命とする弁護士の団体として、悲惨な公害を根絶するために活動し、また、良好な自然環境を保全・再生するための取り組みを積極的に行ってきた。環境の世紀といわれる21世紀。一層国際的な連携が要請される中、当会は、地球規模で進行する環境問題に対し、改めて法律家団体としての役割を自覚し、これまでの活動を、会内外に向けての不断の活動と努力によって将来の弁護士会に承継し、さらに発展させていかねばならない。

第2 「環境の世紀」の実現に向けた行動指針

  1. 法制度の充実と実効性ある裁判制度の確立に向けて

    当会は、これまで公害問題や環境問題等に積極的に取り組み、政府や自治体等に対し様々な立法や政策についての提言を行うなど、幅広い活動を行ってきた。

    しかしながら、大気汚染、土壌汚染、騒音、振動等の公害は、未だ根絶されるにはいたっておらず、これらの被害に苦しめられている住民が存在する。また、河川事業、大阪湾の埋立、道路建設等公共事業による環境破壊は未だ進行している。廃棄物問題はますます深刻化しており、循環型社会への転換は遅々と進んでいない。

    また、環境アセスメント・市民参加・情報公開など、環境保全・再生に向けた法制度は不十分であり、当事者適格等、門戸が狭く閉ざされた行政訴訟など、環境裁判も、十分に機能しているとはいえない状況にある。

    当会は、これらの課題について、これからも取り組みを継続し、法制度の充実と実効性ある裁判制度の確立に向けて活動を強めていく必要がある。

  2. 国際的視野に立った活動

    前記のとおり、地球温暖化やオゾン層の破壊、化学物質の汚染等、地球規模の環境破壊に対し、国際的な取り組みが多様に展開されつつある。

    そして、これらの成果であるフロンガス等の規制に関するモントリオール議定書、二酸化炭素等の削減に関する京都議定書等、環境に関する国際的な法制度は、国内法制度にも大きな影響力を持つに至っている。

    これらの取り組みの中で、非政府組織である環境NGOが活発に活動し、国際的会議の場で様々な運動を繰り広げ、重要な地位を占めつつある。

    弁護士会も非政府組織としてNGOの一翼を担っている立場から、これらのNGOとの連携をも強め、国際的な視野に立って幅広く活動を行っていくことが重要である。

  3. 環境に配慮した弁護士会の活動や弁護士業務の変革

    (1)ところで、当会の環境問題に対する取り組みとして、上記のような対外的な取り組みは活発に行われてきたのに対し、他方、会内における環境負荷の低減に向けた取り組みは、残念ながら必ずしも十分とはいえない状況にある。

    環境問題に対する法律家団体としての役割を改めて自覚し、会の活動や業務のあり方について真摯に見直し、環境負荷の低減に向けた取り組みを計画的、組織的に行っていく必要がある。

    (2)周知のとおり、産業界では、自らが環境に与えている負荷を低減するために、企業の自主的な取り組みの枠組みをつくる方法として、環境管理に関する国際標準規格ISO14001が生まれた。これは、環境負荷の低減を目的として、計画をたて(Plan)、実施し(Do)、結果を検証し(Check)、再び計画を立て直す(Action)といった一連のマネジメントを実施するシステムのことである。

    現在では、様々な活動分野において環境に配慮することが社会的責務であるとの認識が広まり、企業のみならず地方公共団体、学校、研究所等の公益的な団体も数多くISO14001を取得するようになっており、環境マネジメントシステムは、産業界のみならず全ての組織体においてのグローバルスタンダードとして認知されるようになっている。

    平成11年度、当会公害対策・環境保全委員会が、監査法人に調査依頼し作成された「環境マネジメントシステム導入に向けた報告書」では、(1)弁護士会の社会的責任という点からは、自らが環境問題に率先して取り組む姿勢を示すべきであること、(2)環境マネジメントシステムの導入により、紙、電気、水道などのコスト削減効果が期待できること、(3)当会においては、効率的経営の面で、目標管理システムという観点が抜け落ちているということ等が指摘されている。

    (3)当会の委員会活動は年々拡大し続けており、これに伴い、事務局の事務量の負担も増えるばかりとなっている。今一度、自らの組織、活動のあり方について環境負荷の視点からも見直すべき時期にきているといわざるをえない。

    例えば、現在、当会でもっとも環境に負荷を与える要因と考えられるのが、大量に使用されている紙の量である。ここ数年、年間370〜390万枚もの紙が消費され、2001年度はさらにこれを上回る勢いである。

    一般社会においては、ペーパーレス化が確実に進行している。当会としても、紙の使用量削減に向けた一連のマネジメントを、計画的・組織的に実施する必要がある。

    ちなみに、公害対策・環境保全委員会においては、平成12年9月から、紙の使用量を削減すべく、E-mailの活用、委員会における配布資料の限定など、用紙削減策を実施している。その結果、平成12年3月から8月までの用紙消費量が月平均6336枚であったのに対し、同年9月から平成13年3月までの用紙消費量は、月平均2007枚と格段に減少した。

    かかる紙の削減策は、業務のIT化の推進と相俟って事務を合理化するものであり、当会職員の事務量をも軽減する効果をもつものである。

    (4)環境負荷低減に向けた当会の取り組みとしては、紙の削減のみならず、その他の環境負荷の要因をも洗い出して必要なマネージメントを実施するとともに、併せて、当会の会員に対しても、グリーン購入その他、個々の法律事務所における環境負荷低減についてのノウハウの提供なども積極的に行っていく必要がある。

    そして、長期的には、当会において、環境マネジメントシステムの導入を目指すべきであり、環境に配慮した組織や業務のあり方についての検討を、計画的、実効的に行っていくことが重要である。

21世紀を真の環境の世紀とするために、改めて弁護士・弁護士会の使命を自覚し、環境問題に対する我々の行動の指針として環境憲章を設け、内外に宣言することは、重要な意義がある。よって、本宣言を提案するものである。

以上

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