意見書・声明
意見書 会長声明等

 マンションの復興 ―第一

第一、はじめに

1.震災マンションの現状

 平成7年1月17日に発生した阪神大震災は、被災地の建造物に深刻な被害を与えたが、マンション等の集合住宅もその例外ではない。
 被災直後に行われた諸調査によると、122物件(但し、1物件はほぼ1棟と考えてよい)のマンションが震災により大規模な被害を被った中、中規模又は小規模の被害を含めると、阪神間の分譲マンションの約30パーセントが震災で何らかの被害を受けている。
 しかも、このような被災マンションの多くが、復旧、建替、再建を行うに際して様々な困難に直面しており、現在においてもなお、その復興の方向さえ定まっていないマンションすら存在する。
 マンション復興を阻害している要因は数多く存在し、しかも、その大部分のマンションでは区分所有者の自助努力のみによっては解決することが困難である。
 当協議会では震災直後からこのような被災マンション復興の実態に関して調査を行うとともに、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)をはじめ、各種法規や諸施策に関する調査、研究を行った結果、被災マンションの復興を促進させるには、現行区分所有法をはじめとする諸法規及び諸制度の改善が是非とも必要であると確信するに至った。
 よって、下記のとおり、とりあえず緊急に改正を行うべき問題点について提言を行うことにする。


