アスベスト被害の早期救済と恒久対策を求める決議
尼崎市の大手機械メーカーの元従業員や周辺住民らが中皮腫や肺ガンなどアスベストに起因すると考えられる疾患によって死亡していたことが明らかになったことを契機にアスベストによる健康被害の問題が取り上げられている。アスベストは、中皮腫や肺ガンなどの原因とされ、その毒性は、WHO、ILOはもとより国内でもつとに指摘されてきたところであった。近畿弁護士会連合会は、1995年、阪神・淡路大震災後の倒壊建物の解体工事に際して、アスベスト飛散防止や作業者・住民のマスク着用の徹底と健康管理、さらに、アスベストを原則禁止するアスベスト規制法の制定を提言した。
しかるに、政府は、同年、漸く青石綿と茶石綿の製造・使用を禁止する措置を採ったものの、国内の流通量の90パーセントを超える白石綿については、2004年に至るまで原則禁止措置を見送った。この点も含めた国の過去のアスベストによる健康被害の未然防止対策の遅れが現在および将来の被害の広範化や深刻化につながっている懸念を禁じ得ない。以上のような状況のもと、当連合会として、国に対して、以下のとおり、現在検討中の「石綿新法」の充実など被害者救済措置と被害発生・拡大の防止措置をとることを求める。
記
- 被害者救済措置
(1) 検討中の「石綿新法」について、
- 対象者を労災補償対象外である従業員の家族、周辺住民、自営業者およびその家族を含め、かつ、それぞれの範囲をできるだけ広範なものとすること
- 給付内容を労災補償に準じ、継続的な生活保障に見合うものとすること
- 財源について汚染者責任原則を徹底し、可能な限り石綿関連企業から徴収すること
- 労災の時効のみならず、民事賠償の時効・除斥期間も見直すこと
(2) 健康管理手帳の交付について石綿曝露作業従事歴の確認のみで足りるとすること
(3) 事業者に対して、過去に遡りアスベスト関連情報(取扱年次・取扱量・製品名等)の届出を義務づけ、被害者に開示すること
- 被害発生・拡大の防止措置
(1) 民間、公共建物を問わず、少なくとも、吹き付けアスベストについては、速やかな除
去を義務づけ、民間に対しては除去のための経済的援助措置をとること
(2) 吹き付け、含有アスベスト建材使用の建物の改装・解体工事における一定期間の周辺モニタリング、およびアスベスト関連事業場の周辺地域の継続的なモニタリングを義務づけ、希望する周辺住民の健康診断を実施すること
(3) アスベスト廃棄物の飛散防止のために適正処理を徹底すること
(4) アスベストの製造・使用などを早期に例外なく全面禁止すること
2005年(平成17年)9月14日
近畿弁護士会連合会
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