嫁姑問題
自治体の無料法律相談というと、一昔前はほとんどが債務整理だったんですが、最近は影を潜め、代わりに増えてきたのが離婚や相続の相談です。中でも離婚の相談は、必ず1件はあるといっても過言ではないでしょう。
面白いのは、離婚相談の場合、相談者が男性か女性かで傾向があることです。
相談者が女性の場合は、夫に離婚話を切り出す前に相談に来られる割合が高いです。なぜか離婚が認められることを前提にして金銭面の相談から始められる方が少なくありません。親権は?養育費は?慰謝料は?手続費用は?と聞くことを事前に箇条書きにして相談に来られる方も多いです。また、ほとんどがお一人で来られます。
他方、相談者が男性の場合は、妻から離婚を突きつけられた段階で相談に来られる場合が多いです。そのためか、相談の内容もまず「離婚は認められるのか」「離婚しないで済む方法はないか」から始まり、金銭面は後回しです。ほとんどの方が準備してこられません。そして、親、特に母親同伴で来る方も結構います。
で、色々と離婚の理由を聞いてみると、浮気や暴力と言った典型的なものも少なくはないのですが、結構多いのが嫁姑問題が原因となって夫婦間の愛情が冷めちゃったというものです。男性相談者に母親が同伴する場合はその確率が高いです。
「嫁姑問題」について、私は、姑は息子一家を「家族」と思っているのに対して、妻は義理の両親を「親戚」としか見ていないことから発生しているのではないかという仮説を立てています。実際に法律相談に同席した姑さんに「お孫さんは家族と思ってますか、それとも親戚ですか」と聞くと、ほぼ100%「家族」との回答が返ってきます。
「家族」と「親戚」の違いがどこにあるかというと「距離感」ですね。例えば親戚に用がある場合、電話等で事前に訪問することを告げてから訪問しますけど、家族に用がある場合、内線や携帯で事前にアポを取ってから部屋に行く人なんていないですよね。でも姑は息子の一家を「家族」と思ってるから、息子の家にアポなし突撃をやっちゃうんですよ。
「親戚」の日常生活や育児には口出ししないですよね。でも姑は「家族」だと思ってるから、食事等の日常生活や育児、孫の進路に色々と口出しをするんですよ。「家族」の動静を知っているのは当然と考えてて、孫が風邪をひいたことや息子一家が旅行に行ったことを後で知ると「嫁は何も言わない」って文句言うんですよ。
「親戚」だと思ってる嫁にしてみたら「何でそんなことされなあかんの」ですけどね。
でも、これって嫁姑のどちらかが間違っている訳ではないと思います。どちらも正しいんだと思います。
姑には姑の世界があって、姑同士の付き合いの中では「(家族なのに)嫁は気が利かなくて何もしない」「良かれと思って言うてるのに言うことを聞かない」が正しいんですよ。当然のことながら、嫁のコミュニティでは「(親戚に)何でそこまでせなあかんねん」「姑は事情も知らんのに無責任なことばかり言う」が正しいんですよ。
世界が違うんです。価値観が違うんです。シーシェパードに「鯨肉は美味い」って言っても聞く耳持たないのと同じです。
でもって、嫁の立場で嫁姑問題で苦しんだ人も、姑の立場になったら姑の考えで動きますから、いつまで経っても嫁姑問題はなくならないんですよ。
だから、嫁姑の仲は険悪なのが当たり前。疎遠でも波風が立ってなかったら極めて良好な嫁姑関係だと思ってます。
ただ、夫の方には一言だけ忠告しておきます。
「たとえ妻が間違ってると思っても、それを口に出してはいけない。」
嫁姑問題でぶち切れてる状態の妻に冷静な判断はできません。客観的に妥当と思える判断でも「お母さんの肩を持って、私の味方をしない」と取られ、妻の気持ちが離れていくだけです。その場で説得するなんてことは無理です。
親子は一時険悪になっても修復は可能です。でも夫婦は赤の他人ですから一度険悪になると修復は困難です。こんなことが離婚の原因になるってばからしいでしょ。辛くても「うんうん」と話を聞くふりをして、嵐が通り過ぎるのを待ちましょう。
どうでしょうか? 私の説は。