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2.被災マンション建替・再建のために行われた施策の現状

 1、被災マンション法の制定
  1.  マンション・アパート(以下「マンション等」という。)が、全部滅失した場合において、その再建をするには、どうすればいいのか。
     この点、マンション等の区分所有建物を対象とする区分所有法は、区分所有建物が「一部滅失」した場合の処理のみを定めている。すなわち、区分所有法はマンションの復旧・建替に関して、その決議方法等について、簡単な規制を置いているのみであり区分所有建物が「全部滅失」した場合の法的処理に関しては、何らの定めが設けられていない。
     それは、区分所有法が「区分所有建物が『全部滅失』すると元の区分所有者間に存在した『区分所有関係』は消滅する」と考えているからである(昭和58年の区分所有法改正時における立法担当者の意見である。法務省民事局参事官室編「あたらしいマンション法」328頁)。すなわち、区分所有建物が「全部滅失」すると、元の区分所有者間の区分所有関係は消滅し、敷地利用権の共有又は準共有関係のみが存続する。したがって、右敷地上にマンションを再建しようとすれば、「共有物の変更」(民法251条)にあたると解されるので、敷地利用権を有する者全員の同意が必要となる。
  2.  今回の阪神淡路大震災のような大規模災害の場合には、被災地住民の多数が、住居・店舗といった生活の基盤を一挙に失うにもかかわらず、被害は被災地全域に及んでいるため、多数の住民にとって、適切な転居先・移転先を求めることは、極めて困難になる。
     そのため、多くの住民の生活基盤を確保する為には、全部滅失したマンション等の再建を容易にすることが必要になる。にもかかわらず、民法の原則を貫いて「敷地利用権の共有者全員の同意がなければ、マンション等の再建は出来ない。」とするとマンション等の再建はきわめて困難になる。
     このような問題点を踏まえ、(1)特別多数決制度の導入、(2)共有物等分割請求の禁止、(3)建物等の買取請求権の行使に関する特例を主たる内容とする「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(以下「被災マンション法」という。)」が成立し、平成7年3月24日、平成7年法律第43号として公布され、同日付けで施行された。そして、同月22日、阪神・淡路大震災が、被災マンション法にいうところの「大規模災害」に指定するとの閣議決定がなされ、同月24日、平成7年政令第81号として公布された。
  3.  被災マンション法の主要点は以下の通りである。
    a 特別多数決制度の導入
    1.  被災マンション法によれば、「政令指定災害により、区分所有建物の全部が滅失した場合において、その建物の敷地利用権が数人で共有ないし準共有するものであったときは、その共有者ないしは準共有者は、政令施行日から起算して3年以内であるならば、共有ないしは準共有する敷地利用権の持分価格の割合による議決権の5分の4以上の多数により、その敷地に主たる使用目的を同一とする建物を再建する決議(以下「再建決議」という。)をすることができる。」とされている(同法3条1項)。
    2.  被災マンション法における再建決議の規定は、(1)重要な決議事項を法定し(被災マンション法3条2項)、(2)各敷地共有者等の衡平を確保し(同3項)、(3)決議についての各敷地共有者等の賛否を議事録に記載すべきとしている(同4項)など区分所有法における建替決議(区分所有法62条)とほぼ同じ内容になっており、区分所有法63条(区分所有権等の売渡請求等)および64条(建替に関する合意)の規定も準用されている(被災マンション法3条6項)。
       ちなみに、再建決議は「議決権の5分の4以上の多数」によりなされるという意味では建替決議と同じである。しかし、建替決議では「区分所有者及び議決権」の各5分の4の決議が必要とされているのに対し、再建決議では「敷地共有持分等の価格割合」を基準として議決権が定められている。
    3.  なお、再建決議は、政令施行日から起算して3年以内にされなければならない(被災マンション法3条5項)。多数決制度の導入は、被災地における多くの住民の生活基盤を確保し、被災地域全体の健全な復興を図るために、民法上の原則を修正するものである。ところが、再建決議がいつまでもされないと、敷地共有者等の法的な地位が不安定なままになり、かえって被災地における早期復興の妨げになるし、現行法上重要な権利である敷地共有持分等を長期にわたって制約することになるのは妥当でない。そのため、再建決議をなしうる期間を限定したのである。
    b 共有物等分割請求の禁止
     被災マンション法は「政令指定災害により、区分所有建物の全部が滅失した場合に、敷地利用権を共有ないしは準共有する者は、その政令施行の日の1ヶ月後から政令施行の日の3年後までの間は、一定の場合を除き、共有物等の分割を請求することができない。」としている(同法4条)。
     区分所有建物が全部滅失すると、元の区分所有者間には「敷地利用権の共有または準共有関係」だけが残る。民法の原則に従うなら、いつでも元の区分所有者は、共有ないしは準共有している敷地利用権の分割を請求することができるということになる(民法256条・264条)。しかし、いたずらに共有物分割請求を認めてしまうと「再建決議」をすることが事実上困難ないしは不可能になり、大規模災害時に区分所有建物の再建を容易にしようとした被災マンション法の意図が害される。そこで、被災マンション法は、原則として一定期間は共有物等の分割を請求することは出来ないとした。
     しかし、共有物分割請求権は、財産権として憲法上保障されている権利であることから、その制限は合理的な場合に限定されるべきである(最判昭62年4月22日民集41巻3号408頁、森林法共有林分割制限規定違憲判決参照)。そのため、禁止期間内でも(1)5分の1を超える議決権を有する敷地利用権の共有者ないしは準共有者が分割を請求する場合、(2)その他再建の決議をすることができないと認められる顕著な事由がある場合には、共有物等の分割を請求することは可能だとされている(同法4条)。(1)〜(2)のような場合には、建物の敷地を分割して利用することを早期に認める方が、かえって土地の有効利用に資することにもなり、被災地復興という側面からすれば、共有物分割請求を認める方が、より合理的といえるからである。

    c 建物等の買取請求権の行使に関する特例
     区分所有法は「区分所有建物の大規模な一部滅失があった場合において、建物の一部滅失の日から6月以内に復旧または建替決議が行われないときは、区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利の買取請求権(以下「建物等の買取請求権」という。)を行使することができる。」としている(同法61条8項)。
     ところが、大規模災害の場合、被災地が混乱している上、区分所有者の多くが避難するなどしているため「建物の一部滅失の日から6月以内」という短期間に建物の復旧・建替といった重要決議をすることが困難である。そこで、被災マンション法は「政令指定災害により、区分所有建物の大規模な一部滅失があった場合において、政令施行の日から起算して1年以内に復旧または建替決議が行われないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。」として(同法5条)、建物等の買取請求権の行使に関する特例を認めたのである。

