OSAKA BAR ASSOCIATION

介護・福祉

年金の給付を受けたり、生活保護を受けられるはずなのに、それらが提供されていないことがあります。
また、介護保険がはじまってからは、民間業者からサービスを受けるようになりましたが、そのサービスの内容が約束と違うということも起こっています。

「ひまわり」では、法律や契約に基づいてご本人が受けられるべきサービス・年金・生活保護などを、交渉あるいは不服申立・訴訟によって獲得する活動をしています。

まず、面談

「ひまわり」にお電話いただき、予約のうえ、面談して事情をお聞きします。
弁護士会館に来ることができない方の場合は、弁護士がご自宅などに出張して面談いたします。

そのうえで受任
ご事情をお聞きして、交渉や不服申立・訴訟をすれば適正なサービスなどを獲得できそうだという場合には、弁護士が事件として受任いたします。
相手方や行政と交渉したり、交渉でだめな場合は不服申立や訴訟などの法的手続をとります。

費用
事件として受任した場合の弁護士費用は、活動内容に応じて、3万円〜30万円です。
ただし、金銭の請求をしていく場合には、その額に応じて弁護士費用が決まります (大阪弁護士会報酬基準によります) 。
また、弁護士費用を支払うのがむずかしい方の場合、法律扶助制度 (弁護士費用の立替) があります。
 
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具体例の紹介


[事案の概要]

介護・福祉部会で取り扱った事件の一つを紹介します。この事件は、娘(以下「B子」という)による暴力・暴言の虐待に耐えかねて家を飛び出し、老人施設に緊急保護された母親(77歳 以下「A子」という)からの依頼により、B子に奪われた預貯金通帳の返還等を求めて調停を申し立てた事案です。
なお、A子の家族は、娘のB子、B子の夫と息子の4人家族でした。

[本件発覚の経緯]
 (内容はA子からの聴き取りに基づくものです。)
  1. A子は夫に先立たれ十数年前よりB子夫婦と同居していたが、同居した頃よりB子からの暴言や暴力を受けるということがありました。当初は、それほど頻繁ではなかったのですが、その後暴言・暴力は次第にエスカレートしていき、殴る蹴るの暴行や、「死んでこい、葬式だけは出してやる」などの暴言、さらには唾を吐かれるなどの酷い仕打ちを毎日のように受けるようになりました。B子は、B子の夫や息子(大学生)がいる前でも平気で暴力を振るっていましたが、夫や息子が止めに入ることはなかったようです。
  2. B子はかねてより、A子が自分名義の預金を自分で管理し自分の判断で使用していることに不満を抱いており、たびたび「お金を一人占めするのはおかしい」などとA子に愚痴をこぼしていました。そのような折、B子は、A子に暴力を振るった際、畳の上に出刃包丁を突き立てて、A子名義の定期預金証書等をA子から奪いました。その額は、A子が亡父の遺産分割として受け取った金員など数千万円にもなります。
  3. A子は、B子の度重なる暴力に怖れをなして、知人宅に逃げ込んだことも何度がありましたが、B子はそのことを知るとA子を強引に連れ戻しに来て、自宅に帰るやいなや「他人に知られて恥をかかされた」と言ってはまた暴力を振るい、「今度誰かに言ったら殺してやる」などと言う始末でした。
 
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[虐待発覚の経緯]
  1. その後も、B子の暴言・暴力はおさまることはなく、平成11年5月、A子は、B子から、身体にあざが残るほどの激しい暴行を受け、「このまま家にいては本当に殺される」と思い、最寄りの警察署に助けを求めたところ、警察官から福祉事務所に相談するよう勧められました。
  2. そこでA子は、福祉担当者から紹介を受けて福祉法人が運営する在宅介護支援センターに助けを求め、同センターの職員がA子と面接して事情を聞いた結果、上記虐待の事実が発覚しました。なお、センターにおいては、同日、A子の身体を確認したところ、上腕部に暴行による比較的広範囲に及ぶ内出血が認められました。
  3. 上記面接の際、A子が「怖いので家には帰りたくない」と申し入れたので、B子との話し合いがつくまで、この福祉法人が運営している特別養護老人ホームで緊急保護(ショートステイ)されることになりました。また、A子の話では、今後、施設利用の負担金や生活費が必要になってくることから、以前B子に奪われた預貯金等を返すよう交渉してもらいたいということでした。
 
