あつい話二題
1.暑い話
残暑お見舞い申し上げます。
毎日灼熱の暑さが続きますね。とはいえ、日が暮れると草むらから虫の集(すだ)く音がひそやかに聞こえてきますし、夜はいくらか凌ぎやすくなりました。季節は確実に巡っていきます。
我が国には季節の移ろいを細やかに表現する言葉があります。二十四節季の区分では、今は「処暑」。立秋を過ぎ、暑さが峠を越すころという意味です。さらにこれを細分化した七十二候では、8月下旬は、「天地始粛(てんちはじめてさむし)」です。サムシと聞くと、暦の上から涼しい風が吹いてくるような気がします。残暑も後少しです。
ばてないように、頑張りましょう。
2.熱い話
さて、秋が来ると臨時国会が開かれます。ここでカジノ推進法が成立するかといわれています。そうなれば、特区の一つである大阪でベイエリアにカジノが作られることになります。カジノだけでなく、観光施設、ホテル等と一体となった総合リゾートIRの開発だというキャッチフレーズで、経済効果、雇用拡大、観光客誘致につながるのだと、誘致に積極な声もあります。韓国ウォーカーヒル、マカオ、シンガポールがカジノで儲けているのを見て、日本も同様にということでしょう。でも、もうかるからと言って、そう安易に大阪にカジノを作っていいのでしょうか。
厚労省は、同省研究班発表の推計によると、日本国内でギャンブル依存症の人は成人人口の4.8%にあたる536万人にのぼるとみられ(なお、米国では1.58%、韓国では、0.8%)、日本人は依存性が高いので、依存者の増加の危険を懸念し、カジノが解禁されるとしても、日本人の入場を禁止するように提言しています。
さて、日本人の入場を禁止して、外国人観光客の懐を当てにして、果たして期待する経済効果が上がるのか。近隣に老舗のカジノが複数存在する中で、カジノだけを目当てに大阪に来る外国人観光客が果たしてどれくらい来るのか、どれくらいの外貨を落としていくのか十分な検討もなく、ただ儲かりそうだという熱におかされているのではないかと思います。
余談ですが、カード、スロット、ルーレット等の他と同じしつらえの遊具だけでは、近隣の老舗カジノを凌駕することはできないでしょう。いっそ、「ジャパネスクトーバ」のネーミングで、緋牡丹お竜が盆振りする丁半賭博や、倶利伽羅紋々でさらしをまいたお兄さんの手本引き等の日本古来の博打を遊戯の中に入れるくらいしてスマート日本を打ち出して、新規性を狙うという手もありますが、そうなると全然おしゃれ感がなくなりますね。
そう、カジノは「賭場」です。博打場、鉄火場です。そこで上がる収益は 「テラ銭」です。派手な賭場がドーンと存在する大阪。それが青少年にいい影響を与えるとは到底思えません。厚労省の提言を無視して利益拡大のために、日本人の入場も認められるなら、賭場ですったお金のために多重債務を負う人が大阪の街に増えるでしょう。カジノはもうかるが市民の生活が苦しくなれば、誰のための誘致なのかということになります。マネーロンダリング、その他犯罪の増加の懸念もあります。大阪から、額に汗する労働を尊ぶ気風が消えていいのでしようか。
根っから大阪大好き人の私は、いくら落ちぶれてもてら銭で糊口をしのぎたくないし、それで子供や孫を教育したくはないと思います。
亡くなった母が、フェスティバルケートができた時、「遊ぶとこばっかり作って、大阪の人間を腑抜けにするつもりなんか」と怒っていました。
フェスティバルゲートは、結局大阪市に何億円の負債を残してつぶれました。カジノもそうなりそうな予感がします。
大阪弁護士会では、10月4日午後1時から4時、カジノ推進法をめぐるシンポジウムを行います。
大阪を愛する皆さん、流れに流されず、カジノの誘致問題をしっかり考えてみませんか。