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 2、震災復興総合設計制度等の一部緩和
  1.  昭和48年の容積率規制実施以前に建築されたマンションについては、都市計画法及び建築基準法等で定められた容積率の制限を上回っているものが存在する。同様に、日影規制についても現行都市計画法、建築基準法で定められた制限に合致しないものが存在する。このような「既存不適格建築物」の建替の際には現在の制限に適合することが求められる。被災マンションがこのような既存不適格となっている場合には、建替を行おうとすると、このままでは被災以前の容積が確保できないこととなる。
  2.  この問題につき、建設省は、被災マンション等の建替を円滑に進めるため、神戸市等の関係特定行政庁に対し、建築基準法の各種許可制度等を積極的に適用するよう「阪神淡路大震災による被害を受けた分譲マンションの建替にあたっての建築基準法の各種許可制度の運用等について」と題する文書を出し、指導を行った。
     そのねらいは総合設計制度の弾力的運用にある。総合設計制度とは、建築基準法第59条の2の規定に基づき、一定規模以上の敷地面積を有し、かつ一定割合以上の敷地内空地を確保する建築計画に対して、容積制限及び高さ制限の緩和を総合的判断に基づいて許可し、市街地における環境の整備改善及び良好な市街地住宅の供給の促進に資することを目的とする制度である。この総合設計制度の適用により、容積率の大幅割り増しが可能となり、建替の際に従前の延床面積を確保できる可能性が大きくなる。 また、日影規制についても、建築基準法を弾力的に運用(第56条の2第1項ただし書きによる許可)することにより、周辺への日影の影響が建替前と同程度であり、かつ安定した良好な相隣関係の保持が可能と認められる場合には、日影条例の制限を適用しないことも考えられるとしている。
  3.  これを受けて、神戸市は、従来の「神戸市総合設計制度」に加え、「神戸市震災復興総合設計制度」を創設し、次の要件に合致する建築物を対象として、許可制度等の拡充及び積極的運用を行うこととした。
     (1)震災により被災し再建を行う既存不適格建築物であること
     (2)再建により従前より市街地環境が改善されるものであること
     (3)震災後3年以内に工事に着工するものであること
     この制度は、住宅再建への支援を中心に、要件の緩和及び容積率割り増しの拡充を行うものであり、適用の対象によって、次の3種類に分けられる。
     ・復興総合型(第1種住居専用地域以外)
     ・低層住宅復興型(第1種住居専用地域)
     ・中高層住宅復興型(第2種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域)
     そして、その内容は次のようなものであり、これにより、公開空地を相当程度確保するなどすれば、従来と同様もしくはそれに近い容積率の確保が可能となる。
     (1)敷地面積要件の引き下げ
     (2)有効公開空地率の最低限度の引き下げ
     (3)前面道路幅員に関する要件の緩和
     (4)容積率算定の割り増し計数の引き上げ
     (5)容積率の割り増しの限度の引き上げ
     日影規制による既存不適格の場合についても、前記の要件に該当するものであれば、建築基準法第56条の2第1項但書きによる許可制度の運用を弾力的に行うこととされている。

    表1
      神戸市震災復興総合設計制度
    現行制度

    市街地住宅型
    震災復興型
    低層住宅復興型 中高層住宅復興型
    対  象 2種住専
    住居、近商、商業、準工の住宅
    1種住専
    (容積率の既存不適格の住宅)
    2種住専
    住居、近商、商業、準工(容積率の既存不適格の住宅)
    敷地規模
     住宅系
     商業系
     工業系


    1,000m2
    500m2
    2,000m2

    1,000m2


    500m2
    500m2
    500m2

    前面道路
    幅  員

    住 居 6m
    その他 8m

    6m
    6m
    有効公開
    空地率の最低限度
    建ぺい60%
    の場合47%

     
    同 左
    建ぺい60%
    の場合23.4%(現行の1/2かつ20%以上)
    割増係数(ki:一般型の割増係数)
    ki×1.5
    ki×1.5
    ki×5
    割増限度 ×1.75+300%のうちいずれか小さいもの ×1.75震災前の延べ面積のうちいずれか小さいもの 震災前の延べ面積
    備考          建築物の高さは震災前の高さ以下