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[福祉担当者とB子との話し合い]
  1. 市の福祉担当者からB子に電話を入れたところ、B子は興奮して電話を切ってしまったり、「A子は呆けている。あることないことを言い回っている。早く帰らせてほしい。」と一方的にまくし立てるなど、当初は冷静に話し合いかできる状態ではありませんでした。なお、A子は、B子に所在を突き止められると「引きずり戻されて、殺される。」と怯えていたので、B子にはA子の所在を伏せていました。
  2. A子の保護から2週間ほど経過した頃より、B子も次第に落ち着きを取り戻して電話で応対するようになりました。B子は福祉担当者との会話では、A子に対する暴力を認めて謝り「今までのことは詫びるので、早く帰ってきてほしい」などと話していたようですが、A子がB子に直接電話を入れた際には、福祉担当者への対応とは全く違って、今までと同様の暴言を吐くという始末でした。
  3. 福祉担当者らは、A子とB子の親子関係を円満に解決しようと努力し、断続的に話し合いが続けられましたが、預貯金の返還等についてB子の同意をえることはできませんでした。
 
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[弁護士への依頼−介護・福祉部会での担当]
  1. 本件については、@B子の暴力が尋常ではないこと、AA子が自宅に戻らないという意思を固めていること、BA子は、今後の生活のために預貯金の返還を強く望んでいるが、B子は応じようとしないことなどから、平成11年5月中旬、福祉担当者は弁護士に相談して解決することになり、高齢者の虐待事件として「ひまわり」に相談があり、介護・福祉部会で担当することになりました。
  2. そこで、介護・福祉部会所属の弁護士がA子と面接して聴き取りをしたところ、A子は、B子による暴力への恐怖心から二度とB子のもとには戻らないという意思を固めていました。担当弁護士は、親子関係の修復は困難であり、またB子による虐待は単なる親子喧嘩の域を超えて刑事事件にも匹敵する内容であると判断し、正式にA子から委任を受けて、B子に対しA子名義の預貯金通帳等の返還を求めるとともに、虐待に対する対応について検討しました。
  3. その後、A子の代理人として、A子名義の預金を調査するとともに、B子による預金の引出を差し止めるために銀行等に通知したところ、A子が逃げ出した日のすぐ後に数百万円が引き出されていることが確認されました。また、B子に対しては、直ちに通帳等をA子に返還せよとの内容証明郵便を送付しました。
    しかし、B子から任意に通帳等の引渡を受けることができなかったことから、平成11年8月に金銭返還の調停を申し立てました。
    なお、A子は、B子から受けた虐待について、B子に謝罪の意思がないようであれば何らかの形でけじめをつけてもらいたいということであったので、B子に対し虐待の事実を認めたうえで謝罪を求めるとともに、慰謝料の支払も打診しました。
 
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[調停の結果とその後の対応]
  1. 調停は合計2回開かれ、請求額の一部の返還とB子が預貯金とともに所持していたA子の年金証書の引渡を受けることができました。
    しかし、A子に対する虐待については、B子は暴力を振るった事実は認めたものの、暴力をふるったことにはそれなりの理由があると主張し、謝罪するには至りませんでした。
  2. その後の対応として、B子に対する金銭返還訴訟や慰謝料請求訴訟も検討しましたが、A子としては「親子間で裁判まで・・・」という思いが強かったので、訴訟には至りませんでした。
  3. 最後に問題になったのは、A子の健康保険でした。A子はB子の夫の被扶養者となっており、保険証は家族で一枚しか交付されていませんでしたので、A子が施設で生活していくうえで保険証が手元にないという不都合が生じました。そこで、A子の国民健康保険の加入手続きを検討しましたが、そのためには、健康保険の被扶養者でなくなったことの証明が必要であり、B子の夫にその手続きをしてもらわなければならなかったのです。
    そこで、この点についてB子に依頼しましたが、すんなりとは聞き入れてくれず、時間をかけて粘り強く交渉した結果、ようやく応じてくれてA子の国民健康保険手続きが完了しました。
 
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