    現行制度

    一般型
    震災復興型
    復興総合型
    対  象 1種住専以外 1種住専以外
    (容積率の既存不適格の住宅)
    敷地規模
     住宅系
     商業系
     工業系


    1,000m2
    500m2
    2,000m2


    500m2
    500m2
    500m2

    前面道路
    幅  員

    住 居 6m
    その他 8m

    6m
    有効公開
    空地率の最低限度
    建ぺい60%
    の場合46.7%
    建ぺい60%
    の場合23.4%(現行の1/2かつ20%以上)
    割増係数(ki:一般型の割増係数)
    ki
    ki
    割増限度 ×1.5+200%のうちいずれか小さいもの ×1.5+200%震災前の延べ面積のうちいずれか小さいもの
    備考         
     

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 3、優良建築物等整備事業等補助事業の要件緩和

  1. 優良建築物等整備事業
     マンションの建替・再建にあたっては、いうまでもなく高額の費用を要するが、その費用をどのようにして捻出するかは、区分所有者にとって大きな問題のひとつである。
     建替・再建費用の負担を軽くするために、阪神・淡路大震災後の被災マンションの復興においては、優良建築物等整備事業(優建事業)を利用して国・地方公共団体から建築費の一部について補助を受けるという方法が行われている。
     優建事業とは、市街地の環境の整備改善、良好な市街地住宅の供給等に資するために、一定の要件を満たした事業に対して国・地方公共団体が補助金を出すなどして、良好なまちづくりを促すことを目的とする要綱事業のひとつであり、優良建築物等整備事業制度要綱(平成6年6月23日建設省住街発第63号通達)により、平成6年度から実施されている。
     優建事業には、再開発の手法に応じて、共同化タイプ、市街地環境形成タイプ、マンション建替タイプ、住宅複合タイプ等、いくつかのタイプがあり、各タイプごとに要件が定められているが、マンションの復興に主に利用されたのは「マンション建替タイプ」である。
     震災前における各タイプ共通の一般的要件としては、
     (1)地階を除く階数が、原則として3階以上あること
     (2)建物が、耐火建築物または準耐火建築物であること
     (3)地区面積がおおむね1000m2以上あること
     (4)敷地内に一定規模以上の空地を設けること
     (5)敷地が、原則として幅員6メートル以上の道路に4メートル以上接すること
    などがあるが、「マンション建替タイプ」については、このほかに、
     (6)建替前の区分所有者が10人以上いること
     (7)建替前の戸数または床面積以上の住宅を供給すること
    を要する。
     その他、実務的には、原則として区分所有者全員の同意が要求される。ただし、再建決議がされた場合において決議に反対し売渡請求を受けた者は再建に参加しないので、この者については同意が要求されない。
     以上のような要件を満たす場合、予算の範囲内で、(1)調査設計計画費(設計に要する費用、地盤調査に要する費用等)、(2)土地整備費、(3)共同施設整備費(空地の整備に要する費用、給排水設備、エレベーターなどの整備に要する費用等)の3分の2について、国・地方公共団体から補助を受けることができるとされている。
  2. 優建事業の要件緩和について
     震災後、被災マンションの復興が社会的問題となり、マンションの決議・再建について種々の公的支援制度が設けられたが、この優建事業についてもその要件が緩和された。
     まず、前記(3)の地区面積がおおむね1000m2以上あること、という要件については、地区面積おおむね500m2以上または敷地面積おおむね300m2以上というように緩和された。
     また、同(6)の建替前の区分所有者が10人以上いること、という要件が、被災当時の区分所有者が10人以上というように変更された。
     このような要件の緩和で、比較的小規模の事業についても補助の対象にすることができるようになったのである。
     要件が緩和されたほか、補助の内容も拡充されている。すなわち、補助の割合として、従来は、調査設計計画費、土地整備費、共同施設整備費についての3分の2を補助するというものであったが、震災後にその割合が5分の4に引き上げられた。その内訳としては、県が5分の1、市が5分の1を負担することによって、国が5分の2を負担することとなっている。また、消防施設、避難施設等、防災性能強化の各施設も補助の対象とされた。
     その結果、マンションの建替費用全体のおよそ15〜20%について補助を受けることができることになった。
     このように要件が緩和され補助の内容が拡充されたほか、実務においては、より利用しやすいように、各地方公共団体ごとに、柔軟な運用がされている。
     すなわち、(4)敷地内に一定規模以上の空地を設けること、という要件は、具体的には敷地面積のおよそ6割の空地を確保しなければならないとされており、区分所有者にとってかなり厳しいものになっていることから、神戸市の場合などは、一定の基準により公共に開放された空地(公開空地)をつくる場合、その有効面積を空地の面積に重複して加えることができるとしている。
     さらに、(7)の建替前の戸数または床面積以上の住宅を供給することが要求されていることから、既存不適格のマンションについては、補助を受けることは不可能と考えられていた。
     しかし、このような場合であっても、たとえば、神戸市では、建替・再建後のマンション敷地内に通り抜けの通路を確保し、「市街地環境形成タイプ」を例外的に利用することにより、補助を受けることができるという運用がされている。
     また、マンションの地下に住戸をつくることによって、容積率を増やすことなく(地下は容積率に算入されない)戸数を増やし、既存不適格のマンションであっても「マンション建替タイプ」を利用した事例もある。
  3. まとめ
     優建事業においては、既に支払った事業費に対してしか補助金が出ないので、区分所有者としては、いったん別のつなぎ融資を受けなければならず、また、優建事業には、限られた予算の範囲内でしか補助を受けることができないことから生じる種々の問題点も存する。
     しかし、優建事業は、他の融資制度と併用して利用することができるうえ、前記のとおり制度が拡充され、より利用しやすくなったことから、被災マンションの復興において果たした役割は大きく、建替・再建を果たした区分所有者からも高く評価されている。

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 4、融資制度の概要

  1. はじめに
     震災マンションの再建・補修をめぐっては、震災という予期せぬ事態に遭遇し、自己資金での再建・補修を賄える区分所有者は多くはなく、区分所有者が何らかの形で資金の融資が受けられないとマンションの再建・補修は不可能であり、融資制度の特例的な充実は、マンション再建の環境整備上極めて重要なことである。ここでは、住宅金融公庫、神戸市、兵庫県の今回の震災における公的融資の制度の概要を述べる。
  2. 住宅金融公庫の融資制度
    a 再建・建替について
     再建・建替については、自主再建方式(区分所有者ないし区分所有者から委任を受けたディベロッパーがゼネコンと請負契約を締結し再建する場合)と買取・分譲方式(ディベロッパーが一旦買い取り分譲する場合)とがあるが、それに応じて次のような融資制度がある。
     自主再建の場合は、戸建新築の場合と同じ扱いであり、建設資金として基本融資額1160万円、特例加算450万円であり、返済期間は35年、担保として公庫が建物および敷地に第1順位の抵当権を設定する。融資時期は、抵当権設定登記後であるが、希望すれば着工後の現場検査合格後に60%の中間金が支給される。
     次に、買取・分譲方式の場合は、新築戸建の購入と同じ扱いであり、新築住宅購入資金として基本融資額・住宅1160万円・土地770万円、特例加算として800万円であり返済期間は35年、公庫の1番抵当権の設定、融資時期は、前記と同様である。
    b 補修について
     専有部分の補修の場合は、戸建ての場合と同じ扱いであり、基本融資額640万円、特例加算200万円であり、返済期間は20年、担保として建物に公庫の抵当権を設定する。融資時期は抵当権設定後であり、中間金の受取はない。
     共用部分については、管理組合が借り入れをする場合と、管理組合で借り入れ決議ができなかった場合、個人の連名で借り入れる場合がある。そして、管理組合で借り入れる場合は、(1)公庫の定める事項の補修決議(2)修繕積立金の状況等の要件を充たす必要がある。
     融資額は、無担保融資の場合150万円×戸数が限度であり、有担保の場合630万円×戸数が限度である。
  3. 神戸市の融資制度
     神戸市の場合、従来の住宅融資制度に加えて災害復興住宅特別融資制度が設けられた。
     これは、住宅の建設・購入融資と補修融資があり、マンションの再建・建替と補修の場合も利用できる。
     再建・建替の場合の融資限度額は、1500万円(従来の住宅融資額1000万円を拡大)であり、返済期間は25年、担保は公的融資(公庫・年金等)に次ぐ順位の抵当権設定であり、また融資時期は、抵当権設定後である。
     補修の場合の融資限度額は、500万円であり(従来の修繕融資額250万円を拡大)、返済期間は15年、担保は融資額が350万円以下の場合不要であり(但し連帯保証人が必要)350万円を超える場合公的融資に次ぐ順位の抵当権設定が必要であり、融資時期は350万円以下の場合は工事完了審査済通知書交付後、350万円を超える場合は抵当権設定後である。なお、共用部分を工事の対象にする場合、専有部分の属する建物についての工事であり、かつ区分所有法に定める集会の決議があることが要件である。
  4. 兵庫県の融資制度
     兵庫県の場合、兵庫県民住宅復興ロ−ン制度が設けられた。これは、住宅の建設・購入補修について適用があり、マンションの再建・建替・補修について利用できる。但しマンションの共有部分の補修は融資の対象とはならない。融資額は、100万円〜800万円であり、返済期間は25年以内、担保は原則第1順位であるが政府系の融資(公庫)などの場合はその次順位でもよい。

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 5、その他

 優良建築物整備事業以外に住宅復興の資金負担を軽減するために活用できる助成制度には、下記のようなものがある

  1. 災害復興特定優良賃貸住宅供給促進制度(特優賃制度)
     一定の条件を充たす良質な賃貸住宅を建設する事業主に対し、建設費の一部を神戸市と震災復興基金から助成するものである。
     このほか、住宅金融公庫又は住宅都市整備公団への償還についても、一定期間、神戸市と震災復興基金から利子補給が受けられるものとされている。
     他方、入居者の側にも収入に応じて一定の家賃補助が受けられる。
  2. 災害復興特定目的借上公共賃貸住宅制度(特目賃制度)
     制度の補助の内容は、特有賃制度とほぼ同じである。
     特優賃制度との違いは、神戸市、住宅供給公社が完成した住宅を公共住宅として借り上げる点にある。
  3. 特定賃貸住宅建設融資利子補給制度(特賃融資制度)
     一定の条件を充たす良質な賃貸住宅を建設する事業主に対し、建設資金の融資を低利で受けられるよう市が利子補給をする制度である。
  4. 密集住宅市街地整備促進事業制度(密集事業制度)
     建設大臣が指定する地区において、木造賃貸住宅、長屋、老朽住宅を共同、協調建替等により再建する者に対し、一定の基準を充たす住宅について、建設費の一部を補助する制度である。
  5. 住宅市街地総合整備事業制度(住市総事業制度)
     対象8地区内において、一定の条件を充たす良好なマンションを建設する事業主に対し、建設費の一部を補助するものである。
  6. 住宅都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅制度(公団民賃制度)
     自ら所有または借地している土地を利用して一定の基準を充たす良質な賃貸マンションを建設する事業主に対して住宅都市整備公団が建設費を100パーセント低利で貸し付ける制度である。
     以上の諸制度の多くは、居住目的ではなく賃貸目的で住宅を建設しようとする者に対する補助制度であり、分譲マンションの再建には活用しにくいものが多いが、住市総事業制度のように活用が可能なものもあるし、賃貸目的の区分所有権者のために公団民賃制度を優建事業制度と組み合わせてマンション再建事業に活用した事例も存在する。

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